2007年02月24日

Pelikan M800 14C vs 18C-pf

2007-02-24 01 Pelikan M800 のニブには、いろいろな噂がある。趣味の文具箱 Vo.4 でニブのバリエーションが紹介されて以来、ますます噂が噂を呼んでいる。

 その中でも14Cのニブと18Cのpf マーク入りの書き味が【柔らかい】とか【しなやか】だとか・・・・

 拙者は全てのニブを調整しているので、噂と実際が異なっている部分も知っている。ただ、夢は壊したくないので、今回は実際の画像と拙者が指先で感じた感触を紹介するので、いろいろ想像してみて欲しい。

 まず上の画像じゃが14Cも18C-pf もエラが張っている。これは現行の18Cニブとは異なっている。現行ニブはpf の時代よりもニブの厚みが薄い。通常はニブの厚みが薄くなればふわふわの書き味になるのじゃが、そうさせないためにエラを狭めて剛性を出しているようじゃ。従ってちょっとの力でペン先に段差が出来るほど柔らかいペン先なのに剛性は18C-pf よりも強い・・・

2007-02-24 02 ニブの模様を見てみると、14Cの方が金色が薄い。時代が古いので色が褪せたのか、合金の具合かはわからない。おそらくは銀の割合が高いのじゃろう。【萬年筆と科學】に銀の割合が高くなればペン先の適性は良くなるが色が白っぽくなると書いてあった。

 実際にニブを指でこねくり回してみると、18C-pf のニブはすぐに変形するが、14Cはなかなか変形しない。従ってスリットを拡げたりするのは14Cの方が大変!調整師にとっては18C-pf の方が調整の生産性は良い。

2007-02-24 03 裏側を見てみよう。18C-pf が上で、14Cが下じゃ。上の方の刻印の状態は下よりも良く見える。ということは18C-pf の方が強い力で刻印したか、素材が柔らかいので同じ力で刻印しても裏からわかるようになったのか?おそらくは後者であろう。刻印は薄いほうが割れなどのトラブルが少ないので14Cの方が有利じゃな。

 現行18Cと18C-pf との形状の差はかなりあるが、14Cと18C-pf との間の差はほとんど無い。ペン先の太さの刻印が14Cの方が僅かに下にある程度じゃな。

2007-02-24 04  一番の違いはここじゃ!O3Bや3Bなどの極太ニブの場合、イリジウムの厚さがこれほど違う。14Cでは薄いが、18C-pf では非常に厚い。ちなみに現行の18Cではまた薄くなっている。

 従って分厚いイリジウムを斜めに研いでヌルヌルの書き味を実現しようとすれば18C-pf ニブしかないのじゃ。

 もう一つの差は、14Cニブのほうがニブの厚みが薄い事。これはペン先をペン芯に添えてソケットに差し込んでみればわかる。14Cの方はスムーズに入るが、18C-pf の方はかなり力を入れて押し込む必要がある。18C-pf の方がペン先がぐらつかないが、14Cの方が多少柔らかい書き味になる。 

 イリジウムが薄いからペン先が薄くてもイリジウムが取れないのかもしれない。従って14Cでも大きなイリジウムの時代があったかもしれないが、その時代ではペン先の厚みもあり結果として柔らかくは無かったはずじゃ。

 筆圧が強く多少捻り気味に書く人には18C-pf が適している。ペンを真直ぐに持ち寝かせて書く人には14Cでも太い字幅が得られるし、多少とも柔らかい書き味が得られる。

 いずれにしろ、どちらも魅力的なニブではある! 現行品のM 以外と比べればな・・・


 ちなみに今回紹介したニブはいずれも未調整じゃ。



Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(14) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
sirotomo しゃん

普通のニブの尖端を下から爪で押し上げていくと、だんだんと背開きになる。ぜひお試しあれ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月26日 23:56
>しかし背開きニブに筆圧を掛けると、背開きが酷くなるので、さらに書き味が悪化する。

背開きの状態は、ニブの両方の外側の角が紙面に対して下がっている状態で、紙面に接地し、筆圧をかけることにより、ニブの両側が上がり、紙面
に対して平行に当たるようになるため、正常なフローになる
と脳内でシュミレーションし、納得してしまったのですが、実際にはそう
ならない様ですね。私の話の聞き違いかもしれません。失礼しました。
Posted by sirotomo at 2007年02月26日 17:43
akio しゃん

合点がいった。Mとかであればニブの厚みは個体差じゃな。

3BとO3BとBBについては、18C-pfが厚く、14Cとpf無し18Cが薄いのは確認されている。

Mでの違いは個体さじゃろう。

残念ながらそのほかのニブについては使った事が無いのでわからん。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月25日 10:13
pelikan_1931 様、

私の場合両方ともMニブです。
Austria 1000の18C-pfの方は調整されているかどうかは分かりませんがオリジナルのものと思われます。昨年、シカゴの店先で買ったのですが、4-5年売れ残っていたそうです。価格も多分発売当時のままでアメリカでは人気が無いのかなと思いました。
Posted by akio at 2007年02月25日 09:26
sirotomo しゃん

ワザと背開きに! それは面白い説じゃな。

しかし背開きニブに筆圧を掛けると、背開きが酷くなるので、さらに書き味が悪化する。

強い筆圧を受け止めるには、ペン先をお辞儀させるのが良い。そうすれば自然と腹開きになる。

先生の言っているのは逆ではないかと思うがな。

もっとも理屈の世界と、現実の世界は違う。現実を熟知されている先生のセリフゆえ、理屈ではわからない真理が潜んでいるのかもしれんな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月25日 07:46
Austria 1000 しゃん

Austria 1000 の Mint を 3B ニブ付で購入されたのですかな・・・
海外にもニブ研磨する名人はなんにんかいるので、彼らの手にかかったニブを取り付けて売られていたのでは?という気もするのじゃが・・・
Austria 1000は日本市場では販売されなかったので。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月25日 07:41
長原さん曰く、現行が背開きの調整をしているのは、外人の筆圧の強さに合わせてのものではないかとのことでした。ペンクリにて。
Posted by sirotomo at 2007年02月25日 02:20
Austria 1000に付いていたものです。
>14Cの大玉イリジウムの噂は知っていたが、18C-pf の薄イリジウムは見た事はない。オリジナルですかな?
Posted by akio at 2007年02月24日 21:01
akio しゃん

14Cの大玉イリジウムの噂は知っていたが、18C-pf の薄イリジウムは見た事はない。オリジナルですかな?
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月24日 20:44
mochiduki しゃん

エラを張らせると、背開き防止にもなるのでな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月24日 20:43
5
初めて書き込みさせていただきます。
今回の記事は非常に興味深く読ませていただきました。
というのは自分の手持ちのニブではまったく逆だからです。
自分は14Cと18Cpfの両方を持っていますが14Cの方がニブもイリジウムも厚くちょうど一番下の写真で上下逆にしたような感じです。従って、

>従って14Cでも大きなイリジウムの時代があったかもしれないが、その時>代ではペン先の厚みもあり結果として柔らかくは無かったはずじゃ。

まさしくそんな感じです。
Posted by akio at 2007年02月24日 19:27
おお、タイムリーかつ秀逸な記事!
14C、格好いいかたちしてますね。こういったエラが張ったニブは大好きです。
Posted by mochiduki at 2007年02月24日 11:08
d'Artagnan しゃん

現行品はほとんどが背開きになっておるが、それを直せばMは絶品じゃ。極太系はpfにかなわない。
EFやFは、どれにしろ相当調整しないとダメじゃ。

M800系は調整師に調整してもらうことを前提にすれば、絶品!というかこれ以上の物は無いじゃろう。(外国製品ではな)

調整しなくて・・・となると、相当たくさん試し書きしないと良いのにあたらないのではないかな・・・

背開きだけでも直してくれると良いのになぁ・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年02月24日 08:42
<現行品のM 以外と比べればな・・・

なんと、それは現行品ではMだけは良いということですか?
知りませんでした。
全部良くないと思っていました。

詳しく教えてください。
Posted by d'Artagnan at 2007年02月24日 08:24