2006年10月28日

土曜日の調整報告 【 Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残!】

2006-10-28 01 今回の依頼品は非常に酷い状態になっておった。依頼主によれば【売られている状態があまりにかわいそうなので身請けしてきた】のだとか。この画像だけでは何の問題もなさそう。多少キャップが曲がって装着されているかな?という程度。

2006-10-28 02 こちらは修理前のペン先の画像。首軸先端の仕上げはヘミングウェイ・タイプ。No.146の中では最も好きな首軸の形状じゃ。

 多少ペン芯が見えている。これは拙者の最も忌み嫌う状態!しかも
ペン芯の中心がハート穴の中心と合致していない。この場合、完全分解してペン芯を首軸に押し込むと同時にハート穴の中心にペン芯のスリットがくるような調整が必要となる。

2006-10-28 03 キャップを外してみると・・・・ギャー!・・・かわいそうな事に、尻軸がネジ切れている。渾身の力で捻らないとこうはならない。拙者も部品取り用にこういう状態のNo.149を何本も購入した事がある。全てが60年代のNo.149だったので、60年代No.149特有の問題だと思っていたが、No.146でも発生する事がわかった!

2006-10-28 04 完全分解してみると、さらにおぞましい状況!ピストンは折れ、ピストンガイドも折れ、最も大切な部品である尻軸から伸びる螺旋棒が3捻りくらい捩れ、なおかつ曲がっている。こんなに可愛そうな状態のNo.146は初めてじゃ。力を入れすぎて回しても通常は尻軸螺旋棒がネジ切れる程度で、ピストンやピストンガイドには影響は出ない。今回の依頼品はそれら全てにダメージがある。おそらくは万年筆の吸入機構を知らない力持ちが思いっきり捻ったのか、あまりの書き味の悪さに癇癪をおこしてネジ切ったのかだろう。

2006-10-28 05 ぺン先は非常に美しい形状をしている。イリジウムの研ぎは長刀タイプ。曲面の一部を接紙させることによって細字を演出するタイプ。拙者のように寝かせて書くと横線が太くなってしまう。寝かせて書く人に取っては調整が必須となろう。エボ焼けの状態から考えると、インクと接したままの部分が最もエボ焼けしやすいようじゃ。

2006-10-28 06 裏のエボ焼け状態を見ると、【お見事!】というしかない。これほど立派なエボ焼けは初めて見た!エボ焼けはエボナイト製ペン芯と接触している部分が激しいと思っていたがそうでもない。エラの部分などエボナイトと接していないところの方が焼けている!エボ焼けを誘発するのは、主としてインクかもしれないな。

2006-10-28 07 これが折れた部品と、正しい部品の比較じゃ。ものの見事に折れているのがわかろう。これは貴重な画像!機会があれば折れるプロセスを確認してみたい。生贄求む!

 ピストンガイドの左側部分は、実際折れやすくクレームが続出したのかもしれない。後のモデルではネジの部分が金属製に変わっている。

2006-10-28 08 修理は部品交換!部品箱にあったNo.146の同年代の部品【ピストンガイド&ピストン】と交換した。尻軸は同じものが無かったので、お湯につけて捻れを多少戻して組み上げた。左の画像が修理後じゃ。見事に復活した。しかしインクを入れたまま5年が経過すると、インクが固まってピストンが稼動しなくなり、無理に力を入れると、再度ネジ切れるかもしれない。

2006-10-28 09 ペン先の調整は良く出来ていたので、拙者の調整は極僅かじゃ。ペン芯の位置調整とスリット内部の汚れを取る程度。もちろんエボ焼けは完全に落している。

 無残な状態の1970年代No.146であったが、見事に復活した。感無量じゃな。


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Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆