パイロット会社案内 その3
ここに紹介する2枚の写真はパイロットの会社案内に収められている【事業所/国内】の最初の2枚。ここでは本社、工場、関連会社の写真が順番に掲載されている。
まず本社の紹介じゃが、右上の取扱商品の最初に【万年筆】と掲載されている。万年筆の売上げが5%にも満たない現在と違い、昭和37年(1962年)には万年筆がパイロットの主要商品だったのは間違いない。
万年筆のほかにもシャープペンシル、ボールペンなどに並んで【インキ、スタンプパッド、カーボンペーパー】などもある。このあたりはGünther Wagner社と似たような商品群じゃ。独自の商品としては計算尺、計算機などがあった。
左の写真の下左は【事務合理化の先端を行くIBM室】と思われる。机に並んでいる女性はキーパンチャーで、机の側のくずかごには打ち損じたパンチカードを捨てるようになっていたのじゃろう。当時はコンピュータといってもパンチカードシステムじゃ。1964年に実施された東京オリンピックにおいて、初めてオンラインによるデータ集計システムがお披露目されたはず。昭和37年当時は受発注伝票をパンチカードに打って、集計し販売店向けの物流の迅速化、正確化に使ったと思われる。
京橋にあったパイロットの本社ビルは7階建て2,900平方メートルだが、手狭で分室が多数あると書いてある。今考えれば巨大なコンピュータを東京駅近くの地価の高い場所に設置するなど愚の骨頂のように思われるが、土地代をはるかにしのぐ価格のコンピュータに一等地を与え、カスタマーエンジニアがすぐに駆けつけられるようにする方が、理にかなっていたのかもしれない。なんせパンチカードシステムはカードがスタックして頻繁に故障したはずじゃからな。
右の志村工場は21,100平米の敷地を持っているが、ほとんど修復不可能な戦禍を受けたらしい。しかし復旧に全精力を注ぎ、敷地内に近代設備を備えた建屋が次々に立ったようじゃ。しかし、作るだけ売れるという好景気に引っぱられて手狭になり、次回紹介する平塚での画期的工場建設へと繋がっていったのじゃ。
当時の万年筆製造技術は、豊富な資金力に支えられて、常に最先端の機械を購入することによって支えられていた。それを身につけ、工夫することによって、万年筆以外にも応用できる可能性を技術者なら見つけてしまう。それがQC活動を通じて上層部に提案され、やがてパイロットの業態を変えてしまったのじゃ。逆に、それがなければ幾多の独逸の万年筆メーカーと同じく、パイロットも消えていたかもしれない。
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(6)│
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こまねずみしゃん
昔のCE(カストマーエンジニア)は照れ屋が多かったので、さすがにオフィスでは手を握らなかったとは思うがな。
ワイシャツを捲り上げてササっと直すのが頼もしかったのじゃろう。
それとキーパンチ室には機密情報がはいってくるので、周りから隔離された女性の部屋で、若い男性がいないということもあったんじゃろうな。
pelikan_1931さん
私も高校時代からパソコンを使い始め、大学時代・会社員時代はほぼ全ての文書をパソコンで作成していました。
万年筆は3本ほどを署名したり、宛名書きをしたりして、そこに個性を出していました。
ところが、再度大学院に入ったときに、その場でペンを握って文章を書く能力が高校時代に比べて格段に落ちていることに気がつきました。論文やレポートはPCで作成してきたから、入力後に色々と推敲できるのですが、法律試験となるとその場で文章を組み立てて書かなければいけないわけです。
そこで、再度万年筆が机の上にずらりと並びだし、どんどん増殖する事態になったわけです(^^;
修理担当者がモテていたとははじめて知りました。やはり、頼り甲斐を感じさせると男に女性は弱いということでしょうか。
キーパンチャー病の女性の手を優しく握り・・・なんてこともあったんでしょうねえ。
298しゃん
この当時は、壊れた機械を魔法のように直す、コピアやパンチカード機器担当のカストマー・エンジニアが一番もてたというのは聞いたことがありますな。
こまねずみしゃん
しかし、パソコンをカードで購入する際にはボールペンでサインするので、共存といえば共存ですな。
目的にあわせて使い分けが進んでいくでしょう。
拙者は文章を作るのに万年筆は使わず、パソコンだけです。万年筆を持つと何も文章が浮かばんようになってしもうた。最もコンピュータに毒されている人種かもしれん。
今パソコンに行き過ぎた感があって、次第に人のぬくもりが感じられる自筆が見直されているように思います。 もっと、自筆回帰が進むことを期待しますね。(笑)
しかし・・カードパンチですかぁ この当時の修理を担当されていた人はパンチャーの方を奥さんにされた人が多いということを聞きました。
事務合理化の先端を行くとして導入したコンピューターがどんどん進化を遂げて、今や筆記文化そのものが食われている現状を見ていると、何とも複雑というか、皮肉な話ですね。