万年筆評価の部屋:解説【萬年筆と科學】　その１１

金ペンの種類と特徴を詳説した【第十一章】

第十章で紹介した15種類のペン先について、簡単な特徴がまとめられている。それらを現代表記にして以下にまとめてみた。実際には、それぞれの書き味について、筆者自身の好き嫌いも書き添えられているが、それは省いておく。

①ブックキーパー
　極細で、長い穂先を持ち、弾力は硬く、数字専用である。クリアカットの線が出るが、筆圧を軽くして書かないと紙当たりが悪い。イリジウムは四角形に角張らせて研ぐ。小さな字を書くので穂先を長くして字を見えやすくしているが、それを実現するため、肉厚を厚くしてブレが少ないようにしている。

②ポスティング
　極細で、中くらいの穂先を持ち、弾力は硬く、記帳に適する。紙当たりはブックキーパーよりは良く極細を好む人に適する。先は四角研ぎではなく、丸研ぎなので、紙当たりは良いが、線に表情は無い。

③ファイン
　細字で、中くらいの穂先を持ち、弾力は適度。日本では万人向き。地金の厚みも厚からず薄からず。イリジウムの研ぎは７角形にし、夫々の角を丸めておく。弾力の柔らかいペン先を極細に研ぐと極端に紙当たりが悪くなるので注意すること。日本では需要の90％がファインである。

④ステノグラファー
　細字で、長い穂先を持ち、弾力は極めてしなやか。元々は速記文字を書くためのもの。速記では同じ斜線でも細い線と太い線とでは字義が違うので、それを自在に書き分けるために作ったもの。紙当たりを良くするためにイリジウムを丸めてあるのでクリアカットの字は書けない。毛筆で育った日本人には適している。

⑤ミディアム
　中字で、中くらいの穂先を持ち、弾力も中くらい。欧米では万人向きのペン先として需要が多い。おそらくは需要の９割程度。イリジウムは細長い七角形に研ぐ。

⑥フォルカン
　中字で、中くらいの穂先を持ち、弾力はほにゃほにゃに柔らかい。中字でステノグラフィーを実現しようとするとこうなる。イリジウムの研ぎ方は七角形に研ぐ。細字なら筆記に必要なインク量が少ないので、ほにゃほにゃのペン先でもインクが切れる確率は小さいが、中字以上になると、筆圧を掛けるとペン先とペン芯が離れてインクが切れるため、穂先は長く出来ない。穂先を長くしないで弾力を出すために、金ペンの胴体をハート穴の両側で抉り取って弾力を出したもの。

⑦マニフォールド
　中字で、短い穂先を持ち、弾力は特に硬い。カーボン紙に書くことを前提に開発されたが、意外と書き味が良いので流行している。パーカー・デュオフォールド（当時）のペン先もこれ。中字と同じく七角形に研ぐ。角を良く丸めて力強く運筆しても紙当たりを良くする。

⑧ウェーバリー
　中字で、中くらいの穂先を持ち、弾力も中程度。別名【ボールポイント】とか【ターンナップ】と呼ぶ。イリジウム部分を上に多少曲げて、筆記時にイリジウムの腹の部分を使うようにしたもの。どの角度で書いても紙当たりが良く、マニフォールドよりは弾力がある仕上げ。

⑨コース
　太字で、中くらいの穂先を持ち、弾力は強い。縦横とも同じ太さの字幅となる。イリジウムの研ぎは四角形の一角を筆記角度に合わせて斜めに削り、落した角を丸めすぎない程度に丸める。縦横同じ字幅という原則にのっとると、極太は作れないことになる。現在の【C】とは若干コンセプトが違う。

⑩ハーフスタッブ
　太字で、中くらいの穂先を持ち、弾力は硬い。縦に太く横に細い線が引けるように調整。ペン先は四角形で角を丸めないでそのまま残す研ぎ。渡部氏はこのペン先が大好きのようじゃ。

⑪シグニチャー
　太字で、中くらいの穂先を持ち、弾力は硬い。紙当たりは極めてよい。イリジウムは七角形の研ぎ、夫々の角を完全に丸めて、どの角度から線を引いてもひっかかりが皆無に研いである。英語のサインのように筆記角度が縦横無尽に変わる場合に適する。

⑫スタッブ
　極太字で、中くらいの穂先を持ち、弾力は硬い。縦に太く横に細い線が引けるように調整。ハーフスタッブの縦線を太くしたもの。

⑬オブリーク
　極太字で、短い穂先を持ち、弾力は特に硬い。スタッブのペン先先端を斜めにカットしたもの。ペンを極端に捻って持つ人用。

⑭ミュージック
　極太字で、短い穂先を持ち、弾力は中庸。切割りが２本あり、楽譜専用のペン。スタッブよりも更に縦太横細の字が書ける。

⑮デュオポイント
　太字/中字/細字を書き分けられる。短い穂先を持ち弾力は硬い。通常の筆記角度では中字、ひっくり返して書くと細字、90度立てて書くと太字になる。現行品の研ぎで言えば、セーラーのZoomがこれに相当する。

そしてこれらの中で、ファイン以外にポスティング、ステノグラファー、マニフォールド、ハーフスタッブを小売店に常備しておけば、90％程度の確率で客に満足を与えられると結んでいる。

　ああ、疲れた・・・これから雪国に出張じゃ！日帰りで・・・

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解説【萬年筆と科學】　その１

「ステノグラファー」ですね！？
　kugel_149しゃんがお持ちですか。う～ん。
早速、お願いしてみますですじゃ。

「Italia 90 の極細をさらに、、、。」　こりゃ、殺し文句ですー。

貴重なサゼッション、ありがとうございます！
来年もまた、苦難の道が待っていそうです。（笑）

watarowしゃん

おぬしにはステノグラファーがお奨めですぞ。
kugel_149しゃんがPelikanのをお持ちじゃが、Italia 90の極細をさらに自由自在に操れるような書き味じゃ。

こうして、書かれると、ペン先の太さと堅さがとてもよくわかった気になりますが、個体差と、こちらの書く癖とで、組み合わせは無限大ですね、師匠。
勝手に、食わず嫌いを決め込むと、素晴らしい出会いを自ら放棄することになりそうです。なにごとも、門戸を広く持つべし、というところでしょうか。

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万年筆評価の部屋

2006年12月08日

解説【萬年筆と科學】 その１１

解説【萬年筆と科學】　その１１