イリジウムの秘密を語った・・・【第三十章】
この三十章は今まで読んだ記事の中では最も面白いものの一つじゃ。なぜ渡部氏がパイロットのイリジウムが世界一かを顕微鏡写真付で解説してくれている。結論から言えば、当時のパイロットのイリジウムは堅いだけではなく、粒子が恐ろしいほど均一! 写真で言えば超微粒子写真のような均一なもの。これには圧倒された。
最初にイリジウムと一般的に呼ばれているペンポイントについて解説がある。原石と合金の2つに分けて考える必要があるというのがサマリー。
★原石
当時イリジウムの産地として有名だったのは、北海道、タスマニア島、ウラル山脈の三箇所。それぞれの原石は【イリドスミン】【オスムイリジウム】【プラチンイリジウム】と呼ばれていた。それぞれの原石に含まれる元素の割合は以下のとおり・・・
【イリドスミン】
イリジウム:62.6% オスミウム:20.2% プラチナ:0.7% ルテニウム:14.4%
【オスムイリジウム】
イリジウム:35.0% オスミウム:50.4% プラチナ:2.4% ルテニウム:2.4%
【プラチンイリジウム】
イリジウム:2.3% オスミウム:2.0% プラチナ:66.7% ルテニウム:なし
イリドスミンはイリジウム原石、オスムイリジウムはオスミウム原石、プラチンイリジウムはプラチナ原石と呼ぶべきかもしれんな。
これだけイリジウムを高純度で含んでいるイリドスミンであったが、輸出はされていなかったらしい。当時の匁単価が40円前後(当時の円)に対して外国産は30円前後だったとか。
渡部氏はまず原石の顕微鏡写真を提示している。イリドスミンはオスムイリジウムよりも粒子が均等で細やかな印象を受ける。しかし原石を比較してもしようがない気もするのじゃが・・・
ともあれこの撮影方法は・・・原石の表面を平滑に磨き、エッチングを行ってオスミウムとルテニウムを侵食したあと、垂直光線で500倍撮影を行ったもの。原石の中のイリジウムは白く光り、オスミウムとルテニウムは侵食されて黒くなっている。原石に含まれるイリジウム自体が均一ということを示した写真じゃ。
しかしこれはある意味当然かも・・・オスムイリジウムではオスミウムが50%あるので侵食される部分が大きく、侵食されないイリジウムはまばらに残る。これを称して粒子が粗大で不均一といわれてもなぁ・・・写真では説得されても、理屈では納得できない・・・なんて書いても写真を見なければわからないじゃろうな・・・ゴメンな
渡部氏はいくらイリドスミンが優れていても、そのままでは完全とは言えないとおっしゃっている。おそらく創業当初はイリドスミンの小片を加工してペンポイントとしていたのかもしれない。しかしペンポイントと書き味の関連を追及していくと、イリドスミンを元素に分けて精製し、それぞれの元素を適度にまぜた合金化しなければ最高のペンポイントにならないのだとか。
イリジウム単体の硬度よりも、合金化した時の硬度の方が高いらしい。
★合金としての各社のペンポイント比較
ここからは渡部ワールドじゃ。パイロットのペンポイントの拡大図をウォーターマン、パーカー、シェーファー、モンブラン、スワン、オノト・・・各社のペンポイントを、原石の時と同じ方法でエッチングして撮影したものを掲載している。
パイロットのペンポイントのイリジウムは原石の時と比べてはるかに微粒で均一。驚くほどじゃ。それに対して外国のメーカーのペンポイントは月面クレーターのように凸凹で酷いもの。また国産の他社のものは外国産よりは良いが、イリドスミンと同じような粒子。ひょっとするとイリドスミンをそのままペンポイントとしたのかもしれない。
これらの写真を見ると、なるほどパイロットのイリジウムは均一で美しい!これこそ世界一のペンポイント!と納得するじゃろう。拙者もそうなりかかった・・・しかし・・・この顕微鏡写真は、ペンポイントに含まれるオスミウムとルテニウムを侵食した後で撮影されたものじゃ。今日では、ルテニウム含有率が高いペンポイントも多いと聞く。はたしてルテニウムとオスミウムを侵食した後の写真にペンポイントの優秀性を語らせる意味があるのだろうか?
当時はあったのじゃろう。インクの酸性が強かったので場合によってはオスミウムやルテニウムは侵食され、残ったイリジウムだけで字を書くような事態になる事があったのかもしれない。そういう場合には確かにイリジウムが微粒子なのは優位であると言えたかも知れない。インクが中性化している現在では・・・・意味無いかな?
ともあれ、当時としては画期的なこの顕微鏡写真のおかげで、パイロット社内や販売店の人は大いに勇気付けられたことじゃろう。この写真をお客様に見せて説明すればどんなに高くてもパイロット製万年筆を買ってくれたはず。ペンポイント=イリジウムとの誤解をうまく利用したトリックだが、効果絶大だったのは間違いない。
今回は人を説得する際のヒントをもらったような気がする。ウソは一言も無い。風が吹けば・・・・・桶やが儲かる・・・・・? イリジウムが均一だから・・・・世界一のペンポイント・・・・・ 書き味が世界一とは書いていない。さすが渡部氏じゃ。
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