もっともこのNo.254はハイブリッドモデル。尻軸にはKOBとの刻印があるが、実際にはOBかOBBのペン先が付いている。ここではOBとしておこう。
依頼者によると不具合はインクフローの悪さと、引っ掛り。当時のOBはスタブと同様で、イリジウムの厚みが薄い。従ってアルファベットを筆記体で書くのには非常に適しているが、手首を多少左右に回転しながら筆記する日本人や、高筆圧の人には扱いづらい。従って調整を施した方が具合が良い。
ただし日本人ほど位置関係にはうるさくないようで、ソケットの切れ込みとハート穴が若干ずれている・・・これは直しておいた。
インクフローが悪い原因の一つに、イリジウムの詰まりすぎがある。これは毎回指摘しているが、毛細管現象に頼りすぎるあまり、インクフローを犠牲にしているように思えてならない。下がスリットを拡大したあとの図。簡単に拡げているように思うじゃろうが、イカペンのスリットの詰まり具合は手ごわい。1950年代でも1960年代でも、手から血が出そうなほど力を入れないと思うような変形が出来ない。素人にいじらせない事を前提に作られているのだから仕方あるまいが・・・
こちらが首軸に取り付けたところ。拙者の好みの位置よりも多少前に出ているが、首軸先端にヘアラインクラックがはいっているので、これ以上押し込むのはやめておいた。それにしても背中側が一直線というのは美しい。男性社交ダンサーの背中のよう・・・ こんなに真直ぐなのに何故弾力が出るのか?それは最後に・・・
ひょっとしたらキャップにMontblancの文字が彫られた1954-1956年モデルの胴体と、1957年以降モデルのキャップとペン先&ペン芯をアセンブルした物かもしれない。
ペン先の拡大画像。これでみるとNo.25Xシリーズの書き味の秘密がわかる。ペンの背中は真直ぐなのに、内側はイリジウム先端に向かって急激に厚みを増している。これはペン先本体の堅牢さを角型に曲げることで出して、金ペンを薄くし、金の使用量を減らす。ただしイリジウムはしっかりと固定するために、イリジウム付近の金は厚めに成形する。結果として、ペン芯先端からイリジウムまでがピコピコと柔らかく動くという独特の弾力を演出出来たわけじゃ。
ぜひここを理解したうえでNo.25xを楽しんで下され。書き味は久々の大成功じゃ!