
依頼者は吸入したインクがピストンの裏側に回った状態が大嫌いじゃ。従ってピストン吸入機構は使わない。ソケット毎ペン先を外し、注射器でインクを胴軸内に入れ、ソケットをねじ込んで使う。従ってソケットは首軸にしっかりとは固定されていない。非常に不安定な状態で使用している。ただ筆圧が低いので特に支障は無いらしい。

まずはペン芯を綺麗に削って見栄えの良いように改造じゃ! また一見してペン先のスリットが詰まりすぎ。かつ段差が出来ている。これでは書く都度に紙を削るような感覚に陥ってしまう。さらにはソケットが多少緩い。これは依頼者に取って重大な障害となる。
依頼者はインクが無くなる都度、ペン先ユニットを捻ってはずし、インクを注入した後で再びネジ込む。ソケットが緩いと捻る段階でペン先とペン芯の位置関係がずれてしまう。このままでは一回の注入毎に微調整が必要になる。

よくMontblancはインク漏れが多いといわれるが、これは軸の設計が悪いだけではなく、ペン芯の設計の問題もある。ペン芯の空気流入量調整機能がヘボだと必要以上に空気を取り込み、結果としてインクがキャップ内に出てしまう。これが軸付近に付着して、あたかも軸からインクが漏れたかのような錯覚をおこさせる事もある。
少なくともPelikanのペン芯は日本の気候にも十分耐えられるだけの能力を持っている。



今回のような微調整は大改造と比べて地味だし、書き味の変化もそれほど大きくは無い。しかし拙者の満足感ははるかに大きい。意図したシナリオどおりに書き味が変わっていくのは、奇跡の大成功より面白い。お釈迦様の気分じゃ! 自分用の調整なら奇跡の大成功は嬉しい事ではあるが、他人用の調整で奇跡の大成功を成し遂げるためにはその100倍の生贄が必要じゃからな。
これまでの調整記事
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤
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2006-09-13 Montblanc No.742-N
2006-09-09 Montblanc No.252
2006-09-07 Montblanc No.22 緑
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2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化
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2006-08-16 Sheaffer Tuckaway
2006-08-10 Montblanc No.256 KOB
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2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
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2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】