2022年05月25日

Montblanc No.644 多個一(たこいち) アーカイブ 2006年8月

この記事を読んで冷や汗が出た。とんでもない修理してたなぁ〜!

4枚目の画像のようにコルクを止めるナットの代わりにゴム板の破片を使ってるではないか!なんという事でしょう・・・

この部分にはピストンが上下するたびに大きな力がかかるので、エボナイトから挽き出したナットを使う必要がある。

これをゴム板の破片で直せたのは・・・たまたまで、そのうちすぐに外れてしまっただろう。

使えていたのは、シリコングリースが生きていた間だけ。

このナットは筆記具工房さんで作ってくれるので、困っている方は相談されてはいかがかな?




2006-08-26 01今回の調整は今までで一番、お金も時間も労力もかかったが、仕上りの良さもまた格別。超ハイブリッドが成功した事例じゃ。

正直ここまでになるとは最初は思わなかった。あまりの出来の良さに、仕上げ段階でのトリックを一つ中止した。それが必要なかったのじゃ。

依頼主から持ち込まれた状態が上の画像。一見普通のNo.644グレイ縞のように思われるが分解してみるとおぞましい状態じゃった。


2006-08-26 02.曠錺ぅ肇好拭爾No.252の物に入れ替えてある。

▲撻鷽弔ネジれていてペン先との間が極端に離れる。

ピストンのコルクもコルクを止めるナットもなく、薄い皮でピストンの代わりをさせていた。(画像には入っていない)


2006-08-26 03ぅ撻鸚茲No.144のものを下を切断し、エラを反らせてある。

ゥぅ螢献Ε爐魯螢船奪廚靴討△襦A悩爐盧念。

切り割りも左右非対称。


要するにすばらしいグレイ縞軸のNo.644を再生しようと手元にあった部品を集めてトライしたが、技術のベースが無いので何ともならなかった。

仕方ないのでウソをつかない範囲で説明文を書いて、第三者に売り飛ばそうとしたものだな。つかまされた依頼人はアンラッキー!

そこでそのアンラッキーをラッキーに変えるべく持ち込まれたのだが、正直途方に暮れた。

ますは大方針が重要。その大方針とは【ニブとペン芯は捨てる】ということ。

オリジナルのNo.644よりもすばらしいニブを付けることによってオリジナルを超えようというもくろみじゃ。


2006-08-26 04それが決まればあとは作業のみ。まずは、ピストンがちゃんと働くようにすること。

拙者はNo.142とNo.144に共通のコルクをいくつか持っているのでそれを提供すことにした。

問題はそのコルクを押さえるナット。これが一番重要なパーツなのだ!

これはゴム板をポンチで切り抜き、その中央に小さな穴を空け、周囲をコルクよりも一回り小さくなるまでルーターで削って作った。

上の画像の軸に、コルクをはめたあとで、ゴム板からくり抜いた小片をネジ部分に回しながら押し込めば完成じゃ。よほどの事が無い限りこれで大丈夫。


2006-08-26 06左がオリジナルのペン先の拡大図。左右非対称な上に、イリジウムの大きさも切断面のザラつきも明らかにMontblancのそれではない。リチップじゃ。

さらにはペン先がスリットの部分でカモメの羽のように波打っている。これでは美しくない。

そこで同じ独逸でもマイナーブランドであるMatadorのペン先で代用する事にした。


2006-08-26 05
図でわかるとおり、Matadorの方がシルエットが美しい。またニブの厚さが薄いので、非常に柔らかい書き味になっている。

Matadorのpen先の柔らかさに触れると中毒になる。拙者は1年間ほどMatador中毒だったことがある。

ただし、ネジれたペン芯の上には乗らないので、No.254用の後期ペン芯を装着した。


2006-08-26 07左の画像のように、Matadorのペン先の方がNo.144のニブよりははるかにNo.644に似合う。


2006-08-26 08ペン芯とペン先の間も密着するように熱湯の中に入れては位置関係を微調整した。左の図が完成状態を示している。

実は、この作業の後、金属部分を全て銀鍍金してしまおうと考えらのだが、試筆して考えが変わった。

こんなに書き味の良いMatadorのペン先を銀色に染めるのはもったいない!

ただし、ペン先とキャップとで色が多少違うので、よりペン先に近い色であるピンクゴールドでキャップ部分を鍍金した。

この作戦は大成功で、非常に優雅な色のキャップを持ちながら、ひとたび人の手に持たれると、絶える事なきフニャフニャの筆跡を流れるように提供してくれる。

この柔らかさは久しぶりの体験!まるでSwanのVintage万年筆のようだ。ああ、幸せ! それにしても6時間かけた大手術の後のビールは美味い!
 


Posted by pelikan_1931 at 23:59│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック