

そういう中で今回の依頼人は・・・左利き&オブリーク好きじゃ。EF付、B付の2本を預かった。今回の報告はBの方じゃ。
この個体は右利きの人のにとっては、スリットを多少開く程度でずいぶん良くなる。ペン芯の位置も最近の物にしては珍しく、理想のポジションにある。

ところが依頼者は左利き! 依頼者の書き癖では書き出しでスリットが紙に当たらないのでインクが紙まで到達しない。これは非常なストレスになる。万年筆に慣れてくると【ヌラヌラの書き味】と【書き出し掠れ無し】の二者択一を迫られた場合、たいてい後者を選択する。

右利きの人の調整であれば320番の耐水ペーパーの上で、その人の筆記角度で文字を書きながらガリガリと削ってから丸めるのだが、左利きの人の書き方で同じことをするのは困難。拙者も左手で字を書く機会は無いからな・・・
そこでまずはPelikanのオブリークの形状に合わせてイリジウムを削った。幸いM800用の14C-O3Bや18C-O3Bが手元にあったのでそれに似せて研いだ。

この調整はこれで終わりではない。依頼者に書いてもらって角度調整を行う必要がある。左手筆記の場合はペン先を押しながら書く感じになり、引きながら書く右手筆記とは異なる調整になる。経験数が少ない調整の場合は、どうしても個別に本人確認をしないと仕上りに確信が持てない。なかなか良い仕上りになったと感じているので依頼者に確認してもらうのが楽しみじゃ!