2007年01月03日

水曜日の調整報告 【 Montblanc No.254 OB 】

2007-01-03 01 今回の依頼品はMontblanc No.254のOBニブ付き。以前にNo.254のOBBの調整報告をしたが、OBBとOBとでは、それほどペンポイントの差は無いようじゃ。

 もっともこのNo.254はハイブリッドモデル。尻軸にはKOBとの刻印があるが、実際にはOBOBBのペン先が付いている。ここではOBとしておこう。

 依頼者によると不具合はインクフローの悪さと、引っ掛り。当時のOBはスタブと同様で、イリジウムの厚みが薄い。従ってアルファベットを筆記体で書くのには非常に適しているが、手首を多少左右に回転しながら筆記する日本人や、高筆圧の人には扱いづらい。従って調整を施した方が具合が良い。

2007-01-03 02 この画像でははっきりと確認出来ないが、ハート穴の直前くらいから先が上に反ったようになっていて、ペン芯とペン先の間に隙間がある。これだと筆圧を多少掛けるとインクが切れてしまう。以前の利用者も、相当に筆圧が高かったと思われる。高筆圧者 → 高筆圧者【現在筆圧低下中】へのお嫁入りじゃな。

2007-01-03 03 ペン先のユニットは何度か外した形跡がある。ネジ部分のシーリング剤が綺麗さっぱりと洗い流されている。かなりの熟練者で、No.254用のソケットを外す道具を持っている人の手によるアセンブルのようじゃ。(ちなみに拙者も持っている)

 ただし日本人ほど位置関係にはうるさくないようで、ソケットの切れ込みとハート穴が若干ずれている・・・これは直しておいた。

2007-01-03 04 インクフローが悪い原因の一つに、イリジウムの詰まりすぎがある。これは毎回指摘しているが、毛細管現象に頼りすぎるあまり、インクフローを犠牲にしているように思えてならない。下がスリットを拡大したあとの図。簡単に拡げているように思うじゃろうが、イカペンのスリットの詰まり具合は手ごわい。1950年代でも1960年代でも、手から血が出そうなほど力を入れないと思うような変形が出来ない。素人にいじらせない事を前提に作られているのだから仕方あるまいが・・・

2007-01-03 05 こちらが首軸に取り付けたところ。拙者の好みの位置よりも多少前に出ているが、首軸先端にヘアラインクラックがはいっているので、これ以上押し込むのはやめておいた。

 それにしても背中側が一直線というのは美しい。男性社交ダンサーの背中のよう・・・ こんなに真直ぐなのに何故弾力が出るのか?それは最後に・・・

2007-01-03 06 左の図が調整済の横画像。クリアーなインク窓に厚いペン芯というのは、1957年から59年まで作られた後期モデルのごく初期だけ作られたものじゃ。すぐにブルーのインク窓に変わったはず。ただし、この個体ではペン先ユニットを交換しているので、時代は混じっているかもしれない。また、一番上の画像にあるように、キャップを胴体に挿すと、曲がって見える。キャップと胴体の時代が違う可能性もある。

 ひょっとしたらキャップにMontblancの文字が彫られた1954-1956年モデルの胴体と、1957年以降モデルのキャップとペン先&ペン芯をアセンブルした物かもしれない。

2007-01-03 07 ペン先の拡大画像。これでみるとNo.25Xシリーズの書き味の秘密がわかる。ペンの背中は真直ぐなのに、内側はイリジウム先端に向かって急激に厚みを増している。

 これはペン先本体の堅牢さを角型に曲げることで出して、金ペンを薄くし、金の使用量を減らす。ただしイリジウムはしっかりと固定するために、イリジウム付近の金は厚めに成形する。結果として、ペン芯先端からイリジウムまでがピコピコと柔らかく動くという独特の弾力を演出出来たわけじゃ。

 ぜひここを理解したうえでNo.25xを楽しんで下され。書き味は久々の大成功じゃ!  

これまでの調整記事

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万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】


Posted by pelikan_1931 at 16:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆