2006年11月04日

土曜日の調整報告 【 Montblanc No.149 O3B でも・・・ 】

2006-11-04 01 今回の依頼品はMontblanc No.149の70年代後半のモデル。通称開高健モデルのO3B・・・・のはずだが、クリップは80年代の物がついている。70年代の胴体に80年代のキャップを被せたものじゃ。No.149を何本も持ってとっかえひっかえ使っている人にはこういうミスが多い。依頼者はオークションで入手後すぐに持ち込んだので、オークション出品者側が間違えたか、確信犯か・・・・

2006-11-04 02 さらにボディにはO3Bのラベルが貼られているが、どうみてもOBB。O3Bは拙者も何本か持っていたし、何本も調整したが、依頼品とはイリジウムの形状が異なっている。

 これはOBBと知っていながらO3Bのラベルを貼った詐欺と考えられる。ただし、その行為を行ったのが流通のどの段階かはわからない。メーカーで貼り間違えたとは考えられない。明らかにO3Bのラベルは別のものから剥がして、このNo.149に貼ったもの。貼り替え作業を行った際に発生する【皺】がラベルに入っている。メーカー出荷状態のままなら、ラベルの周囲(円周部分)が痛むもの。従ってあらぬ疑いをかけられないためには、ラベルは絶対に位置を動かしてはならないのじゃ。

2006-11-04 03 No.149のなで肩クリップは人気なので、よく流通途中でいかり肩クリップと交換される場合がある。これを見抜くのは購入側が知識を持っておかねばな。No.149の年代の見分け方は文献にも記載されているが、おおむね間違っている。たくさん購入して自分なりの理論を打ち立てた方が良い。

2006-11-04 04 それにしても開高健モデルのエボ焼けは美しい。拙者ならインクなど入れないで飾っておくなぁ。こんなに綺麗なエボ焼けを人工的に発生させるのは非常に難しい。開高健モデルはペン先の厚みが薄いので、裏と同時に表もエボ焼けしやすいようじゃ。ペン先をボディにセットした段階ではイリジウム先端に隙間があったのに、外すと先端は密着している。こういう場合は若干ペン芯が上に反っている。この状態が最高。ペン芯の状態は非常によい。

2006-11-04 05 ニブの裏を見て納得。インクフローが悪いわけじゃ!これほどエボ焼けしていてはな。こういう状態のペン先を装着して字を書くと、単にインクフローが悪いという表現よりも、インクがワンテンポ遅れて出てくるような、居心地の悪い書き味になってしまう。ドバドバのインクフローが好きな依頼者には、たまらなくイヤな症状だろう。

2006-11-04 06 まずは、エボ焼けを全て落した。これは金磨き布でゴシゴシ擦ればものの2分で左の状態になる。こする際に力を入れすぎるとペン先がゆがんでしまうので注意してな・・・・ 本当はこの状態で裏にロジウムを鍍金すれば二度とエボ焼けは起こらない。実用とするならそうすべき。現にロジウム鍍金を依頼する方もいる。ただし、今後市場で流通する可能性のある物は、可能な限りオリジナル性を確保しておくのが望ましい。従って一生この万年筆を使います!という意志が確認出来ない限りは他人用の鍍金はやらない事にしている。

2006-11-04 07 こちらが表面を磨いたあとのペン先じゃ。いつ見ても美しい。コストカットのかけらも無い!良いなぁ!

 実はこの段階で、ペン先のスリットを開いている。画像ではほとんどわからないが、すぐ上の裏画像と比較すればイリジウム付近の詰まり方に差があるのがわかろう。これはペン芯に乗せて胴体に突っ込んだ時のペン先の開きを考慮に入れてスリット幅を調整している。

2006-11-04 08 これが胴体に差し込んだ状態。これイ所スリットを開くと筆圧をかめた場合にインクが逆流して書けなくなる。

 この状態にすれば、インクフローも字幅も未調整のO3B以上になる。ここから依頼者の筆記角度に合わせて、ガシガシと削っていく。その作業を見ると目と耳を覆ってしまう人が多い。傍目にはイリジウムを削り落とそうとしているとしか見えない。グラインダーでチャーチャーとエレガントにやるのとは違い、鬼気迫る迫力がある。ぜひWAGNERでご体験あれ!


これまでの調整記事

2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック  


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
ぽん太郎しゃん、絶妙のタイミングでしたな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月08日 20:02
師匠

おお♪早速の着手、ありがとうございます!
コメントは本編の方にさせていただきますね♪
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月08日 09:10
ぽん太郎しゃん

既に鍍金は終えて、明日のBlogにこれまでで最多の14枚の画像を使って紹介することにしておる。

ちなみに鍍金なので将来剥がすことも可能じゃ。多少書き味が柔らかくなるがな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月07日 18:02
師匠

お願いしていた149ニブのロジウム鍍金ですが、仰せのとおり、今は控えておこうかと思うようになりました。
そいつが今後流通する可能性はきわめて低いものの、ゼロではないものでして…(もし既に着手されていたのならば、そいつは一生私が使います!)。
そのうち、「一生モノ」確定の奴を持参しますので、その節はまた面倒をみてやってくださいまし。
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月07日 13:24
素人が出品するオークションでは、買い手が注意深くないと怪我をするからな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月04日 21:55
あー、そういえば最近入手したデュオ、Bと書いてあるのに、Fぐらいしかないなぁ。
調整して削ったのかと思っていましたが、よく考えてみたら変。

別にその辺りを売り物にしていませんでしたが。
Posted by 二右衛門半 at 2006年11月04日 20:32
ぴよぴよしゃん

これはもともとそうなっていった。
それにしても当時のイリジウムは美しい!
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月04日 12:36
師匠、おはよう御座います。
イリジウムの処だけスリットが微かに詰まっていますね。
スリットを一度広げ、先端部分だけ詰め直したのでしょうか?
この仕上がり形状、早速取り入れてみます。
Posted by ぴよぴよ at 2006年11月04日 08:12