最近、国産万年筆を使う機会が増えてきた。WAGNERでの調整を始めてから【一生出会うことは無いと思われていた名品】を試し書きしたり、調整する機会が増えるにつれ、Vintageの独逸物に対する憧憬の念は薄れていった。どんな名品でも誰が持っているかさえ把握していれば、いつでも使うことが出来る。
その【気付き】は、ありとあらゆる万年筆を集めようという気持ちを開放し、最近は仙人のようなコレクターになっている。欲しい物があればWAGNERで煽れば誰かが入手してくれるのじゃ。このBlogで煽ると拙者の手の届かないところに行く可能性が高いのでやらないがな。
ところが国産万年筆ではコレクターの収集範囲がわりと限られている。蒔絵や戦前のマイナーブランド物が中心のようじゃ。
拙者はインク留め式が耐えられない上、蒔絵万年筆にも興味が無い。欲しいのは珍しいペン先【極太かミュージック】のみ。そうなると拙者が欲しい物をコレクションしている人は少ない。また、国産品コレクターはコレクションを門外不出にするケースが多いのも出会いを困難にしている。
従って自分で集めない限り使うことは出来ない・・・ たまに出かける店で見かけると購入する程度じゃが、不思議と良い出会いが多い。 このパイロット製の無銘の万年筆は、数年前の世界の万年筆祭りで購入した。値段は値札どおりの7000円。もちろんMint。地味な軸じゃが、ペン先はシルバーンなどと同じりっぱな菱形ニブで字幅はcoarse。辞書で調べてみると【粒が大きい】というような意味もある。
カートリッジかコンバーター20を使うごくありふれた軸だが、菱形ニブでコースがあったとは知らなかった。出来るならシルバーン用にもコースニブを作って欲しいものじゃ。
パイロットのニブの特長だが、極太ニブになると先端がかものはし状態に研ぎ上げられている。従って分厚いニブの割には弾力が感じられる。とことんニブを研究したパイロットらしい仕上りじゃ。【万年筆と科学】でペン先のバリエーションについて並木製作所が語っていたころ、ペリカンはまだ万年筆を作っていなかった・・・それほど歴史があるパイロットだけにニブの調整にも思想があるじゃろう。 それは良いのじゃが、もっとユーザの希望をかなえてくれるようなカスタマイズ【たとえば特注の大玉イリジウム付き】などを気軽に引き受けてはくれないものじゃろうか?
硬直した組織からは良い万年筆は生まれない。伊太利亜製万年筆が、品質に問題があってもユーザを増やしていったのは、ユーザの声をすぐに反映する【ベンチャー企業体質】だからじゃ。これは旧来の製造業が見習うべき事項。製造担当専務取締役ペンクリ師が出てくるようでないとな。ペン先調整人に専務は出来まいが、専務にペン先調整を教えることは出来る。 コースの研ぎを見ると、イリジウムを斜めに切り落としている様は、セーラーのZoomと似ている。一見するとイリジウム先端と根元部分で紙に引っかかりそうに思われるが実際にはヌメヌメの書き味。この切り落とし角度はセーラーのZoomと同じと思われる。何か実験結果などに基づいてこの角度を決めたのかな?ペンをかなり寝かせて書く拙者でも十分使える。ペン先研磨は奥が深そうじゃ。
この記事はBlog開始以来、ちょうど1000番目の投稿じゃ。記事、紹介文あわせてじゃが。
【パイロットちょい古万年筆記事一覧】
2005-08-16 Namiki Vanishing Point
2005-08-31 ジャスタス
2005-09-01 津軽塗り
2005-09-03 キャップレス
2005-10-13 Elite フォルカン
2005-10-14 ミュー
2005-10-15 パイロット65
2006-01-29 18金WGニブ付
2006-04-22 革巻軸