これはウォーターマンのル・マン200。ル・マン100の小型モデルじゃ。拙者もル・マン100とともに愛用しておった。NASAプラスティックで作られているとかで【傷に強い軸!】というのがことさら協調されていたように記憶している。
今見ると別に普通のデザインに見えるが、やたら装飾的な軸ばかり作っていたウォーターマンが【書きやすさ】にこだわってデザインから考え直した逸品。
特にこのペン先は初めて使うと感動する。ハート穴から先端までの距離の半分くらいがペコペコと柔らかく、それ以外は剛性がある感じ。ヘロヘロでもなく、エラボーのようでもなく・・・・不思議な感触だった。
今回の依頼品は【遠隔調整希望】じゃ。そう、昨日紹介した方からの依頼。【よしなに!】ということなので、昨日の画像を参考に、どこから書いても引っ掛かりがないような調整にすることにした。
インクフローを良くすれば筆圧が下がり、引っ掛かり感も減少するので、まずはインクフロー調整じゃ。 実はル・マンシリーズはインクフローが極めて良い設計になっている。筆記状態でペン芯を見ると、のっぺりとした平面で、インク溜りが無いように見えるが、分解してみると左画像のように、外から見えない部分にたくさんのフィンがある。この方式はMontblancの60年代二桁番台モデルと同じ。インクの乾燥を押さえられる為、書き出しでのインクスキップの確率も下げられる。ル・マン100ではフィンの片鱗がペン芯側から見えてしまうが、ル・マン200ではまったく見えない。
実はペン芯を抜き出した段階ではペン芯の下側のフィンはめちゃくちゃに曲がっていた。ペン芯を押し込んだ時の曲がり、引き抜いた時の曲がりが複合していたのじゃろう。これに対して隙間ゲージをさしこんでフィン一枚ずつ整形したのが上記画像じゃ。ペン芯を突っ込む際に、じわじわとやればフィンはそれほど寝ないものだが、機械での押し込みはやはり無理がかかってしまうようじゃ。 ややスリット間隔を拡げ、インクフローを良くした上で、依頼者の写真から想定される筆記角度に合わせて調整を施してみた。なかなか良い感じ!引っ掛かりに関しては、ほぼ問題なかろう。あとはヌルヌルの筆記感が良いのか、サラサラの筆記感が好きなのか、はたまた、多少ざらつくが引っ掛かりは無いのが好きなのか・・・このあたりを問診かCHATで確認出来れば遠隔調整のレベルは上がる。ただし、ペンが何度か往復するので、時間と送料がかかるがな。