金ペンに関する序章【第九章】
現在、実家に帰省している。今回は飛行機を使わず新幹線にした。おかげで読書時間がたっぷりと確保できたので、【萬年筆と科學】を少し先まで読んでみた。この先、第十章以降はペン先の説明として非常に面白い。拙者も知らなかったり、間違えて理解している部分も多かった。今後の調整方法を変えねばならない内容も含まれていて貴重!ただし、図を流用するわけにはいかないので、理解いただけるかどうかは疑問じゃな。将来、図を引用する許可が正式に取れたら図を挿入する予定。
第九章は、これからの怒涛の進行の前触れ、地ならし・・・いや、一休みという章じゃな。はっきり言って内容は無い。渡部氏の随筆に近い。ただ、当時万年筆の販売に携わっていた人にとっては、【そうそう、そういう奴いるわな!】と膝をたたくような話もあって、息抜きとしては面白い。
第一章から掲載し始めて、この第九章まで1年半の歳月が流れているとの記載がある。1年半は18ヶ月。ということは一章につき2ヶ月ということになる。つまりは、パイロットタイムズは2ヶ月に一回発行されていたか、毎月発行されていたが渡部氏の投稿は2ヶ月に一回掲載されたかのどちらかじゃ。
マニフォールドのニブは鉄筆のかわりにも使えるほどガチガチに硬いニブのことじゃ。つまりはニブの種類を指す。それについての笑い話。
ある外人が店を訪問した際の、英語の得意な主人との会話
I want a manifold pen.
Manifold? Very sorry, Sir, We haven't it.
We have many of Pilot,Waterman's and Parker pens, but no Manifold.
英語表現として外人さんが【want】を使うのは現在ではありえないかも? 【want】はもっと強い生理的欲求を表すと聞いた。
そういえば、亡くなったダイエー創業者の中内さんが講演でジョークを言ったのを聞いたことがある。
【私は外国の航空会社のVIP顧客だった。ある時機内で寝るに際し、スチュワーデスから”What would you like?” と聞かれたので、正直に”I want you.”と答えたら出入り禁止になったわぃ】。これが【掴み】で、それから一挙にスケールの大きな国際物流戦略の話になっていった。その【掴み】のインパクトのせいで、拙者は今でも講演内容を全て覚えておる。それ以降、拙者も講演をするに際しては、一番時間をかけて【掴み】を考えることにしている。【掴み】しだいで、寝るか、聞くかが決まってしまうからな。
渡部氏が紹介した会話は、平塚の講習会に出席しペン先の講義を受けた際に、万年筆店の主人が失敗談として話された事だそうじゃ。本当かな?第十章からの話に繋げるにはあまりに都合が良い内容なので、作り話かもしれない。
ともあれ、恥の文化を重んじていた当時の日本にとって、万年筆店の主人がペン先の種類とメーカー名を間違えるようなことをしては国家の恥じゃ!との認識を与えるには効果十分だったろう。拙者もそう思ったからな・・・
日本人顧客のペン先に関する要望の例として・・・
★これはちょっと硬すぎる
★これではちょっと弱すぎる
★なんだかペンの走りがキザだ
★柔らかくて、しかりしていて、軽くといって滑りすぎないで、細いようで太い字も書けるもの
が紹介されている。
また早稲田大学の法科の学生が37回も金ペンの取替えに来た例もあるとか。最後には渡部氏が17時から20時すぎまで飯も食わずに対応したらしい。皮肉で【あなたのように敏感な学生様はまず珍しいですが、その様子だと奥様を選定される時がおもいやられますね】と言ったら【いや、実は妻はもう持っています】と澄ました返事に二の句がつけなかったことが書いてある。ここで各地の万年筆店の主人に共感してもらうのが狙い?
この第九章は、これ以降の章の序章であり、その為の【掴み】が二つ紹介されていると考えればよかろう。
解説【萬年筆と科學】 その8
解説【萬年筆と科學】 その7
解説【萬年筆と科學】 その6
解説【萬年筆と科學】 その5
解説【萬年筆と科學】 その4
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解説【萬年筆と科學】 その2
解説【萬年筆と科學】 その1