最初の万年筆博士 黒水牛軸
拙者が初めて万年筆博士を訪問したのは、1997年の夏だと記憶している。当時勤めていた会社の大阪支社を訪問すると、みな良い万年筆を持っている。しかも手作りじゃった。理由を聞くと、万年筆博士の社長の弟さんがその支社にいるとのこと。さっそくお会いして、製造元の万年筆博士のパンフレットをいただいて、訪問日を決め、山本社長に連絡しておいてもらった。
夏休みに岡山の実家から万年筆博士を訪問すべく電車に乗った。岡山と鳥取は直線距離では近いのだが、列車で行くと(当時は)ものすごく時間がかかった。今では特急が迂回路線を走っているが当時とは比べ物にならないほど早いらしい。ま、ゆっくりした列車の旅も良いもんじゃった。
鳥取につくとお昼はとっくに過ぎていたが、興奮してまったく腹がすいていなかった。そのまま転がるように地図の場所へ行ってみた。店の前で本当に万年筆屋かなぁと戸惑ったぞぃ。あまりにも垢抜けた店。拙者が理想と思う万年筆店のイメージは川窪万年筆店じゃ。こりゃあまりにも違いすぎる。おずおずと店に入ると純金のMontblancが50万円くらいで陳列してある。とても田舎の万年筆店の雰囲気ではない。
奥の方にいた無愛想な髭のオヤジさんに名前を名乗ると、にこっとして【弟から聞いてますよ】と微笑んだ。これが山本社長だった。一気に気が楽になり、あれこれ万年筆の話をし、軸とペン先を選び、書き癖を見てもらった。当時、自分での調整もかなりのレベルではあったのだが、自分の書き癖を知らなかった。癖を知らないで感覚で調整していたのだ。ここはプロの目で書き癖を見ていただくと同時に、どうやって他人の書き癖を分析するのかのコツも習得したかった。それもあって鳥取まで行ったのじゃ。
おそらくは万年筆博士の書き癖分析紙が世界で最初に出来上がった完璧な分析フォーマットだろう。もしあれに書いてあることが100%正しければ遠隔地にいる人の書き癖がわかる。拙者でも約80%の確率で書き手を満足させられる自信がある。それほど完成度は高い。
最後に住所と名前を書くのだが、その際山本社長の分析によれば、拙者は漢字はペンを寝かせて書き、数字はペンを立てて書いていたらしい。こういうところは分析シートでは表現出来ないので、完璧を期すなら山本社長に直接分析してもらうのに越したことは無い。
このときは8月に発注して出来上がったのは翌年の5月だった。まだ田中さんも若かった?ので毎日残業してこなしていたようだった。職人というとむっつり!という感じを受けるが、万年筆関連の職人は押しなべておしゃべり好きだ。田中さんも例外ではなく、非常に楽しい時間をすごさせてもらった。
長くなったので、この万年筆に関する印象はまた後日じゃ。

Posted by pelikan_1931 at 06:00│
Comments(7)│
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万年筆博士の職人である田中晴美さんの職人生活50周年を記念した、ココボロウッドの万年筆は200本限定で、またたくまに製作本数に到達したらしい。山本社長らは、当初、ヘッドにセルロイドの飾りをつける予定でいたようだが、古山画伯らの【何もつけないほうがシンプルで良...
親の仇のように使う意味 万年筆博士 田中晴美 50周年【万年筆評価の部屋】at 2006年04月08日 07:40
昨日はこの万年筆についての書き心地や調整について書く前に力つきたので、気を取り直して書く! こいつは拙者にとって初めてのオーダーメードの万年筆!要するに注文の仕方も勘所も良くわかっていなかったわけじゃ。また、こんなに太い軸の万年筆は持ってなかったのもか....
万年筆博士 黒水牛軸 続き【万年筆評価の部屋】at 2006年04月08日 07:37
昨日の黒水牛軸の話の中に出てきたのが、この鼈甲軸じゃ。1987年の10月の万年筆博士の交流会で注文して、クリスマスには届いていた。8月に頼んだ黒水牛は翌年なのにもかかわらずだ。 からくりを山本社長に聞いたら、交流会用の枠をあらかじめ見込んで納期をきめているの....
万年筆博士の鼈甲軸 あっという間に出来上がった!【万年筆評価の部屋】at 2006年04月08日 07:36
昨夜テレビ番組の「サラメシ」を観ていたら「まるごと鳥取」の企画で
県庁の食堂などのほかに「万年筆博士」が取材を受けており、昼食風景
だけではなく特注万年筆の制作や常連客の接客なども織り込まれていて
楽しく視聴しました。
スキャナー画像がPC表示される時の色に合わせている修正を施しておるので、拙者のモニターじゃと色はまったこ同じじゃ。
PCの特性や輝度によっても違うが、印刷よりは正確じゃよ。
万年筆博士のカタログで見ていると、黒水牛軸は(黒)ですが、pelikan_1931様の写真ではグレー縞に近いです。この色は本物に近いのでしょうか。この色が正しければ、ココボロウッドから黒水牛へ方向転換するかもしれません。あまりに美しい。
aurora_88しゃんをせかしてはいかんのよ。
彼の性格からして、忘れたころに、ドカドカと出して、また地下に潜る行動をとるかもしれん。
師匠、上のコメントを読む限り、
aurora_88氏は相当の書き手と思いました。
いつごろ、aurora_88 は、ブログのかたちでまとまって原稿を読ませていただけるのでしょうか。鶴首して待っております。
明朝には続き(感想)をUpしませう。
aurura_88しゃんと万年筆博士の接点が謎じゃったが、やっと分ったな。
私が万年筆博士のペンを持つようになったきっかけは、二年ほど前の初夏のこと。HAKASE通信の座談会出席のため上京された田中さんが、その合間にユーロ・ボックスのおいでになり、その場に私も居合わせたという幸運からです。
話に割り込んで注文方法などをお聞きし翌日鳥取に電話。注文書などを送っていただいて、約一年後の昨年夏に届いたペンが今一番身近な五十周年、ということになります。