2021年01月04日

【 OSMIA 76 SUPRA 14K-B 筆圧コントロール困難 】(アーカイブ 2012年5月)

OSMIAが単独では生き残れず、Parkerに食われたのも、品質問題があったのかもしれないな。

泉筆五宝
(Pen、Paper、Case、Ink、Maintenance)を愛でる人は、同時に非常に品質を気にする人でもあるからな。


01今回の依頼品は、独逸マイナーブランドの中では一流のOSMIAの回転吸入式。OSMIA単独ブランドの時代と、OSMIA Faber-Castellの時代とがある。

それほど重厚な万年筆を作っていたわけではないし、ペン先が特に柔らかいというような光った部分を持っているわけでもないが、なんとなく好きなブランド。

ロゴの○の内側に◇が、なんとなく日本の家紋に似ているからかもしれない。

この萬年筆は、過去にペンクリで何回か調整を受けているらしい。その時には良くなったのだが、すぐに調整戻りが発生して書き出し掠れが発生してきているらしい。

また、ペンにコントロールされているような感じがして、うまく運筆をコントロール出来ないとか。

これは、Vintageの欧州ペン先にありがちな症状。特にマイナーブランド物によくある現象。原因は定かではないが、ある程度の仮説は立てられる。


0203こちらが調整前のペン先の拡大図。ペン先の拡大図を見るとペンポイントがずいぶんと斜めに付いていることがわかる。

依頼人はOBではないかと書かれていたが、OBとは逆の付き方をしているので、単なる溶着時の誤差であろう。

当時のマイナーブランドでは、ペンポイントの溶着は手溶接だったはずなので、多少のズレはつきもの。

実はズレが問題なのではなく、左右のペンポイントの体積があまりに違うことが問題なのじゃ。

おそらくは右側のペンポイントの体積は、左側のペンポイントの体積の5〜8倍ほどの重量になっているはず。

これでは左右のペン先が揃っては動かず、運筆に不快な感じを与えると思われる。


0405またペン先の左右の段差も酷い。ペンポイント先端部では辻褄が合っているのだが・・・

ハート穴の近辺からペンポイントに至るスリットの左右で大きな段差がある。

画像のペン先上部の黒く見える部分が段差。ペン先の段差を直す際には、ペン先をペン芯から外し、ハート穴からペンポイントに至るスリットの両側の高さを揃えるよう・・・

時間をかけて段差調整をするのが王道なのだが、プロもアマも、ペンクリでの段差調整は先端部だけで辻褄を合わせている人が多い。

これは生産性向上のためだが、見栄えが悪くなるので、拙者は可能な限りハート穴からペンポイントまでの段差調整を行っている。


06このOSMIA 76 SUPRA で初めて気付いたのだが、クリップにネジが切ってあり、天冠のネジにねじ込んで固定するようになっている。

この方式には初めて出会った。

組立効率は良いが、クリップをぴったり止めてもすぐに緩んでしまう。天冠のネジで締め付けるのがやはり王道であろう。

少しでも緩みを押さえるために、天冠のネジにシェラックを塗って生乾きにした段階でクリップをねじ込んでみた。少しは緩みがおさまりそうな予感がしている。


07こちらが綺麗に磨いたあと、左右のペンポイントの大きさの差を、5〜8倍から3〜4倍ほどに小さくした状態。

相変わらずペン先の単体スキャナー画像は美しい。また手で切り割りを入れているにもかかわらず、スリットが模様の真ん中に来ているのは見事!


08かなり研磨して大きさの差を縮めた段階でも、これほどの差がある。

本来なら不良品としてはねるのが正しいアクションだったはずだが、当時の独逸製品に良心は無かったのかもしれない。

日本製品でもマイナーブランドは、これより酷い状態だったこともあるので、偉そうには言えないが・・・ 

OSMIAが衰退したのは、この程度の品質管理しか出来なかったからかもしれない。品質は企業の継続性に大きな影響を及ぼすのじゃ。
 

Posted by pelikan_1931 at 23:59│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック