2006年11月08日

水曜日の調整報告 【 Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金 】

2006-11-08 01 今回の依頼人は【ぽん太郎】しゃん!No.149は実用として使いまくっておる。小説家の次にNo.149が似合う職業じゃな。好きな書き味は・・・インク ドバドバ!少しでもインクフローを良くしようと西に東に走り回っておる。

 そのポン太郎しゃんが、エボ焼けを取り除いてロジウム鍍金することによって、永遠にドバドバの書き味を! という罠に嵌って予想通り持ち込んでいただけた。気が変わらぬ内に早く終わらせよう!てなもんですぐにとりかかった。

2006-11-08 02 まずは、内部機構を取り出しての確認じゃ。No.149の場合にはいかなる調整においても全てをばらして細部にわたるまで清掃&調整を施しておる。そうしないと気難しいNo.149を手なずけるのは難しい。隅々まで綺麗にしてあげる気持ちが一番大切じゃ。

2006-11-08 03 ペン芯には積年のインクが染み込んでいて?なかなか元には戻らない。これには特別療法が必要じゃ。時間をかけてじっくりと洗浄する必要がある。

2006-11-08 04 ペン先は適度に汚れているが、エボ焼けが酷いというほどではない。過去に何度か清掃が行われていたのかもしれない。ただし、
首軸との境のインクだまりが出来やすいところが焼けている。やはりエボ焼けを誘発するのはインクかもしれない。

2006-11-08 05 ピストンガイドは絶妙! 一番インク吸入量が多くなる位置に調整されている。
 この時代のものはメーカーに修理に出すとピストンや胴体を変えられてしまう事もあるので注意じゃ。事前に教えてくれるのでその段階で拒否した方が良い。ピストン最先端のインク汚れは水洗いしても落ちなかったので、クリーナーを使った。


2006-11-08 06 左はペン芯の清掃。ロットリング洗浄液の入った小さなボトルに入れて、1日に何回か激しく攪拌するのじゃ。これで2〜3日で大抵のインクの染みは抜ける。液が薄っすらと色付いていれば洗浄が進んでいる証拠じゃ。気長に2〜3日待つ!


2006-11-08 07 こちらは表面を磨いたペン先じゃ。まずは金磨き布で軽く擦る。プラチナ鍍金部分を擦ると金一色ニブになってしまうので、全体は優しく、金一色部分は丁寧に擦る。それによって、表から見て完璧なニブになる。

2006-11-08 08 こちらは清掃がすんだピストン。同じくロットリング洗浄液を塗った細い竹ベラでピストンの内部を擦ってインクの汚れを落すのじゃ。ついでに完全分解して、内部にグリースでも塗っておくとピストンの動きはさらに軽くなる。

2006-11-08 09 こちらが鍍金前のペン先の裏を磨いてエボ焼けを落したところ。この状態が永遠に続けば良いのじゃが、エボペン芯に乗せて、黒っぽいインクを使っていると数年でエボ焼けが進んでしまう。それを防ぐにはロジウム鍍金が一番。OmasやParkerでは裏にロジウム鍍金したものが多い。Parkerはエボナイト製ペン芯ではないので、ロジウム鍍金はインクフロー改善としか考えられないがな。

2006-11-08 10 これが裏にロジウム鍍金したもの。正確にはニッケルを鍍金した上に、ロジウムを鍍金している。こうすることによって、インクフロー改善効果が強化される。ニッケルとロジウムは相性が良いらしいのでな。

2006-11-08 11 しかし、単に鍍金液を垂らしただけなら、鍍金液が表にも回って、変な模様になってしまう。従って表には鍍金マスク液を塗っておくのじゃ。これは今回初めて使用したが非常に面白い。スパイ大作戦の変装の名人が石膏にゴムを塗ってそれを顔型にしていたが、それと似たような遊びが出来る。もっとも顔でやるのは危険じゃが・・・

2006-11-08 12 左の巣が脱皮した皮じゃ。剥がした切れ端にペン先の模様が残っている。これは面白そう!これならペン先のバイカラーの鍍金も出来そう!ということで近日中にそちらも披露しよう。


2006-11-08 13 裏まで鍍金が終了したペン先は厳かに元のNo.149に装着される。鍍金のついでにインクフローの改善をしておいたので、ぽん太郎しゃんはロジウム鍍金以外の効果も享受出来るじゃろう。


2006-11-08 14 最後に、ペン芯の位置じゃが、いままでより若干後退させておいた。この位置が最も美しい。しかし、ペン先を不用意にぶつけるとペン先がずれてしまう。そうすればチョイチョイと左右に押せば直る。ま、トレーニングはいるがな。


これまでの調整記事

2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック  



Posted by pelikan_1931 at 05:13│Comments(18) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
ぽん太郎しゃん

ほほう、Montblancのレーシンググリーンのインクフローが良いか!
さっそく買い足さねば!
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月19日 19:02
師匠

経過報告です。
インクフロー持続性の更なる向上を目指して(要求がどんどん贅沢になっていきますね…)、インクをモンブランのレーシンググリーンに入れ替えてみました。
結果は、ウォーターマンのブルーブラックよりも更にいい感じです。
「呼吸困難現象」をほとんど感じなくなり、書くことにより集中できるようになりました。

変化があったら、また報告いたします。
Posted by ぽん太郎 at 2007年04月19日 09:38
ぽん太郎しゃん

プラチナカーボン以外でも、なかなかのインクフローが得られたようじゃな。まずは一安心じゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年12月05日 20:01
師匠

 先日受け取ったこの万年筆、早速使ってみたので報告いたします。
 呑ませたインクはウォーターマンのブルーブラックです。

 以前からの不満だった「書き出しのフローは潤沢なのに段々普通に(=私にとっては足りない)なってくる」「しばらく休めるとフローはちょっと回復するが、また足りなくなってくる」という状態が改善されました。
 現在は、満足いくレベルのフローが、ずっと一定して継続してくれます。
 まだ使い始めたばかりなので、インクがペンに馴染んでくれば、もっと良くなりそうな予感があります。

 改めまして、ありがとうございます。
 尻軸のピストンも、すごく滑らかに回転するようになりました。
Posted by ぽん太郎 at 2006年12月05日 19:47
超臭いVintage Parkerも良いですぞ!

いずれにせよ、50年代物のボディには入れないほうが良いでしょう。悲惨なのを見ていますのでな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月09日 20:08
師匠

モンブランのパーマネントブルーです。
50年くらい前のインクで、Kings Blueさんから分けて頂いた貴重なものです。
鮮やかな発色が大変気に入っているのですが、ペン芯に皮膜……うむむ。

ペン芯チョイチョイ…ご指導よろしくお願いいたしまっす。
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月09日 19:13
ぽん太郎しゃん

心配ご無用。簡単な作業じゃ!
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月09日 18:35
ぽん太郎しゃん

Permanent Blueでしたか! Parkerですかな?

拙者はParker Permanent Royal Blueを愛用していますが、特にペン芯に被膜はないようなのじゃが・・・
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月09日 18:30
師匠

同じ149の調整でも、使用者の個性に合わせてニブやペン芯の出し方や位置関係を変えて下さっているようですね。
スリットなしに比してデリケートそうな(?)スリット入りペン芯を指先でチョイチョイ…私、マスターするまでに破壊しないでいられるかしらん?
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月09日 14:05
この149は、より良いフローを求めて数種類のインク遍歴を経ております。
プラチナカーボン(フロー最高)を入れていた時期もありましたが、手持ちの数少ない万年筆のほとんどがカーボンばかりで芸がないので、それ以外のインクでフローが良く、かつ安全なものを探してます。

このピストン先端やペン芯に染みついていた頑固なインクは、50年くらい前の某パーマネントブルーインクだと思います。
これは、すごく発色が良くてフローも(カーボンに次ぐくらい)良好なインクなのですが、パーマネントの実力を発揮しまくりなのがちょっぴりオソロシイところであります。
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月09日 09:37
 おぉ、黒インクだったのですか。では納得です。黒は色として元々フローが悪いものが多いですし。青かと思っていました。
Posted by monolith6 at 2006年11月09日 02:51
ぽん太郎しゃん

実は、ペン芯は上下に口が開いていたのだが、最後の画像のようにぴったりと口はふさがった。ペンクリでは出来る限界があるが、持ち帰ればゆっくりと完璧な状態にもっていけるのじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月08日 20:06
そうか、拙者からお嫁に行ったニブか・・・どうりでエボ焼け除去処理が一度はされていたわけじゃ。合点!
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月08日 20:04
monolith6しゃん

カーボンインク以外の黒インクは長期間使用すると、ペン芯に被膜のようなものを作る。これもインクフロー悪化の原因なのじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月08日 20:01
鍍金前の“洗浄”ですか。すごいきれいになりますね。恐るべし洗浄液。それにしても2〜3日洗浄液につけ込んで振る、まさに戦場ですね。
鍍金マスク液も、今回初登場ですね。こんなのがあるなんて知らなかった。すごい。
Posted by めだか at 2006年11月08日 13:47
続きです。

この149は、購入当初(7年前)は樹脂製ピストンガイド&14K(クーゲルではない)−Bニブ付きでしたが、私の好みに合わせてパーツ交換してもらったものです。ニブは師匠におねだりしました。
パーツの時代的統一感はめちゃくちゃかも知れませんが、その辺の知識は皆無なので気が楽です。

ピストンガイドについては、金属製の方が「重心部分(私の場合、ちょうど手の中にくる)に重さが集中している」状態になり、私にとっては取り回しがしやすくなるようです。
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月08日 11:55
師匠
毎度ありがとうございます!
絶妙のタイミングで登場させて頂きました。
この絶品ニブに興味を示された方がいて、「この方にならば譲ってもいいかも」などと(ほんのちょびっとだけ)思い始めた矢先でした。
ですが、鍍金処理して頂いたお陰様で、こいつはもう私のところで一生使い倒される運命が確定いたしました。わお。
鍍金を剥がすことなど毛頭考えておりません。
こいつに再会するのが楽しみです。インクは何を呑ませようかな。
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月08日 09:30
 あぁ〜勿体ない.. ペン芯はもしかして、ぽん太郎さんが普段お使いのインクにより、フローが熟成されたペン芯になっていたかも...?
Posted by monolith6 at 2006年11月08日 08:36