万年筆評価の部屋
拙者は万年筆の収集を始めて36年以上。そろそろボケが始まったので今のうちに【萬年筆調整と改造の記録】を残しとく。
2006年12月16日
土曜日の調整報告 【 Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 】
この万年筆は拙者のじゃ。今から15年以上前、ちょうどアメ横で古い万年筆を捜し始めたころに見つけた。店の名前も場所も忘れたが、ショーケースの下に箱があったので、見せてもらったらこのインペリアル 777が黒、赤、青で合計100本以
上がMintで入っていた。そのなかから軸に傷が付いていないのを選んで3色購入した。黒軸と赤軸はお嫁に行ったが、この青軸だけは記念に保存しておいた。
まったくのMint状態で購入したので、そのままにしておいたのだが、先日インクを吸入しようとしたらほとんどインクが入らない!インクを一度も通していないのに、何故?サックも傷むわけ無いし・・・
ま、とりあえず吸入機構を外してゴムサックのみでペコペコと吸入動作を繰り返すと、何の問題も無く水は吸入される。どんなに古くとも、インク吸入さえしていなければゴムサックが劣化することは、まず無い。ゴムサックが劣化するのは、インクが残ったまま何年も放置すること。こうすると
インクサックは化石化して金属かと間違うほど硬く、脆くなる。しかもサックを覆っている金属筒の内部に接着してしまう。こうなると大騒ぎで、熱湯に入れてふやけさせたあとで、ゴリゴリと削り落とす必要がある。これについては、【続きを読む】をクリックして、過去のSheafferの調整記事を参考にされたし。
ゴムサックが劣化していなければ、原因はOリングの劣化しかない。いったん吸入機構を外して、取り出したOリングが左図の白いほうで、取り替えたOリングと同じものが黒い方。径は同じはずだが、白の方は経年変化で若干弾力がなくなっている。ゴムサックと違って、Oリングは常に金属の筒に圧着している状態なので、接触面はツルツルに硬化、ピストンを上下する際に、空気が【滑り抜け】やすい。すなわち、Oリングは使わなくても劣化するのじゃ。タッチダウン式、スノーケル式の修理にはゴムサック、サックセメントに加えて、Oリングの替えを持っておかねばならない。
やや硬い書き味だったので、多少ペン先の斜面を削った。上から2番目のペン先拡大画像と比べれば、外側に膨らんだような曲線のニブ形状が、かなりスマートになっているのがわかるじゃろ?この調整によって、弾力は激変する。
通常のフラットなニブの場合、多少ペン先外側を削ってもそれほど大きな変化はおきないものだが、Sheafferの上に反っているニブの場合は差が顕著になる。
インクをつけて書いてみると・・・まさにフェザータッチ!この書き味を体験して初めて上に反ったニブの効用を感じることが出来るのじゃ!
これまでの調整記事
2006-12-13 Montblanc デュマ
2006-12-09 Pelikan 1935 Malachit Green F
2006-12-06 Pelikan 1931 Toledo B
2006-12-02 Montblanc No.252 OBBB
2006-11-29 Montblanc No.149 ピストンガイド交換
2006-11-25 Montblanc No.149 ニブ塗分け
2006-11-22 Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金
2006-11-18 Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金
2006-11-15 Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金
2006-11-11 カランダッシュ ボールペンの銀鍍金
2006-11-08 Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金
2006-11-04 Montblanc No.149 O3B でも・・・
2006-11-01 Parker Duofold International XXB
2006-10-28 Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残!
2006-10-25 Montblanc 1980年代前半 No.146 B
2006-10-21 Montblanc No.149 B 至高のペン先
2006-10-18 Sheaffer Snorkel 青/ 赤
2006-10-14 Senator President B
2006-10-11 プラチナ #3776 セルロイド 極太
2006-10-07 Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04 OMAS パラゴン BB
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB
2006-09-27 Montblanc Np.146 丸善120周年記念
2006-09-23 Montblanc No.149 BBB
2006-09-20 Pelikan 140 赤
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤
2006-09-14 Soennecken Pony
2006-09-13 Montblanc No.742-N
2006-09-09 Montblanc No.252
2006-09-07 Montblanc No.22 緑
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化
2006-08-30 Montblanc No.149 開高健モデル
2006-08-26 Montblanc No.644 グレイ縞
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway
2006-08-10 Montblanc No.256 KOB
2006-08-05 Conway Stewart Floral
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(6)
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この記事へのコメント
お師匠さま
我が家のタッチダウン式の豚ペンをちょっと直してあげたくなりました。
インクサックなどの交換は出来ているのですが、胴軸内のOリングが欠損しててありませぬ。
ちょうど良いサイズというのはどれくらいなのでしょうか???
ご教授ください。m(_ _)m
Posted by あっちゃん at 2019年07月23日 23:14
らすとるむしゃん
ありがとしゃん! それにしてもすごいバリエーションですな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年12月20日 05:01
ご助言、ご教示ありがとうございます。
まずは軸の刻印については、400Nまでは刻されていたであろうこと、よくわかりました。
それにしても、尻軸のニブ表記などを含め、予想しなかったバリエーション(といってよいのか、少なくとも違い)に驚いております。一体、どういった事情があったんでしょうか。誰がどのような理由で決定したのでしょう。
ところで、お時間があればで構いませんので、併せてニブのデザイン、硬さ/柔らかさといった具合もお教えいただけないでしょうか。具合については、サイズや仕様などによって随分異なるでしょうから、お答えいただくのは難しいことと存じますが、ご感想で構いませんので、ご教示いただければと思います。どうぞ宜しくお願いします。
Posted by hibagon at 2006年12月20日 01:05
おはようございます。hibagon さん。
昨晩の件ですが。
私自身沢山のバリエーションがあり訳の判らない部分も多々有りました。
これがオリジナルの状態かどうか分かりませんが、以下のように分類しました。
400の軸刻印
PELIKAN ・ GUNTHER WAGNER -キャップリングは無刻印尻軸ニブ表記有
PELIKAN ・ GUNTHER WAGNER GERMANYキャップリングは無刻印尻軸ニブ表記有
PELIKAN 400 GUNTHER WAGNER GERMANY リングにPELIKAN4003箇所ニブ表無
PELIKAN 400 GUNTHER WAGNER GERMANY PELIKAN4002箇所1箇所は+ニブ表無
PELIKAN 400 GUNTHER WAGNER GERMANY PELIKAN4002箇所1箇所は+ニブ表有
400Nの軸刻印
PELIKAN 400 GUNTHER WAGNER GERMANY リングにPELIKAN4003箇所ニブ表無
400NNの軸刻印
軸の刻印無し リングに+PELIKAN400 GERMANY 尻軸ニブ表記無し
Posted by らすとるむ at 2006年12月18日 09:00
hibagon しゃん
この質問には、らすとるむしゃんに答えてもらったほうが良さそうですな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年12月17日 22:07
はじめまして。
いつも興味深く拝見し、いつか師匠に調整していただきたいと願っている者です。
記事には関係ないのですが、質問させて下さい。
ペリカンの400シリーズの古いものには、軸の尻の方に「PELIKAN 400 GUNTHER WAGNER GERMANY」と刻印されておりますが、この刻印は一体どのあたりまで続くのでしょうか。なかなか色々と実物を手に取る機会がない故、ずっと気になっています。
また、400にはニブのデザインが少なくとも2種類あると思いますが、後期の円の中にロゴが入っているものと、400NN(オリジナル)のものとでは(見た目は同じように見えるのですが)、柔らかさ等も同じなのでしょうか。
不躾に質問をし、誠に恐縮しておりますが、ご教示くださいますようお願い申し上げます。
Posted by hibagon at 2006年12月17日 03:43
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