第一回の【世界の万年筆祭】では萬年筆倶楽部のfuenteもイベントコーナーを設けて展示や調整をしていた。その時に彼と出合った。彼の友人がConway Stewartの再興を図ったとの事で彼は日本における輸入総代理店として友人の事業を支援しようとしていた。とはいっても、万年筆に関しては素人同然の状態であったと思われる。ちょうど拙者が調整をしていたところへ彼が商品を一本持ってきて感想を聞かれた。拙者はConwayの万年筆について良い点、改良点などをズケズケと言った。彼は真剣に聞いてメモしていた。それが彼との出会いだった。
翌年の万年筆祭に行くと、彼はConwayのコーナーに立っていた。その時に目に入ったのが写真のDinkie。あまりに美しかったがペン芯がプラスティック製なのでダメ!と言ったら【昨年いただいた意見を元にこのDinkieだけはエボナイト製ペン芯を準備しているので後日交換します】と!なんと1年前の意見をちゃんと製造元にfeedbackしてくれていた。この時【絶対に約束は守る人】と信じたね、彼を。その後も拙者が主催するペントレーディングにも何回か出品していただいた。ほんの5回ほどのお付き合いではあるが互いに信じあえると感じたと思う。
ある日、拙者が当時勤めていた外資系会社で彼とそっくりの人に挨拶された。【兄がお世話になっています】。なんと弟さんさんだった。お兄さんを一回り小柄にしたような感じだったが声はそっくり!世の中悪い事は出来ない。世界は狭いのよ!彼の弟さんがたった1000人の会社の同僚だったなんて!それから3年以内に2人ともその会社は辞めたがね。
先日、萬年筆倶楽部の会長宅で何人か集まった際、【昨年彼が亡くなった】という情報を得た。びっくり!彼の最後の声はいつ聞いただろう?【浅草に家があり、隅田川の花火が真上に見えるので遊びに来ませんか?】と数年前に誘ってくれたのが最後だったはず。その後、拙者は何回も携帯の番号は変えていたが、彼の番号は引き継いでいた。で、その携帯に電話してみた。なんと年配の女性の声で返事があった。聞けば彼のお母さんだという。会社は拙者の元同僚の弟さんが継いでいるとかで会社の電話番号を聞き、電話してみた。【ハイ○○です】と彼と同じ声で応答があった。懐かしい声だ。それからしばらく彼の事をお話して電話を切った。彼にして上げられなかった事は、弟さんにしてあげたいと思う。彼(兄)の武勇伝はすごいらしいが、拙者には【誠実なビジネスマン】としての彼の印象しかない。彼がくれたこのエボナイト製ペン芯付きのDinkieは調整もせず万年筆ケースに残してある。彼がいなかったら日本でConwayに出会うことは出来なかったのだから。![]()