修理・調整の回の評判が良いようなので、しばらくは週に2回【水・土】に調整報告をしよう。WAGNER会場で調整せず、自宅に持ち帰った物は相当修理・調整・改造に時間が必要なので、その過程を撮影しながら出来上がりまでを紹介する。たまには成功しないものもあるかもしれないので悪しからず!今回の修理依頼はSheafferのTuckawayじゃ。101本の万年筆で紹介されてから人気に火が点いたようじゃな。拙者も1998年ごろには熱中した。
小さくて可愛い割りに書き味が秀逸なので、秘書に愛用されていたとか。101本の万年筆には首軸のところに【リ】に似たマークが彫られていると書かれているが、全てに彫られているわけではない。事実、今回の修理依頼品には彫られていないし、拙者が過去集めた20本以上のTuckawayにもあったり無かったりじゃった。
このペン先はガチガチに硬いが、インクフローが極端に良いので、長時間一定の筆圧で筆記するにはピッタリじゃ。Sheafferのラップアラウンド・ニブの細字の書き味は極上で、拙者は【最も書き味の良い細字】と評価している。ただし、飽きるのも早い・・・・面白みは無い書き味なのでな。 今回はインクが吸入出来ないということで、分解してみた。Oリングの黒いゴムは、一見問題なさそうに見えるが、弾力は無く空気が抜けてしまう。これは緑の胴軸内部にセットする。
茶色に変色したカスのようなものは、インクでカチカチに固まったゴムサック。筒の内側に金属のように硬化して貼り付いていた。これを取るのはかなりの難儀じゃ。まずは熱湯に10分ほど入れて多少ふやかしてから、歯科用のメスを何種類か駆使して、内部から削り落としていく。内部に少しでもカスが残っていると、そこから新しいゴムサックが腐っていく。
レバーフィラー式やタッチダウン式の万年筆でインクを抜かないでいたアンティーク品は、100%このような状態になっていると考えた方が良い。従って、自分で修理できるだけの道具・部品・経験を持ち合わせていない場合で、修理してくれるShopが近くに無ければ手を出さないほうが良い。WAGNERには修理が得意な人が少なくとも10人はいるから安心しなはれ。 これが新しいサックを装着した状態。レバー・フィラーの場合と違い、サックは真直ぐに接着する。サックセメントはすぐに乾くので、10分もしたら水を吸入するかどうかサックを押して確かめてから、胴体に装着する。その後、タッチダウン機能を動かして、実際に水を吸うかどうか確かめる。この段階で水を吸わなければOリングの不良じゃ。
これが修理完了したTuckawaynの姿じゃ。ペン芯を真横から撮っている。この大きなペン芯にたっぷりとインクを含んでおり、そのペン芯をぐるりと巻いたペン先が、独特のインクフローを提供してくれる。MやBではなく、ぜひFで書き味を堪能して欲しい。
今回の依頼品はペン先調整は一切していない。まったく調整が不要なほど完璧!今まで使ったTuckawayの中で最高の書き味じゃ。いやはや、まいったな・・・
修理は大成功じゃった!
過去のTuckaway記事
2005-08-05 Tuckaway
これまでの調整記事
2006-08-10 Montblanc No.256 KOB
2006-08-05 Conway Stewart Floral
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】