2006年07月15日

今週の調整報告 その3 【シェーファー ノスタルジア バーメイル】

2006-07-15 01 今回の調整報告は【シェーファー ノスタルジア バーメイル】。ペン先が14金一色のモデル。1984年の【THE PEN】には物品税込みで10万円と出ている。ちなみに純銀モデルは8万円じゃった。それぞれ物品税抜きでは¥86,956と¥69,565となっている。拙者は物品税が廃止されてからデパートで購入したが、消費税抜きでそれぞれ8万円と7万円だったように記憶している。

2006-07-15 02 今回の調整依頼事項は、ペン先の形状が左右不揃いなので矯正する事、ややカモノハシ気味にして柔らかい書き味にすることじゃ。実はイリジウムの切割りが前から見て異常に右斜め下向きに入っている。これは切割りを入れる際にペン先が斜めになったままヤッチマッタ・・・ためじゃろう。これも矯正依頼となっていたが、さすがにコレは無理じゃ。従ってやや目立たないような細工をするにとどめた。今回の調整はイリジウムの矯正に絞って報告する。

2006-07-15 03 左が調整前のイリジウムの拡大画像じゃが、確かに酷い。よくこれで出荷検査を通ったものじゃと思う。イヤ・・・イリジウムの形状などのチェックはやってなかったのかもしれない。しょせんSheafferじゃから・・・

 しかしこの大雑把さが拙者は好きじゃ。Sheafferはいじる箇所が非常に多く残されている。これが国産品じゃと皆同じ形状で面白みが無いでな。

 調整には前回登場した新兵器を使った。くわしくは下記の2007-07-08の調整記事を参考にされたし。今回は耐水ペーパーの貼り付けにVHBを使用。超強力な両面テープなのでGoodじゃ。前回コメント欄でアドバイスくださった皆さん、ありがとしゃん。

2006-07-15 04 こちらが280番の耐水ペーパーを例の新兵器で形状を整えた直後の画像じゃ。まだ仕上げはしていないが、醜い形状がウソのように無くなっているのがわかろう。これは上から見た画像じゃが、下から見ても同様の形状になっている。これは削る時の注意事項じゃが、真直ぐに削っているようでも斜めに削っているケースがある。従ってこまめに裏表から形状確認しながら削る必要があるのじゃ。急いではイカン。本日、この調整で約5時間かけておる。もっとも画像処理して、文章を書いて・・・という行為も含めてじゃから、調整だけで正味3時間というところか・・・・それほど早くは無い。替えがきかないニブの調整にはそれなりに時間をかける事が大切じゃよ。

2006-07-15 05 こちらが完成図じゃ。ペン先先端はややスタブ気味の筆跡になるように平たくしている。裏でも表でも書ける。裏書すると横線は極めて細く、縦線はかなり太い筆跡となる。表書きなら縦と横の字幅はやや近づく。

 依頼者は首軸の先端付近を持ってゆっくりとした速度で筆記する。しかも極太の筆跡が好きじゃ。従ってペン先のスリットを拡げ、インクフローを拡大した。元のままではペン先が詰まってインクが出にくいからな。

 調整が終わって試し書きしてみると・・・(依頼者はキャップを後ろに挿さないで筆記する)・・・表ではゴシック体文字に最適、裏では行書体文字に最適な字幅が得られる。インクフローはいずれも良い。

 今回も大成功じゃった!


これまでの調整記事

2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】



Posted by pelikan_1931 at 10:30│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
丸刈太しゃん

そう、【万年筆は刃物】ですな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月17日 08:24
機関銃のようにタイプするなどと昔は言いましたが、IBMの電動タイプは
重火器でしたね。一人では持てませんし。

すると万年筆は、やっぱり刀ですか。
Posted by 丸刈太 at 2006年07月16日 16:05
丸刈太しゃん

ラインプリンター以外は全て使ったことがありますな。
しかし 3Mと覚えていたものをフルで表記されるととまどいますな。

ちなみに【I.B.M.】とドットが入ると【国際奇術師協会】とか・・・
ずいぶん前の【現代用語の基礎知識】に出てました。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月16日 00:52
みごとです。またお手本にします。

「万年筆は刃物」確かにそうです。加えて、「研磨剤は刃物」と
最近つくづく思います。Minnesota Mining and Manufacuturing社の
研磨剤は非常にキレます。何度切りすぎたことか。万年筆じゃなくて
よかった。
そういえば会社にあったInternational Business Machines社の
タイプライターもキレる機械でした。某社のラインプリンターは
使う方がキレました。Canon EOS RTもキレたなあ。
Posted by 丸刈太 at 2006年07月16日 00:24
らすとるむしゃん

整形美人用の手術室は【阿鼻叫喚】ですがな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月15日 21:11
師匠。

シェ−ファーはかなりの高級ラインでも今回のようなイリ玉の接合部分の不具合(シェ−ファーは不具合と思っていないようです)は何度も見たことが有ります。見た目に美しくないのでこのように左右均等になるように削って整形すれば整形美人になるようですね・・・ついでにフロー調整などして書き味も良い物に・・今回も大成功ですね!!。依頼人もさぞお喜びでしょう。
Posted by らすとるむ at 2006年07月15日 21:09
井筒屋しゃん

おぅ、Sheafferなら何本でも送られよ。全て直してしんぜよう。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月15日 20:08
師匠!

Sheafferはバラツキも多いようですが、修理もしやすい設計になっているようです。このようなイリジウムがついたものを何本か持っています。今度送って良いですか?
Posted by 井筒屋 at 2006年07月15日 20:03