下の説明に画事実誤認がある。
書き味がカサカサの原因はこちら。ペンポイントがかなり粗いペーパーで削られている。売り主が1000番以下のサンドペーパーで擦ったのであろう。
と書かれているが、これは間違いで、正しくはペンポイントの素材のせい。鬆(ス)だらけのペンポイントなのじゃ。
CNニブは崩壊しやすいので、楽しむなら今のうち。ペン先に優しい中性のインクで楽しむのが良いだろう。
酸性の強いクラシックインクは使わない方が賢明!
新品のCNニブ付きの万年筆は無いかなぁ〜。特にハート穴から髭が生えているのが良い。
今回の生贄はakiさんからのもの。Pelikan 100 の War Time Model で14金ペン先ではなく、CN(クローム・ニッケル)ニブがついている。
このCNニブは金ペンよりも弾力があり、オークションでは14金ペン先よりも高価で取引されていたこともある。
ただし金ペンと比べて崩壊するのも早い。従って状態を十分に確認してから購入する必要がある。
このPelikan 100の軸はakiさんによって加工されていると思われる。胴軸は得意の艶加工かな?ピカピカで実に良い感じに仕上がっている。
左利き、押し書き、柔らかニブ好き、極細好き、書き味こだわらず・・・のakiさんだが、さすがにこの書き味には満足出来なかったらしい。
調整依頼票に記載されているとおり、かなりカサカサの書き味。しかも字幅が太く、インクフローも良い。
拙者なら満足するが、極細好きな人にとっては許しがたい書き味であろう。
インクがペン先についている状態では気付かなかったが、このペン先は相当侵されている。おそらくはインクを抜き取らないまま長期間(5年以上?)眠っていたものであろう。
酸性インクが蒸発し濃くなって、一番クロームニッケルを侵しやすい時期に、一気にペン先を腐蝕させたと思われる痕跡がここそこに残っている。
こちらの画像は実は上下を逆転させてある。ペン先の奥側がスリットよりも盛り上がっていることがわかるが、実は、盛り上がっているのはスリットの手前側。
ハート穴からペンポイント直線までが大きく盛り上がっている。
これはスリットを開く際に隙間ゲージの様な物を入れた後、それによって出来た段差を調整しないときに生じる。
そしてペンポイント部分のみで辻褄を合わせた調整で頻繁に発生する。
これは海外から入手したようであるが、海外物でも国内物でも、売り手がいじった物はかなりの確率でこうなっている。
プロの調整であっても、自社製品以外の調整ではこういう状態になっている場合もあるので、可能な限り同じメーカーのペンクリが望ましい。
調整の第一歩は、ハート穴からペンポイントまでを左右で揃えることなのじゃ。ペンポイントの研磨はその後で十分!
ペンポイントの直前部分を曲げて先端部を合わせる調整は美しくない。調整は書き味さえ良ければどんな形でも良いわけではない。
少なくとも萬年筆愛好家がやる調整においては、可能な限り美しく仕上がるようにしたいものじゃ。
書き味がカサカサの原因はこちら。ペンポイントがかなり粗いペーパーで削られている。売り主が1000番以下のサンドペーパーで擦ったのであろう。
しかも左右の形状がそろっていない。ということはルーペで仕上がりを確認せず、机の上に置いたサンドペーパーにペンポイントを擦りつけるようにして調整した?
かなり馬尻にもなっているのだが、幸いにしてペンポイント表面の凹凸が激しいので、書き出し掠れは無い。しかし・・・汚い!
これが戦時中のペンポイントの素材のせいなのか、荒いペーパーで削ったせいなのか・・・理由は半々じゃな。
たしかに素材も悪そうだが、ラッピングフィルムによる表面研磨である程度は回復できそう。
こちらは、Pelikan 100の吸入機構。尻軸の右側の部分を摘んで右にまわせば、先のような状態で胴軸から外すことが出来る。こうなれば胴軸内は綺麗に洗浄できる。
実はPelikan 1931の金無垢軸やRolled Gold 軸など、Pelikan 100の復刻版では同じような手順で吸入機構を外すことが出来る。
Pelikan M101NはPelikan 100Nの復刻版だが、こちらは価格が安いこともあり、Pelikan 100Nとは構造が少し違うので吸入機構の外し方も異なっている。
詳しくは趣味文 Vol. 28をご覧あれ!
こちらがペン先。あちこちに穴が空いている。明らかにクロームニッケルが腐蝕している。
画像では首軸内に隠された部分だけが崩壊しているように見えるが、ハート穴から出た髭の先端部(画像上部)には穴が空いている。
またハート穴からペンポイントまでの中間部分の上にある部分も腐って穴が空いている。これがインクがペン先部分で乾燥したときの脅威なのじゃ。恐ろしや恐ろしや・・・・
でも腐るとペン先が脆くなって書き味が柔らかくなるのも事実。崩壊寸前の書き味が一番いいと、クラックが入ったペン先を好んで捜す人もいる・・・わけないか。
こちらがakiさんの好みに合わせて研磨したペン先。ペンポイント先端部はより薄くし、ペンポイントを多少尖らせた。
そしてペンポイントの頭頂部分は、タコスペ超不細工加工を施し、押し書きで紙に当たるペンポイント部分の面積を少なくした。
そしてペンポイントの腹を落とした上でCarちゃんで斜めに研ぎ、極細の字幅を実現した。
もっとも非常に柔らかいペン先なので筆圧を書ければ字幅は増す。筆記する側も、かなりの手練れでなければこの萬年筆は使いこなせまいなぁ。まぁ、akiさん専用であろう。
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1.5h 記事執筆0.5h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間