今回の調整報告は【シェーファー ノスタルジア バーメイル】。ペン先が14金一色のモデル。1984年の【THE PEN】には物品税込みで10万円と出ている。ちなみに純銀モデルは8万円じゃった。それぞれ物品税抜きでは¥86,956と¥69,565となっている。拙者は物品税が廃止されてからデパートで購入したが、消費税抜きでそれぞれ8万円と7万円だったように記憶している。
今回の調整依頼事項は、ペン先の形状が左右不揃いなので矯正する事、ややカモノハシ気味にして柔らかい書き味にすることじゃ。実はイリジウムの切割りが前から見て異常に右斜め下向きに入っている。これは切割りを入れる際にペン先が斜めになったままヤッチマッタ・・・ためじゃろう。これも矯正依頼となっていたが、さすがにコレは無理じゃ。従ってやや目立たないような細工をするにとどめた。今回の調整はイリジウムの矯正に絞って報告する。
左が調整前のイリジウムの拡大画像じゃが、確かに酷い。よくこれで出荷検査を通ったものじゃと思う。イヤ・・・イリジウムの形状などのチェックはやってなかったのかもしれない。しょせんSheafferじゃから・・・
しかしこの大雑把さが拙者は好きじゃ。Sheafferはいじる箇所が非常に多く残されている。これが国産品じゃと皆同じ形状で面白みが無いでな。
調整には前回登場した新兵器を使った。くわしくは下記の2007-07-08の調整記事を参考にされたし。今回は耐水ペーパーの貼り付けにVHBを使用。超強力な両面テープなのでGoodじゃ。前回コメント欄でアドバイスくださった皆さん、ありがとしゃん。 こちらが280番の耐水ペーパーを例の新兵器で形状を整えた直後の画像じゃ。まだ仕上げはしていないが、醜い形状がウソのように無くなっているのがわかろう。これは上から見た画像じゃが、下から見ても同様の形状になっている。これは削る時の注意事項じゃが、真直ぐに削っているようでも斜めに削っているケースがある。従ってこまめに裏表から形状確認しながら削る必要があるのじゃ。急いではイカン。本日、この調整で約5時間かけておる。もっとも画像処理して、文章を書いて・・・という行為も含めてじゃから、調整だけで正味3時間というところか・・・・それほど早くは無い。替えがきかないニブの調整にはそれなりに時間をかける事が大切じゃよ。
こちらが完成図じゃ。ペン先先端はややスタブ気味の筆跡になるように平たくしている。裏でも表でも書ける。裏書すると横線は極めて細く、縦線はかなり太い筆跡となる。表書きなら縦と横の字幅はやや近づく。
依頼者は首軸の先端付近を持ってゆっくりとした速度で筆記する。しかも極太の筆跡が好きじゃ。従ってペン先のスリットを拡げ、インクフローを拡大した。元のままではペン先が詰まってインクが出にくいからな。
調整が終わって試し書きしてみると・・・(依頼者はキャップを後ろに挿さないで筆記する)・・・表ではゴシック体文字に最適、裏では行書体文字に最適な字幅が得られる。インクフローはいずれも良い。
今回も大成功じゃった!
これまでの調整記事
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】