
依頼品は素通しインク窓だが、拙者が購入した2本のうち、1本は現行品と同じストライプのインク窓! 拙者は素通しのほうが好きじゃ。
今回の調整において頭に入れておく事は、依頼者が極端にペンを寝かせて書く癖があること。Montblanc 60年代の2桁番代モデルをそのまま使用するとペン芯が紙に触ってしまうほど。依頼者は既に1950年代のNo.146を所持しているので、こちらは柔らかさよりもある程度ガッシリとした書き味が良かろう。

つぎにピストンが異様に硬い。10往復もさせれば全身の筋肉が痙攣するほど。痩せていて非力そうな依頼者には酷な作業かもしれない。

上の横画像で見るとイリジウムの研ぎはややペン先を立てて書くように調整されている。それに対して依頼者はペンを極端に寝かせて筆記する。従ってイリジウムの腹の部分の一部が紙にガリガリとエッジを当てている。

前からゴム板で挟んで引っぱるとフィンを折る確率が高い。ここは定石どおり、ピストン機構を外して後ろからペン芯とペン先を前にたたき出す方が安全じゃ。



真ん中あたりを見るとペン芯があたる部分がいっそう濃く焼けている。エボナイト製ペン芯だから起こる状態。見た目には年代を感じさせてくれて良いのじゃが、筆記には向かない。


このMのペン先はNo.146に搭載されたペン先の中では最も出来が良いと思う。調整の幅が大きいので楽しい!

一見ほんのわずかな調整に見えるが書き味の激変ぶりに歓喜の声が上がるじゃろう。ペン先の先端を絞ってインクフローが悪くなる調整に見える。ところが以前にも増してインクは流れ出る。引っ掛りも解消。この時代のMontblanc No.146らしい書き味の余韻は残しつつも異次元の体験をさせてくれる。
拙者は1950年代から現在までのあらゆるNo.146を筆記してきたが、平均すればこの時代のNo.146のニブが最も好きじゃ。その中でも飛び切りの一本になった・・・・かもしれない。
これまでの調整記事
2006-09-23 Montblanc No.149 BBB
2006-09-20 Pelikan 140 赤
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤
2006-09-14 Soennecken Pony
2006-09-13 Montblanc No.742-N
2006-09-09 Montblanc No.252
2006-09-07 Montblanc No.22 緑
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化
2006-08-30 Montblanc No.149 開高健モデル
2006-08-26 Montblanc No.644 グレイ縞
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway
2006-08-10 Montblanc No.256 KOB
2006-08-05 Conway Stewart Floral
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】