2021年11月28日

【 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 】(アーカイブ 2008年8月)

この時にはヒートガンを持っていなかったので、首軸を綺麗に外すことが出来ず、ペン先とペン芯だけを引っこ抜いたのだが・・・

今ならヒートガンを使って首軸を接着しているシェラックを溶かしてから首軸を外す。

記録を残しておき、それを適宜Updateしておくと、後から修理に参入した人の参考になる。

これこそがこのシリーズの意義なのじゃ!




2008-08-27 01今回のブツは【生贄】ということでお預かりした。

どうぞお好きにしてください。自分では既に愛情が持てなくなりました】というようなものが【生贄】とされる事が多い。

詳細に調べてみたが、これは難物だな・・・と感じた。首軸、ソケット、ペン先&ペン芯、そしてピストン機構の全てが固着していてビクともしない

書き味に関しては最悪。オブリークの右側のエッジが紙に引っ掛かって運筆が上手く出来ない。

ピストン機構は弁がプラスティック製に交換され、尻軸側からピストン機構をはずせない。ということはペン芯+ペン先をたたき出す事も出来ない・・・まさに八方塞がり


2008-08-27 022008-08-27 03ペン先はスリットが詰まりインクフローはおぼつかない。エッジは引っ掛かって書きにくいことこのうえない。

さらにペン先の根元のカーブの径がペン芯よりも小さい。

それを押し広げるようにしてペン芯の上に載せているので、無駄な力がペン先先端にまで走っているような感じがする。

どう考えても生贄提供者の好みではない。しかしソケットを専用工具で捻ってもビクともしない。80度のお湯につけても首軸は動かない。

しかもピストン機構に不具合があるようで、何回かに一回はピストンが途中で止まってしまう。

軸は比較的綺麗な形状をしているので、このままにしておくか、軸を変形させてでもペン先を取り出し絶妙の書き味にする・・・

依頼者の性格を考えて、後者の方法をとることにした。


2008-08-27 042008-08-27 05長時間費やしてやっと取り出したペン先の根元径を拡げ、スリットも拡げた状態が左画像。

これをソケットにペン芯と一緒に挿し、それを首軸ユニットにねじ込み、最後に首軸ユニットを胴体にねじ込めば完成じゃ。


2008-08-27 06次にペンポイントの研磨。これは依頼者の書き癖に合わせて慎重に研磨する。尻軸にOBBと彫られているので、その形状は維持したまま筆記角度に合わせて研磨。

さらに一番尖った先端部(画像ではペンポイントの一番右下部分)をかすかに丸めた。これで引っ掛かりは皆無になる。

依頼者は35度ほどペン先を左に捻って書く(2年前調査)ので、オブリークであっても問題なく筆記出来る。ペンポイントの腹の研ぎが合ってさえいればな。

これを研磨無しで合わそうとすれば、ペンポイントが大きいだけに、毎日2万文字をかなりの筆圧で書いても数年はかかるだろう。

ましてや低筆圧の依頼者の場合、あと50年くらいかかるかもしれない。それまでに軸は朽ち果ててしまう・・・

これがペンポイント研磨のメリットじゃ。研磨は人間の手術と同じ。やるべきか、やらざるべきかは時と場合による。画一的に決まる物ではない。


2008-08-27 072008-08-27 08こちらが横顔。ペン先の位置は以前と同様。これ以上前に出すとキャップ先端部にペンポイントがぶつかってしまう。

ペン芯はホンの少し後退させて、ペンを寝かせて書く依頼者であってもペン芯が紙に接触しないようにした。

前期のフラットフィードなら問題ないが、後期のペン芯は寝かせて書くと紙にペン芯があたる事がある。従ってペン芯を後退させるのじゃ。その方が美しいし!

書き味は絶妙になった!ただしボディは(予想どおり)多少変形した。

ピストンは下まで降りてこないので、一度吸入したらペン先を上に向けて空気を押し出し、その状態で再度インクを吸えば、インク吸入量は設計どおりになる。

美しいじゃじゃ馬むすめ】が、年をとって往年の美貌は無くなり腰は曲がった慈悲に富んだ貴婦人】に育ったようなもの。

飾っておくなら前者、使うなら後者だろう。コレクターの拙者にとっては苦渋の選択であったが・・・


【 今回執筆時間:9時間 】 画像準備3h 修理調整4.5h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 


Posted by pelikan_1931 at 23:54│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック