2007年01月15日

月曜日の調整報告 【 プラチナ 蒔絵 】

2007-01-15 01 今回の依頼品はプラチナの蒔絵軸。レバーフィラーのゴムサックが劣化してインクを吸わなくなったようじゃ。日常使用するので、ガシガシ使えるようにとの依頼。

 蒔絵には【露水】という銘が彫ってある。拙者は蒔絵関係には興味も知識も無いので正確な評価は出来んが、長年の使用で良い塩梅に漆が歳を取ってるなという感じ。


2007-01-15 02 この画像でわかるとおり、レバーフィラーの延長上にペン先のスリットが来ていない。これは気持ちが悪いので位置調整が必要!

 こういうVintageの蒔絵軸を普段使いにするのは実にオシャレじゃな。拙者も連れ合いには、NAMIKIのハミングバードで毎日字を書くような女性になって欲しいものじゃ。

2007-01-15 03 ペン先の刻印はプラチナではない。ペン先が劣化したので後で金ペンを取り付けたのであろう。しかし、このニブの書き味が良い!決して柔らかいわけではないのだが、かなり細い筆跡をコリコリと音を立てながら残してくれる。この万年筆の軸に描かれた風景とマッチした筆記感じゃ。滑らず、引っ掛らずという微妙なバランスを保っている。インクフロー以外はあまり調整しない方が良いと思われる。

2007-01-15 04 これはペン先の裏側。かなりインク汚れとエボ焼けがある。これは綺麗にしておかないと、インクフローを悪化させてしまう。ペン先のスリットもピッタリと詰まっているが、こちらは多少スリットの両側をスリスリすれば十分。筆圧をかけることによるポンプ運動で、インクがどんどん送り出されてくる。

2007-01-15 05 こちらは表面を磨いて調整を施した後のペン先じゃ。細字なのでイリジウム先端はくっつくかどうかの瀬戸際程度にしてある。少しでも筆圧を掛けると開くが、大きくは開かない。この微妙な力加減を出すのにずいぶんと時間がかかった。

2007-01-15 06 こちらはペン芯と首軸じゃ。首軸の左側にゴムサックを取り付けるわけじゃ。ここに前のゴムサックのカスが残っていると劣化が進むので、歯科用の先端金具などでネジ山などのゴムのカスを念入りに取り除く必要がある。

 ペン芯については構造が単純すぎる。ペン芯にV字型の溝を3本彫ってあるだけ。空気道とインク道を分けてはいない。上部を空気が通り、下をインクが通るという構造じゃ。

 これでは度々インクが呼吸困難になりそう!ただ、レバーフィラー式の良いところは、そうなった場合、レバーをピコっといじればインクがまた出始めること。


2007-01-15 07 これが首軸にペン先とゴムサックを取り付けた状態。ここからペン先の溝とレバーの位置関係を見ながら胴軸に首軸を突っ込んでいけば完成!

 レバーフィラー式の修理はゴムサックさえあれば簡単に終了する。この修理に使う【サックセメント】は、ずっと昔、自転車のタイヤがパンクした際のチューブの修理につかうアラビアゴム糊と同じ匂いがする。懐かしい!拙者はパンク修理の名人じゃったからな。


【 今回の調整+執筆時間:3時間 】 調整1.5h 執筆1.5h

これまでの調整記事

2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆