2007年01月17日

水曜日の調整報告 【 Pelikan 100N OM 】

2007-01-17 01 今回の調整依頼はPelikan 100N。クリップとキャップリングにライン模様が入っているもの。軸色はグレーに見えるが、キャップに隠れている部分は緑色が残っている。緑色が飛んでグレーになったと思われる。この色が抜けていく状態も何だが良い!

 以前なら【色抜け物】や【名前刻印物】には見向きもしなかったのじゃが、最近ではむしろそちらに惹かれてしまう。拙者は最近のモデルばかり常用しているので、逆に名前刻印のある物に出会うことが無い。その事が郷愁?に近い感情を更に深めてしまうのかもしれない。母を亡くしてから更にその傾向が強くなった。

2007-01-17 02 症状はインクが時々切れる・・・そうじゃがペン先調整は完璧。OMの特徴を残しながら綺麗に研いである。ペン先とペン芯の隙間も標準的で、何ら問題は無い。首軸の形状にも問題は無い。

 蛇足じゃがPelikan 100の復刻品:Pelikan 1931などの限定品は、インク漏れに注意じゃ。首軸先端の円周がキャップ内部の円周とほとんど同じの物がたまにある。キャップを締める時に息が詰まっていくような感覚。これが実に良いのじゃが・・・キャップを外すと大量のインクが首軸に附着するケースが頻発する。これは首軸先端がポンプ弁の働きをして、キャップを外す際に軸内からインキを吸いだしてしまうから。この対策は簡単で、首軸先端をペーパーで削ればよい。キャップを締める際に息が詰まるような感覚が無くなるまで削るのじゃ。

2007-01-17 03 Pelikan 100Nの完全分解は簡単。分解して内部を確認してみたが、ピストンにも内部機構にもダメージはまったく無い。インク窓が長い製品ではピストンを最下段まで降ろした際に、ピストンの後ろ側にインクが回りこんでいるのが見える事がある。これが嫌いな人には簡単にピストン機構が外れるPelikan 100や100Nは重宝じゃ。ちなみに100の完全復刻モデルのPelikan 1931等の限定品も同じように分解できる。右に捻って外すのじゃ。

2007-01-17 04 ペン先の裏にもエボ焼けなどは見られない。販売段階で完全清掃がされていたと考えられる。ペン芯にも破綻は無い。空気の通り道、インクの通り道も問題は無い。Pelikanのペン芯の設計では、ペン芯下側の溝にはどういう役割があるのかずっと不思議じゃった。この画像を見て気付いた。スリットを通って先端まで導かれたインクが、手の熱によるインクタンク内空気の膨張等で、必要以上にペン芯先端に溢れ出した時、先端のペン芯の切れ目からスリットの方へインクがヒョイと回り込む設計になっている!インク保持機構ではなく、ボタ落ち防止機構と考えられる。

2007-01-17 05  この機構上まったく問題ない万年筆にインク切れは発生しない。発生するとすれば、筆記中に筆記角度が変化し、多少内側にペン先が向いた際に、イリジウムの左側のエッジが引っ掛ってインクが紙に付かないせいだろう。

 そこで其処を微調整すると同時にペン先先端の詰まり具合を多少弛めて、【ペン鳴り】が発生しやすい状態に調整した。現在WAGNERでは【Pelikanのペン鳴り】がはやっているでな。



【 今回の調整+執筆時間:1.5時間 】 調整0.5h 執筆1h

これまでの調整記事

2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆