2007年03月05日

月曜日の調整報告 【 鍍金三昧 】

2007-03-05 01 今回は調整というより鍍金じゃ。鍍金によって書き味を変える事も出来るので、広い意味では調整の一種。ただ今回は模様替えの域を出ていない。

 最初の依頼品は1969年に作られたPilotのマニフォールドのニブ。団塊の世代が就職した年じゃ。立派な18金のペン先。ものすごく景気が良い時代だったのかもしれない。

 ロジウム鍍金を!との注文だが、このニブには傷が付いている。鍍金は鏡面にしかかからないので鍍金を施しても一部は金色が残ってしまう。ただ貴重なニブの金を削ぎ落とすのも気がひけるのでそのまま鍍金した。一応首軸内部の部分なので問題はあるまい。

2007-03-05 02 鍍金終了したのがこちらの画像。やはり傷が付いている部分には鍍金がかからない。市販の鍍金セットでは脱脂に青酸カリを使うわけではないので厚い鍍金は難しい。出来るだけ鍍金する面を鏡面に磨き上げてからやるのがコツじゃ。鍍金は女性のメイクやパテと違い汚れを隠してはくれない。表面の細かい傷はそのまま残ってしまう。まずは表面を徹底的に磨くことじゃ。

2007-03-05 03 こちらは、以前ペン先に銀鍍金を施したタルガ。銀鍍金は弱いので、改めてロジウムだけを鍍金することにした。ロジウム鍍金は銀鍍金と比べて輝きが弱いので綺麗ではないが、強さは数段上じゃ。

2007-03-05 04 こちらが鍍金前のペン先。ところどころ鍍金が剥れている。【鍍金が剥れる】は【ボロが出る】と同義語じゃがまさに!という感じ。実は鍍金が剥れてもしばらくは気が付かない。光の加減で金色っぽい輝きが見えたかな・・・?と気付いたら実は鍍金は相当剥れている。拙者は定期的に鍍金を全部ペーパーで剥がしてから再鍍金している。

2007-03-05 05 こちらがロジウムを鍍金した後のニブじゃ。実は首軸の輪の部分にもロジウムを鍍金してみた。キャップの開け閉めで毎回擦れるので、すぐに鍍金が剥れるとは思うのだが・・・

2007-03-05 06 こちらは一風変わった依頼じゃ。Montblanc No.146のプラチナ仕上げの軸にセーラーのプロフェッショナル・ギアのバイカラーニブが付いている。これをロジウム鍍金して軸金具の色とあわせたいというものじゃ。この気持ちは良くわかる。拙者も昔は良くやったものじゃ。

2007-03-05 07 オリジナルのペン先を確認すると、なにやら複雑な鍍金が施されているようにも思われる。21金の上に全面プラチナを鍍金し、その上に一部24金を鍍金したかのような配色。21金のニブがかなり白っぽいのをセーラーは気にしているようで、24金を金具ともども鍍金したモデルがいくつか出ている。24金鍍金は弱いのであまり意味が無い気がするのだがな・・・

2007-03-05 08 ペン先を横から見てみた。プロフェッショナル・ギアのペン先が見事にNo.146のペン芯に適合しているのがわかる。まるであつらえたようじゃ。

 よく似ているといわれるNo.146とプロフィット。こういう芸当も簡単に出来る。拙者は以前、No.146にセーラーのクロスポイントを乗せて悦に入っていた事がある。あの万年筆は・・・お嫁に行ったはずじゃ。誰に嫁いだかは記憶に無い。

2007-03-05 09 プラチナモデルのNo.146で驚いたことは、ピストン機構までもが銀色であること。Montblancもやるな!近頃!という感じ。こういう事にとんと無頓着だった筆記具メーカー時代を知っているだけに、アクセサリーメーカーになってからのMontblancの気配りだけは気に入った。

2007-03-05 10こちらが鍍金が終了したペン先じゃ。まるで元々銀色であったかのような雰囲気。これをプラチナかロジウム一色で鍍金したペン先を持つプロフィットギアの銀色軸が欲しい。軸の途中が銀鍍金のギアもあったが、あれを純銀にした上で、ペン先をプラチナかロジウムで鍍金すれば完璧な万年筆になる。やってくれないかなぁ・・・

2007-03-05 11 これは首軸に取り付けた図。やはり落ち着きがある。銀色鍍金はミレニアムカラーということで、1999年以降に大流行したが、拙者は1995年ころからロジウム鍍金を施していた。流行の先取りをしていたのか!・・・と今頃気付く。


【 今回の調整+執筆時間:2時間 】 調整0.5h 執筆1.5h

これまでの調整記事

2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

万年筆は刃物! その1 【研ぐとは?】
万年筆は刃物! その2 【心構え】
万年筆は刃物! その3 【準備する工具類】
万年筆は刃物! その4 【インクフローの調整】
万年筆は刃物! その5 【書出し掠れの調整】
万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】
万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】
万年筆は刃物! その8 【書き味硬め調整の極意】
万年筆は刃物! その9 【書き味柔らかめの調整】
万年筆は刃物! その10 【ペン先曲がりの調整】


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
この記事で最初に紹介されているマニフォールドのペン先がついたエリートは大好きです。

特徴や個性のある書き味ではありませんが、筆圧をかけてもびくともせず、しならない。そういった堅さのペン先です。
実用するなら最高クラスかもしれません。反面、遊びには向かないのですが。

私も祖父(まだ元気です)から譲り受けた一本を使っています。

マニフォールドの名の通り、カーボン紙を使っての転写にもちゃんと使えます。
Posted by 青いバランス at 2022年08月22日 00:29