
ある意味、すごい事。そもそもそれほどインクが出るという事は、インクが紙に当たる面積が広い事、空気がタンク内にいっぱい入る事、インクがペン芯に多量に保持されている事のどれかあるいは全ての条件が当てはまるはず。クーゲルのBBBなので、一つ目の接紙面積が広いのは当然ではある・・・

危惧されるのは、ピストン裏から空気が漏れている事。これがあると空気は(ペン芯からだけでなく)ピストンの後ろ側からも供給されるので、ボタ落ちに近い状態になる。
ペン先裏からニブとペン芯を覗いてみると、隙間にインクがあふれキラキラ光っている。ただし、インク吸入は完璧なので、ピストン側からの空気漏れではなさそうじゃ。これで一安心。ピストン側からのインク漏れの場合、ピストンの劣化であれば修理できるが、軸の歪みは手に負えないのでな。

どうやらペン芯とペン先の曲率が合ってないと思われる。曲率が合ってなければ隙間が出来、其処にインクが溜まる事によって、インクがドバドバ出る現象を引き起こす事が考えられる。では曲率を合わせるしかないなぁ・・・ペン先を曲げると柔らかさが変化するので好ましくない。といってこの時代の極太エボナイト製ペン芯は熱湯に入れてもほとんど曲がらない。こりゃ厄介じゃな・・・

このアーチ状に切り取られた部分にインクが溜まり、そこからインクがドバドバと供給されていたのではないかとの仮説を立てた。症例として知っているわけでは無いので、仮設を検証する形で問題にあたるしかない。
経験豊富な職人さんは、症状を聞いただけで過去の経験から原因を瞬時に絞り込んでしまう。実物を見なくてもわかる。久保工業所の久保氏がその代表。centenaire26しゃんが舌を巻いたのが思い出される・・・

不安そうな顔でそっとNo.149を握り、インク壷に首までペンを付け、ペン芯にたっぷりとインクを含ませた上で紙にペンを下してみると・・・ドクドクとインクは出るものに、その量は以前よりも圧倒的に少ない!どうやら成功したようじゃ。
1960年代のNo.149はそれ以降のものよりもインクタンク容量が大きい。またピストン機構を外すには専用器具も必要でフォークを加工して・・・というわけにはいかない。軸も薄く耐久性も無い。No.149の中では一番病弱なモデルなので拙者は敬遠しているが、尻軸金属リングの片テーパーが人気で愛好者も多い。くれぐれも落下事故を起こさないように大切に使って欲しいものじゃな。