2007年04月09日

月曜日の調整報告 【 Paker Sonnet F 遠隔調整 】

2007-04-09 01 この遠隔調整は、2007年2月5日の記事でNo.146の調整をしたのと同じ依頼者からのもの。今回はParker Sonnetの細字じゃ。トラブル内容は【インクが出ない】。原因は明らかで【スリットが詰まり過ぎている事】。見なくてもわかる。5本に4本はインクフローが悪いのが細字。

 Parker Sonnetは発売当初のペン先がついている物に限っては何本も購入した。柔らかいペン先に魅了されたのでな。おそらく20本以上・・・・。当初は極太専門だったが最近ではFが気に入っている。うまく調整できれば非常に良い書き味になる。しかも・・・出荷時点の調整や検品がメチャメチャなので非常に楽しませてくれる。一方ペン先を外せないので満足な調整が出来ない・・・次回こそ!との決意も生まれてくる。一発購入は危険じゃが調整を前提とすればGoodな万年筆じゃ。ペン先の設計が変わった後の物は触った事も無いので良くわからない。

2007-04-09 02 このペン先は18金のF。まさに最近の拙者のお気に入りのもの。小ぶりなペン先だが、ハート穴からペンポイントまでの穂先が長い。また形状もかなり抉れた二等辺三角形になっている。またニブの厚みも非常に薄い。要するに柔らかニブの要素を兼ね備えている名品じゃ。Parker 75という、どちらかといえば剛性の高いペン先から、Sonnetの柔らかペン先に変更するにはかなり勇気が必要だったはず。Sonnetだけに社運を託す予定なら、こんなに柔らかなペン先にはしなかっただろう。

  【デュオフォールド復刻版】という剛性の高いペン先を持つフラッグシップの【対極としての位置】がSonnet・・・という戦略ではなかったのかな?


2007-04-09 03 調整する際にいつも悩まされるのが、ペン芯とペン先が外れない事じゃ。工業製品として、一定の性能を保とうとすれば一体型がベストなのだが、問題は【ペン先の形状が工業製品としての精度を持っていない】ことが多々ある事!外れてくれないとも設計品質を出してあげられないのじゃ。

 特にインターネットなどで海外から買う場合のSonnetの状態は酷い。日本市場で販売されるものは店舗側の検品がしっかりしていれば問題ない。インターネットで購入する場合は、こういう検品で跳ねられた物が売られるケースが多いようで、まともなものに一度も当たった事が無い。拙者に取ってはまさに極楽!なのがSonnetの通販のペン先! 普通の人には地獄かもしれない・・・

2007-04-09 04 ペン先を上から見ただけでは問題は発見できない。左画像のようにペン先をひっくり返して見ると・・・地獄じゃ!ペンポイントの中央にあるべき切割りがずれていて、左右のイリジウムの大きさが異なっている!またペンポイントをペン先に取り付けている位置がずれていて見苦しい。海外から入手したり、国内オークションで入手したSonnetのペン先【F】はほとんどがこのような形状だった!

 拙者が万年筆店の店主なら絶対に撥ねるわな。ただし自分用であれば舌なめずりじゃ。こういうのは調整を趣味とする者にはありがたい。ただしペン先が外れないので、調整はものすごく大変・・・


2007-04-09 05 調整後は左画像にようになる・・・なんて書けば簡単じゃが、今回は二度とやりたくない!と思わせられるほど大変だった。構造上スリットを開くにはスキマゲージを使うしかないが、ヨリが強すぎてスキマゲージではビクともしない。これには焦った!結局はサンドペーパーを使ってスリットを拡げた・・・というより削り出した。この方法を使うとハート穴付近よりペン芯の先端部の方がスリットが拡がってしまう。一見毛細管現象が発生しないような錯覚を覚えるが、万年筆のインクが前進するのは複数の要素の絡み合いなのでそれほど心配する事は無い。見栄えが悪いだけじゃ。

2007-04-09 06  これが調整後のペン先を上から見た画像じゃ。調整前よりペンポイントは細身になっているが、スリットが拡がったのでインクフローは素敵な状態!

 潤沢なインクフローがあってこそSonnetの書き味が楽しめる。ヌラヌラではなくシュルシュルというのがSonnet細字の筆記音。【万年筆の書き味を演出するスパイスは紙との摩擦音】ということを改めて認識させてくれる名品じゃ。【スルヌルヌラヌラ一辺倒の極太好き】だった時代が拙者にもあった!ということがもはや懐かしく思えるようになった。いま大好きなのは【細字スタブ】の感覚なのじゃ。良い女の背中を人差し指でなぞる感じに近いかも・・・ゾクッ!



【 今回の調整+執筆時間:3.5時間 】 調整1.5h 執筆2h

これまでの調整記事

2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
2007-03-07   Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05   鍍金三昧
2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
C.Sakumaしゃん

切割りのズレはトラブルにはならん。
見栄えが悪いのが一番。
二番目は調整の余地が少なくなること(イリジウムの少ない側が)
三番目は曲線を書く時に線が乱れる。

三番目はイリジウムの切割りのずれというよりも、ペン先の中央に切割りが来ていなくて、切割り左右のペンの巾が違う時に発生する。また敏感な人はペン先の感触で切割りの乱れを発見するようじゃ。

拙者は見つけ次第直している。もちろん削ってな。

ちなみに拙者の場合、依頼品は【生贄】と呼んでいる。
こころは、どうしようと拙者の好きなように調整する事を前提としているから。
どうされようと文句ありません・・・ということを前提とした調整:実験なのじゃ。
まだ生贄が昇天した事は無いが、可能性は十分にある。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月10日 00:54
Sonnetistしゃん

Bになれば調整方法は若干違う。とにもかくにもスリットを拡げねばなるまい。自分でなさるなら、丸刈太しゃんの荒業を試してみるのも手かと・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月10日 00:41
丸刈太しゃん

自分用のParker75のペン先で痛い思いをしたので、依頼人のペン先には傷をつけないようにしておるのじゃよ。

自分用は切ったり、折ったり、曲げたり、潰したり・・・自由自在じゃ・・とほほ
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月10日 00:38
dodomenしゃん

お楽しみに! けっこう良い書き味になりましたぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月10日 00:35
始めまして、いつも楽しく拝見しております。
切割のズレって具体的にはどのようなトラブルを引き起こすものなのでしょうか?
国産のビンテージ物が好きで買っていますが、切割の入り方はけっこうアバウトです。職人の手作業ならむしろ当然のことですが。
最初は気にしていましたが、特別な不具合が感じられないので最近は深く考えないことにしました。
Posted by C.Sakuma at 2007年04月10日 00:07
SonnetのBニブで、インクかすれにストレス
を感じ、これまでの調整記事を参考に少しずつツー
ルを集め、インクフローの改善をぼちぼちやってき
ました。
今日の調整記事は大きなプレゼントを戴いたようで
、よく読み返えさなきゃ・・・。

Posted by Sonnetist at 2007年04月10日 00:03
たまに書き込みます丸刈太です。

ソネットのペン先、はずれませんか?私はいつも外して、洗ったり
スリスリしていますけども。キャップのマークは「IIV」です。

ペン芯裏側にはまっているツメを、細いマイナスドライバーのようなもので
外側に開きつつどけると、パチンとはずれるのですが。

ソネットのペン先は薄くて柔かく、75のように剛直ではないです。

75のペン先も、わたしは2回ほど無理矢理外したことがありますが。
はずすとペン芯に接着剤の痕跡が残っているので、これはインクフローを
阻害するような気がして、ナイフでこそげ落とします。

乱暴なことしてるのかなあ・・・。
Posted by 丸刈太 at 2007年04月09日 23:11
この様な地獄状態だったとは。拡大写真をみて愕然と致しました。またもや救済頂き本当に有難うございます。お手数をおかけ致しました。生まれ変わった書き味が待ち遠しいです。遠隔調整本当に心強いです。今後も何卒宜しくお願い致します。
Posted by dodomen at 2007年04月09日 12:26