2006年10月14日

土曜日の調整報告 【 Senator President B 】

2006-10-14 01 拙者がSenatorと初めて出会ったのはオーストラリアのシドニー。シドニーオリンピックの2年前でで町中が活気に満ち溢れていた。

 ビジネスマンにとってシドニーへの出張というのは過酷。日本で20時ころまで仕事し、それから成田にかけつけ、22時くらいの飛行機でシドニー空港へ!翌朝7時に空港へ到着し、先方のオフィスへ直行。すぐに会議を始め、夕方19時までオフィスにいて、食事してから空港へ!そのまま飛行に乗って成田へ!

 成田に早朝到着し、そのまま恵比寿のオフィスへ直行!朝から出張の結果を受けて対策会議を開催・・・てな感じ。シドニーには一泊もしないで、機中泊2日という強行軍。慣れてない新入社員は成田に到着しても昏睡状態で起きられないほど疲れる。同行した外人役員の場合、東京で会議した足で、成田から韓国へ飛び、同じような会議をしてヨーロッパへ飛んだりしていた。鍛え方が違う・・・・

 シドニーには数回行ったが、ゆっくりと町を楽しんだのは一回のみ。電話帳で万年筆ショップの住所を見つけてから歩いて訪問してみたが、半分以上は既に店が無くなっていた。オリンピック景気のなかで、ビジネスに見切りをつけて店を売り払った人が多かったのだろう。

 オーストラリアは日本より万年筆が高かった!Montblanc No.149は、日本で6万円程度だったが、シドニーのMontblancショップでは7.3万ほど。従ってVintage物に的を絞って捜した・・・が、ほとんど収穫無し!結局地元の文具店で購入したのがDiplomatとSenatorの安い万年筆数本。

 これらがスチールペン先だったのにもかかわらず、極めて書き味が良かった。特にSenatorはそれまで聞いたことが無いブランド名だったので記憶にとどめておいた。

 その後、eBayでSenator Presidentの18金ペン先モデルのBニブ付を発見し即購入。あまりにもバランスが良いので、追加で購入しようとしたが、既に発売中止とのことで断念。そのうちヤフオクで14金ペン先付が出るようになったので数本購入した。めだかしゃんや、らすとるしゃんもお持ちじゃ。

 クリップの留め方が雑なのが気になるが、それ以外はなかなか良いつくり。ペン先は大きくしなやか、りっぱなエボナイト製ペン芯との相性もバッチリでインクフローも潤沢。キャップを後ろに挿した時のぐらつきも少ない!

2006-10-14 02 独逸から購入した時は80ドルくらい。日本で購入すると25,000円ほど。今では14金ペン先モデルは発売中止になって再び18金ペン先モデルになっているかもしれない。独逸のHP経由で何度問い合わせを出しても一度として返事が来ないというふざけたメーカーじゃ。怒り心頭!でも製品は良い!

2006-10-14 03 ブラインドキャップの回転吸入式で中の構造や部品は一流メーカーを凌駕する出来!MontblancもPelikanのAuroraも吸入機構の内部部品はオモチャのようだがSenatorはしっかりしている。壊さないと確認出来ないのが残念じゃが。

2006-10-14 04  実はSenatorのペン先改造ではらすとるむしゃんのが凄い!斜面を相当削ってヘロヘロに柔らかいペン先にしている。

 今回の拙者の改造目的は(前回の#3776と同じく)柔らかくするのではなく、ピントが合うようなペン先にすることじゃ。書き出しの位置が視覚的に認識出来る位置とずれないようにしたい。従ってペン先の丸めを極端に減らし、筆記角度を固定するような調整を施した。それと同時に斜面を削り、視差を少なくなるようにした。

 今回は#3776の調整時と同じく、斜面削りにルーターを使用した。高速回転するルーターでペン先の外側を削ると面白い現象が起きる。ペン先のスリットが詰まってくるのじゃ。上の調整前後のペン先画像のとおり!高速回転するルーターを押し付けると、細かい振動でトンカチで鍛えるような感じでペン先が内側に押されるのかもしれない。

 一時的な現象で、調整戻りによって元の状態になるかとも思ったが、一週間経過しても状態は変わらなかった。ペン先のエラを開いたり閉じたりしてスリットを調整する以外に、新たなスリット閉じの手法を発見したようじゃ。

 現在、この万年筆にはパーカーの極めて古い【Permanent Royal Blue】のインクを入れて使っている。非常に薬っぽい匂いがたまらなく好きなのだが、既に酸化しまくっており、ブルーブラックの色合い。MontblancやPelikanのようなデリケートな素材の吸入式万年筆には入れられないが、このSenator軸なら大丈夫そうじゃ。

 いかにも生産効率を考えて、おおざっぱに作ってあるように見えるが生産本数は一流メーカーよりもはるかに少ないはず。売値が安い割にはコストが高いと思われる。拙者が(コレクション目的ではなくて)未使用品を何本かストックしているのはこいつと、セーラーの初代キングプロフィットのみ。生涯実用品として使い続けることじゃろう。

 ペン先の仕上げには凝ってみた。ぬるぬるではなくザラザラの調整。紙との筆記音を残しながら強烈な匂いのインクを紙に塗る感覚の書き味。各エッジ毎に違うペーパーで仕上げてある。拙者の書き癖にあわせてあるので、他人は拙者の10%も楽しめないという調整!最近これに凝っておる。



これまでの調整記事

2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】     


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(14) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
みーにゃしゃん

表面だけ立派で中身の無いような社長みたいな万年筆じゃが、なかなかどうして書き味も立派!ただ手作業の部分が少ないのか、仕上げがな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月16日 21:17
らすとるむしゃん

オマスのハイテクについては拙者もその理由を考え抜いたのじゃが、おぬしと同じ結論しか出せなかった・・・分解してみたのじゃがなぁ
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月16日 21:13
以前、師匠とらすとらむさんに見せて頂いた、セネターのプレジデント。
初耳ながら良く覚えています。
堂々たる雰囲気で、持つと社長にでもなったような偉そうな気分♪

そうですか、セネターは危なそうなインクでも大丈夫そうなのですね。
良い事を聞きました。覚えておきます(*^^)v
Posted by みーにゃ at 2006年10月16日 20:25
師匠の考えておられる「仮説」とは・・・そういうことだったんですね!。
スリット入りのエボペン芯のようにお湯に漬けたり水で冷却したりして直接手を下さずとも思い通りに制御出来たら面白いのですが・・・。曲がったペン先を戻すには多少無理が・・・・。私も夢のようなことを一つ考えました。それは、光触媒を利用してペン先スリットやペン芯のスリットを自動的に掃除してしまうことです。こんなことが出来たら面白いと思いました。万年筆もいよいよハイテク技術の時代が到来か??。ところで、オマスのいうハイテクとはトリムとペン先が銀色に成っただけのようですが・・・??。
Posted by らすとるむ at 2006年10月15日 22:58
そうじゃった!

特殊金属はらすとるむしゃんの専門分野でしたな。
ソーセージ効果というのは面白いですな。
これが上手く制御出来れば、曲がったペン先を自由に戻せるのではないかとの仮説じゃった。
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月15日 21:03
こんばんは。

私は仮説というか想像ですが・・・・ペン先もちょうどウインナ−・ソーセージと同じような組成になっていて表面は硬く内部は柔らかくなっていると思います。というのは金属は冷間圧延すると表面が硬化して多少のバネ性がつきます。
ウインナ−・ソーセージを縦に切って熱を加えると伸ばされていた硬い薄皮が弛み弓なりに反ってしまうと思います。それと同じ事が裏削りのペン先にも起こると考えています(ソ−セージ効果)。師匠の場合はルーターで削る事により熱が発生して内部応力を出やすくしたため大袈裟に言うと加工歪みが出た結果スリットがしまった物と想像しましたが??。それともトンカチ効果のためでしょうか?。
Posted by らすとるむ at 2006年10月15日 20:26
めだかしゃん

下を削ればとてつもなく柔らかくなります。
仮説は検証されてからね・・・
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月15日 15:46
良いペンですね、セネターは。私も結構使ってます。
ニブが薄い分、適度なしなりと弾力があり、書きやすい。
ボディも軽く、ほぼ同じサイズの149が32.5g、セネタープレジデントが26.2g。取り回しもしやすい。キャップを閉めるネジが2山であることをのぞいても、私も好きなペンです。

ウラを削って上に反る?すご〜い。上に反るから少し柔らかくなるのでしょうか。
師匠の「ある仮説」って何でしょう。
Posted by めだか at 2006年10月15日 10:51
mochidukiしゃん

ご入用なら、さらに強烈な Permanent Blue Black というのもありますぞ!
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月15日 10:23
らすとるむしゃん
裏削りで上に反るのは知らなかった!
力のバランスが壊れるのかも知れない。
ある仮説が出来た!ためしてみようっと。
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月15日 10:17
マトリックスしゃん

それ(取り逃したの)は、画伯に強奪されたやつですな。18金ペン先の。
Posted by pelikan_1931 at 2006年10月15日 10:15
あのインクは強烈でした。一日経ってもまだ匂うような。
Posted by mochiduki at 2006年10月15日 09:08
師匠。

度々恐縮です。
あのセネターは師匠のキング・プロフィットのヘロヘロ度合いを参考にしました。また、興味深いことは、側面を削ってスリットが閉まることです。
裏側を削ると長刀のように多少上向きに反ってしまうのと同じ理屈かも知れません。今度良く観察してみます。
Posted by らすとるむ at 2006年10月14日 22:53
Senator presidentいいですよねー
 ペントレのたこ吉さんブースで逃したあと、お目にかかるまで結構かかりました。 そのため唯一、二本持ってる万年筆になりました。
Posted by まとりっくす at 2006年10月14日 20:39