2006年11月15日

水曜日の調整報告 【 Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金 】

2006-11-15 01 今回の依頼はペン先を銀色に鍍金する事。ご存知のようにPelikan M800系のニブはいくつかの例外を除いて、限定品であっても定番品と同じペン先を使っている。拙者はこの点で非常にPelikanを評価しているのだが、限定品コレクターはそれが許せないという。現にPelikanの限定品が米国ではあまり人気が無いのはペン先が定番品と同じであることが原因だったらしい。最近ではM1000ベースの限定品では軌道修正しているようじゃな。

2006-11-15 02 鍍金対象のペン先を見てビックリ。マニアが喜ぶ刻印が二つ。【B】の刻印の向かって下には【pf】マーク。そして上には【通称:イタリア刻印】。書き味的には【イタリア刻印】は何の意味も持たないが、【pf】マーク付きは、その後のマーク無しのモデルよりも【ペン先先端の背開き現象】の比率が圧倒的に少ない。また平坦なペンなので、その後のものよりも弾力が柔らかい。たしかメーカーも違う。現状のペン先はPelikan社内製作になったとの情報もある。それが正しいとすれば、自社生産に変えてから品質が落ちたことになる。もっとも【3B】に限っての話で、【M】では現行品の方が評価は高いようじゃ。

2006-11-15 03 おそらくは銀色系統の限定品かM910かM805系統用のペン先として使おうという魂胆じゃろう。鍍金前の裏側を見ると、既にロジウム鍍金が一部かかっている。これはインクフローを良くする為の、誰でも知ってる秘策じゃ。

 今回は裏についての鍍金は不要とも考えたが、依頼者がドバドバのインクフローが好みなので、再ロジウム鍍金を施すこととした。

 拙者は鍍金を15年以上行っているが、以前と比べるとロジウム鍍金液の仕上りの色が変わった。昔はペン先に直接ロジウム鍍金しても多少は光ってくれた。プラチナ系の光沢を持っていた。ところが、現在のロジウム鍍金液は光沢が無く、黒っぽい仕上りになる。従ってベースにニッケルを鍍金した上に、ロジウムを鍍金するようにしている。

2006-11-15 04 裏の鍍金はニッケル+ロジウムで良しとして、表はどうするのか?いくらニッケルの上にロジウムを鍍金したとは言っても、やはりプラチナ系の光沢は望めない。そこでロジウムの上に、更に銀を鍍金するのじゃ。銀鍍金というのはものすごく美しい。プラチナ系のピカピカではなく、銀独特のしっとりとした光沢を提供してくれる。

2006-11-15 05 これは拙者だけが力説しているのだが、ペン先に銀を鍍金すると書き味が変わる。ヌラヌラではなく、ヌメヌメという感じになるような気がする。まだ20本程度にしか銀鍍金は施していないので、確信しているわけではないのだが・・・

 機会があったら書き比べて欲しい。

 ペン先に鍍金する場合は、鍍金終了後に調整すると鍍金を傷付ける可能性が高いので、完全に調整が終了してから鍍金を施し、ソケットへの挿入も一発で決めなければならない。実はこれが最も難しい作業になるのじゃ。


これまでの調整記事

2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック 


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(10) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
フェンテの集いで2本は展示してたのですがな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月16日 17:17
monolith6しゃん

Pelikanのニブでそういうマークはなかったっような気がするなぁ。
WAGNERでイタリア刻印と言っていたのは、実は仏蘭西刻印だたのかも?
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月16日 17:16
師匠

なるほど。 
いわれてみれば、インクはペン芯の溝の中を流れるんでしたね。

ヌラヌラとヌメヌメ、どう違うのか、実際に手で感じてみたい!
Posted by ぽん太郎 at 2006年11月16日 09:11
 イタリアの極印は、長方形の中に☆マークと、そのメーカー固有に割り振られた番号が一緒に打ち込まれているタイプだと思います。
Posted by monolith6 at 2006年11月15日 23:31
ぽん太郎しゃん

インクはペ会厭の表面を流れはしないのでフローには影響は無い。ただし、スリットに鍍金液が入っているので、書き味なヌメヌメする。これが面白いんですな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月15日 22:16
monolith6しゃん

フランス刻印でしたか! そういわれれば猛禽類にも見えますな。



ゑでぃしゃん! イタリア刻印てどんなの?
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月15日 22:12
centenaire26しゃん

本物は写真より綺麗ですぞ!
Posted by pelikan_1931 at 2006年11月15日 22:11
ペン先鍍金の話題になると出てきてしまいます。

銀は空気に触れると硫化してくすんできますよね。
そうなってきても、フローに悪影響はないのでしょうか?

また、ペリカン800はプラスティックペン芯ですから関係ありませんが、
仮にエボナイトペン芯に銀鍍金したペン先を搭載したとすると、エボナイトに含まれる硫黄により硫化が促進されたりしないのでしょうか。

理科のことは全然分かりませんが、興味があります。
教えて!

Posted by ぽん太郎 at 2006年11月15日 17:46
 もう一つの刻印は、右を向いた猛禽類の頭の部分であるように見えます。かりにそうであれば、その刻印はフランス政府による、18Kの金製品に対して打刻される極印です。
Posted by monolith6 at 2006年11月15日 07:37
pelikan_1931 しゃん

美しい出来ですね。いよいよガウディの出番です♪

謝々
Posted by centenaire26 at 2006年11月15日 07:35