2007年02月16日

金曜日の調整報告 【 Pelikan 140 緑縞 14C-KF 】

2007-02-16 01 今回の依頼品はPelikan 140 の KFニブ付きじゃ。140に関しては熱狂的なファンも多い。とにかく140が好きで、140ばかり100本以上集めて毎日全てを使っていても飽きないらしい。それほど持っていても、売られている140を見るとふらふらと買ってしまうとか・・・

 筆圧が強く、個性ある字形がお望みならうってつけの万年筆かもしれない。筆圧の低い人にとっては平凡な小型万年筆じゃが、いざ筆圧をかけて使ってみると、これが面白い。拙者も一時嵌った記憶がある。

2007-02-16 02 Montblancのクーゲルとは味付けが異なり、PelikanのK【クーゲル】では通常ニブとの筆記感に差はないと言われている。今回の記事を書くにあたって秘蔵品に付いている【M】と【KF】とを比べてみたが、結論から言えばやはり【ほとんど同じ】じゃった。

 【KF】の方がイリジウムの溶着部分が若干厚い。が、研ぎに差は無い。書き比べてみても差は感じられなかった。個人的には【KF】のほうがイリジウムだけ見れば【別嬪】じゃな。

2007-02-16 03 横から見るとペン先が大きくお辞儀している。これが独特の弾力の秘密。筆圧をかけると、かけたところだけ字幅が太くなるが、少しでも筆圧をもどすと極端に細い字幅にもどる。

 ずいぶん前にmonolith6しゃんが【サツマイモ文字】と表現したが、言い得て妙!髭のついたサツマイモを思い浮かべれば、どういう字形になるのかが想像出来よう。

2007-02-16 04 こちらはペン先ユニットを分解した図じゃ。今回はソケットが緩くペン先がどこまでもソケット内にもぐりこんでいくという不具合もあった。代用の透明ソケットに変えた挙句に割れる・・・というこの時代の140や400にありがちな症状かと思ったが、純正のソケット!そこで別の140についていたソケットを使ってみるとキッチリ!どうやら製品誤差があったようじゃ。Pelikanにしては珍しい・・・

2007-02-16 05 こちらは調整前のペン先の表。Montblancほどではないが、やはりエボ焼けはしている。同じ14金といってもNo.149やNo.146よりかなりエボ焼けは少ない。金の組成、エボナイトの組成や大きさによって焼け方は微妙に変わるのかもしれない。個人的にはMontblancの赤銅色に焼けたNo.149のペン先が好きじゃが、そのままではインクフローが悪くて使えないのが弱点。

2007-02-16 06 こちらは調整前ニブの裏側。やはりエボ焼けの程度は軽い。ただし左図で見た感じよりは汚れている。例によって金磨き布でゴシゴシ擦ってピカピカに磨き上げる。

 このニブの根元にあり小さな孔の意味が長年わからなかったのじゃが、昨日の【萬年筆と科學】の中で紹介されたニブを曲げる時の位置固定方式の亜流かな?

2007-02-16 07 こちらが磨き上げた上で、スリットを多少拡げてインクフローを改善したものじゃ。もちろん表面はピカピカに磨き上げた。140のニブは剛性が強いだけに、スリットが詰まったままだとインクがほとんど紙に付かないほど。ほんの少し切割りを拡げるだけで別物のような書き心地になる。

2007-02-16 08 こちらは裏側。昔はペン芯のインク保持能力を上げようとして、ペン先の裏側を粗いサンドペーパーで削ったりしていたが、【萬年筆と科學】を読み進めるにつれ、【昔日の愚挙】に恥じ入ってしまう。やはりOJT(On the Job Training)だけではなく、座学で理論をも学ばねば的外れな作業で貴重な文化遺産【Vintage万年筆】をダメにすることもある。気をつけねば・・・【自戒】

2007-02-16 09 こちらが調整後の図じゃ。ソケットが硬くなった事によって、一番美しい位置までペン先を前進させる事が出来た。さっそくインクを入れて左から右に高速で線をひいてみると・・・

 キュイーンと筆記音を立て、インク飛沫を上げてくれる!大成功じゃ!この壮大な【ペン鳴り】がするペンでゆっくりと文字を書いた時の気持ちの良さは尋常ではない。はやくわざとペン鳴りを出させる技を体得したいものじゃ。今回もたまたま運良く鳴いただけじゃった・・・

【 今回の調整+執筆時間:3時間 】 調整1h 執筆2h

これまでの調整記事

2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
mochiduki しゃん

シャイベンはトラック、STは曲芸用かも?
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月19日 08:03
ひさびさに140を使ってみましたが、やっぱり楽しい!
ZとGT-Rですか…なるほど納得です。となるとシャイベンやSTニブはさしずめレース用ニブ?
Posted by mochiduki at 2007年02月19日 00:16
きくぞうしゃん

http://pencluster.com/

でソケット販売もイリジウム付けも扱っている。
久保工業所直伝じゃ!
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月17日 19:30
4
140のBが一本手元にありますが、初めて買った物でよく調べもしなかったため、透明のソケットが付けられておりそれも割れておりました。140はニブが引き抜けると思っていたのですが、勉強不足でした。
ところで、ソケットを修理して、ついでに先端のイリジウムも盛りつけてくれるようなお店はないのでしょうか、、、
非常に気に入っているので、延命処置をしたいのですけど、、、
Posted by きくぞう at 2007年02月17日 16:55
plutonic_blue しゃん

ご明察! もう一本の調整も楽しみにしているのじゃ。
140のソケットは400NNと同じ。従ってよくペン先が入れ替わっているものがある。ニブの長さは400NNの方が長いがな。

あまりに書き味の特徴が違うので、どちらも面白い。
ZとGT-Rの比較みたいなものかな?もちろん140がGT-Rじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月17日 07:26
二右衛門半しゃん

140はいじればいじるほど才能を伸ばす、不思議な万年筆じゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月17日 07:19
5
小生がお預けしたペンでしょうか? お待ちしておりました。
マエストロの技、拝見いたしました。
Pelikan 140はいいですね。100本もお持ちの方にはおよびませんが…。
刻み込むように筆圧をかけて書くと線の幅に強弱が出て味がある字が書けるし、一方筆圧をほとんどかけなくても安定してなめらかな線が引けるのが私のスタイルには合っているような気がします。
最近Pelikan 140が大変気に入っているのですが、廉価なモデルであったせいか情報が少ない…。このブログは貴重な情報源です。
140はかのトーマス・マンが晩年に愛用していたペンではとも言われているそうで、同時代の上級モデルの400/400N/400NNにも劣らない逸品だろうと思います。ただ「安い製品だから」というだけで等閑視されてしまうのは惜しいと思います。
Posted by plutonic_blue at 2007年02月16日 23:20
ペリカン#140のKFニブなら手元にも転がっています。
書き味は良いですが今は休息中です。
記事を拝見して、また取りだしてみたいと思いました。
Posted by 二右衛門半 at 2007年02月16日 07:38