2022年04月11日

【 Stipula I.Castoni Citrino レモンイエロー 18K-M 筆記中のインク掠れ 】(アーカイブ 2012年5月)

昔の調整記事を読むと毎回2つの事を経験する

(1)今ならもっと良い方法があるなぁ / 今なら解決できるなぁ ということ

(2)おお、こんないい事言ってたんだ。すっかり忘れてたわぃ。

という2つ。

現在のBockの樹脂製ペン芯は、このつるつるすべるペン芯なので、少しだけペン先を太らせてから首軸につっこむ方が良い。こうすればズレはほぼ無くなる。

当時はつるつるすべるというだけではなく、インクが引き潮のように、すぐに戻ってしまう【こらえ性の無いペン芯】という分析もしていた!

いやはや、昔の自分の記事を読み返すのが一番勉強になるような気がしてきたぞ!


1今回の依頼品は、一世を風靡したスティピュラのイ・カストーニ。拙者も緑軸を使ったことがある。

一時は5人に一人は持っているのでは?というほど流行った。西暦2000年前後かな?

依頼人も1999年の12月に米国のネットショップから新品未使用を入手されたとか。購入時からあった症状が筆記中に時々インクが出なくなること。

何度かペンクリに持込み、直っていたのだが最近再発してきたので・・・ということらしい。

スティピュラといえばインク途切れ!とエトルリアが初輸入された頃には言われたものじゃ。拙者も何度か伊太利亜送りにしたが、あまり良い結果は得られなかった。

ところが互換性のあるデルタのエボナイト製ペン芯を装着したところ、見事にインク切れが改善された。

またインクがドボドボでて困っていたデルタも、スティピュラのペン芯に変えたらちょうど良いインクフローになった・・・という笑い話をどこかで紹介した記憶がある。


23ただ、イ・カストーニの時代にはそういう初期不良は解消されていたはずなので、何か他に原因があるはずじゃ。

ペンポイントを見たところ綺麗に丸められている。見事というしかない。

ただ、スリットが詰まりすぎなので、少しでも書き出しの角度が変化するとインクが紙につかない。

またこのペン芯はインクが引き潮のように、すぐに戻ってしまうよう。いわゆる【こらえ性の無いペン芯】と拙者が呼ぶもの。

昔のペンクリではペン芯にナイフで溝を彫ったりしたものだが、苦情が出たのか、最近ではそういうペン芯に出会わない。


45スイートスポットはかなり広くとられている。そのおかげで依頼人は書き味の滑らかさには満足しているらしい。

ペン先とペン芯の密着にも問題は無い。ということはやはりスリットが狭すぎるのかなぁ・・・と考えながら胴軸を外すと、思わぬ物を発見した! 


6なんとコンバーターの中に小さなネジのような部品が入っている。どこかのペンクリでインク切れ対策として入れられたのだろう。

プラチナのステンレスボールと同じ効果を期待したのかもしれない。

最近ではパイロットのコンバーター50内部に同じような部品が入ったが、そちらは中空の金属片。

それに対して、こちらは中空ではない。しかも小さいので立てて筆記しているときに、コンバーターとペン芯との連結部分にピッタリと入り込んでしまう。

すなわちインクの流れを遮断する!どうやらインクの棚吊りを解消しようとした金属片がかえってインクの流れを阻害していたらしい。

この部品を取り除き、コンバーター内部をインク誘導液に30分ほど浸してみた。

とりあえずは筆記中の掠れは発生しなくなったが、これだけが原因とは断定できない。

温度、湿度、インク、紙、書き出し角度、ペンポイント表面の荒し方、スリットの拡げ方・・・様々な複合要因でインクは掠れるのじゃ。


7こちらは首軸から外したペン先のスリットを少しだけ拡げた状態。

これからペン先全体を洗浄してペン芯に取り付けるのだが、注意しなければならないことがある。

表面がツルツルのプラスティック製のペン芯は上に載せたペン先が左右にズレやすい。

特にペン先とペン芯を合わせて首軸に突っ込む際にスリっとずれてしまう事がよくある。


8こちらはペン先とペン芯を外す前の状態。画像の再下端はペン芯と並行にしてある。

ということはペン先がかなりペン芯の中央から向かって左に傾いている。

そうするとペン先のスリットとペン芯のインク誘導溝がズレるので、こちらもインクの安定供給に問題を発生させるかもしれない。

ペン先とペン芯がこれほどズレてもペンポイントに段差が出来ない事は通常はありえない。

ということは、ペン先とペン芯がズレたままの状態で、ペンポイントの段差調整をしたということ。

根本原因を直さないで、辻褄だけ合わす・・・萬年筆研究会【WAGNER】の認定調整師はこういうその場しのぎの調整には絶対に手を染めないで欲しい。

それがアマチュア調整師の良心(と誇り)じゃ!


910こちらが調整後のペンポイントの状態。ペンポイントの丸めには問題は無いが、エッジの処理が甘いので少しでもペンを傾けるとエッジの感触が気になる。

そこで少し魔法をかけて、書き出しがぬめっとした絶妙の感覚になるように特殊な仕上げをしておいた。

この効果は長続きしない。しかし通常は依頼人が神経質になるのは調整直後だけ。

その時点だけぬめぬめ〜としていれば、その後もその感覚が脳に染みこみ、その萬年筆の書き味になる。

だからこそ、調整師は自分の調整済み萬年筆の書き味をいつも真っ白な気持ちでチェックしておく必要があるのじゃ。

自分で【コレ完璧!】と思った書き味は、実は三ヶ月前の調整直後の書き味の記憶だった・・・なんてことがあるから怖い。

自省を込めて萬年筆研究会【WAGNER】の調整師に警告じゃ!自分の萬年筆の書き味は毎日チェックしよう!



【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 修理調整1記事執筆2h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 


Posted by pelikan_1931 at 23:59│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック