2007年03月02日

金曜日の調整報告 【 Pelikan M800 14C-M 】

2007-03-02 01 今回の依頼品は調整ではない。修理じゃ。物はPelikan M800。ペン先は14C-M。M800は発売当初14Cのペン先と18Cのペン先があった。1988年の輸入筆記具カタログを見ると、14金バイカラーペン先付が4万円、18金バイカラーペン先付が4.5万円となっている。1994年のカタログでは18金バイカラーペン先付のみとなっている。ちなみにその時の価格は5.5万円。

2007-03-02 02 この個体についている14C-Mは調整されている。そのせいで紙に吸い付くような書き味。Mに関してだけは現行の18C-M(pf無し)が一番良いとの評価もあるが、調整を施してしまえば素質は消され、あとは調整師の腕次第。この14C-Mの書き味は好きじゃな。

 首軸尖端の汚れはインクの酸に侵されたためじゃろう。どのメーカーにしろ首軸先端が金属のものは侵される。従って最近の万年筆では首軸先端に金属を配置しないようになっている。セーラーのプロフィットも止めたし、ウォーターマンもル・マン100での失敗に懲りて、リエゾンから金属の位置を後退させた。しかしM800では先端リングが無くなるとデザイン的に間抜けなので、まだまだがんばっているようじゃ。

2007-03-02 03 今回の不具合修理には先日の裏定例で作った工具を利用した。どんどん右に回していくと左図のように胴軸からピストン機構が外れる。この状態で引っぱれば抜ける!今回の不具合の一つは、やたらピストンが硬くなってしまった事じゃ。実は依頼者は先日の実習で自分で作った工具でピストンを外してみたらしい。

2007-03-02 04 そうしたところ、左図上のように弁の部分が芯の部分と離れ離れになってしまったのじゃ。弁の周囲が摩擦によって劣化し、そのカスば筒と弁との間に入って動きが悪くなっていたと思われる。それを力ずくで上下させているうちに、弁の内部で芯を押さえている部分が千切れてしまったらしい。

 これは修理不可能なので、拙者の部品箱に転がっていたM800用の弁+芯と交換することにした。そしてピストン機構を挿しこむ前に、胴軸内部にシリコンスプレーを噴霧し、綿棒で拭き取る。これだけでピストンの動きはスムーズになる。

2007-03-02 05 こちらが拙者が作ったPelikan M800用ピストンはずし工具じゃ。一応ルーターで面取りしてあるので、ピストンを傷つけることはない。この工具の方が、拙者がノギスを固定して作ったものより具合が良い。これは傑作じゃ!


【 今回の調整+執筆時間:2時間 】 調整0.5h 執筆1.5h

これまでの調整記事

2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
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2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
298しゃん

2時間のうち、修理は30分だけ。あとはスキャナーとPhotoshopの操作と作文じゃ。いままでで一番簡単な修理じゃった。いわゆるチェンジニアリングですな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年03月03日 08:57
お゛お゛〜〜!! 見覚えのある萬年筆が掲載されて光栄で〜す!!! 2時間も!! お手間おかけしました〜♪
Posted by 298 at 2007年03月03日 00:09