先日、通称【悪魔の館】あるいは【やかた】と呼ばれるユーロボックスで2本の国産万年筆を入手した。片方には【H977】という刻印がある。
これは1977年の9月に製造されたニブであることを表している。今から30年近く前に作られたペン先。状態はMintでまったくの未使用。それが発売当時の定価で入手できた。極太&ミュージックのペン先コレクターの拙者にとっては無常の喜びじゃ。帰宅してから調べてみたらキャップの金色部分が長い方の万年筆は3本目だが、全て同じペン先。目に付くと今までに買った物の記憶は吹き飛び、欲しい!という気持ちだけが急上昇するようじゃな。
2本のニブを拡大してみると【COARSE】との刻印がある。そう超極太のコースニブじゃ。最近ではPilot 823のコースニブをフルハルターで研いでもらうのが流行している。拙者も一本研いでもらった。オリジナルよりもかなり太い字が書けるような気がする。拙者はインナーキャップを外してペン先が外から良く見えるようにして使っている。もちろんキャップを締めた時にクリップがペン先の真上になるようにペン先の位置も調整している。話は脱線するが、なぜ823に黒いインナーキャップをつけて売るのかさっぱり理由がわからない。無いほうがはるかにエレガントなのに・・・ずっと以前にPilotの人に聞いたら【インナーキャップが無いと、ペン先のインク汚れが目立つから・・】という理由じゃった。ボロ隠しかよ・・・ そういう理由よりも【立派なペン先を見て欲しい!】という前向きな気持ちで堂々とインナーキャップを外して欲しい。
現代のコースニブの原型ともいえる1970年代の【COARSE】はどんなのかな?とルーペを覗いてびっくり!現代のコースは大きくて卵型のイリジウムで【どうにでも調整して!】とでも言いたげな形状。ソレに対して当時のCOARSEは左の写真のようにすっぱりと斜めに切り落とされている。切り落とされた表面には縦に筋のような削り跡が残っている。2本ともじゃ。
そのままインクをに浸して書いてみたが、どうにもザラザラする。接紙面積が広いので削り跡は問題ないと思ったが、やはり現代の上質紙の上ではザラザラが気になる。一本を2000番/5000番の耐水ペーパー、金磨き布で調整し、最後にエッジだけ15000番のラッピングフィルムで舐めてみた。非常に気持ちよく書けるペンに激変したが、それは拙者がイリジウムの角度に合わせて書いたから。この角度が合わなければ酷い事になったろう。
何かに似ていると思って比較したら、セーラーのZoomの研ぎにそっくり!Zoomでは切っ先に近いほど細くなる研ぎをして字幅の変化を持たせる工夫をしている。どうやらこの時代のCOARSEはその後のPilotのコースニブとは趣を異にした作品らしい。拙者はこの時代のCOARSEも現代のコースも、はたまたSailorのZoomも全て好きじゃ。
これは仮説じゃが、この【COARSE】ニブは店頭で調整してから売るのを前提としたニブではなかったのか?そうでなければ削り跡があれほど残っているペン先は売れないじゃろう。ま、それだからこそ、30年後にMintの状態で入手出来るのだから文句言う筋合いは無い。
もし店頭調整を前提としたニブだとしたら・・・それはこれからの時代にこそ必要なニブではないか! このニブは登場が30年早かったのかも知れんな。