万年筆評価の部屋
拙者は万年筆の収集を始めて36年以上。そろそろボケが始まったので今のうちに【萬年筆調整と改造の記録】を残しとく。
2007年04月16日
月曜日の調整報告 【 Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・】
今回の依頼品はMontblancのNo.149。70年代のNO.149は独特の筆記感がありファンも多い。BBともなるとどの時代のものでもほとんど差は出ないが、細字になるほど書きごこちの差が出てくる。細字でやわらかいペンの場合は、両べろのONOTOくらいにヘロヘロに柔らかい物でない限りは、かえって紙に突き刺さるような感じになってしまうことがある・・・が、そういう書き味が悪いとは言えない。そういうのが好きな人もいる。人の好みは一様ではない。また同好の士の意見で簡単に変わってしまう。昔の情報で調整しえも満足が得られない場合もあるのじゃ。
今回の依頼品は2つの大きなトラブルを抱えている。ひとつがこれ。ペン先が右に大きく曲がっている。まるで画伯の特殊スケッチペンのよう。幸いなことに、左右に曲がっているだけで両足をからませたような状態にはなっていない。従って大手術というほどではないはずだったのだが・・・
依頼者はこの状態で入手されたらしい。修理できる確信がなければこういう物に手を出しにくい。5000円ならペン芯とピストンガイドだけが生き残っていても払う価値はあるが、それ以上は損する・・・・。WAGNER会員は別じゃがな。
こちらが拡大図。ペン芯とずれている事から考えて、かなり強い力でぶつけたと考えたれる。あるいはフローリングの床に高い位置たら落下させたのかもしれない。ペン先先端だけをぶつけたようで、イリジウム部分が曲がっている。もう少し衝撃が強かったら再生不可能だったかもしれない。それにしても金がイリジウムを抱く力はかなりのものじゃな。
もうひとつのトラブルは・・・・尻軸がねじ切れている事。下の尻軸がネジ切れる前の状態。昔のNo.149はNo.146では良く見かけるトラブルじゃ。インクが胴軸内で固まってピストンが動けない状態になっているのを力ずくで動かそうとすると簡単に捻じ切れてしまう。それほど複雑な加工ではないのに何故金属製にしないのか不思議・・・今だに同じはずじゃ。このネジ棒を金属の輪で尻軸に固定してある。多少カタカタと動くようになっているが・・・弱いのじゃ。ピストンの動きが悪くなたら早めに修理に出した方が良い。今回はたまたま壊れたNo.149からはずしておいた尻軸があったので利用することにした。ただし、本体のネジが一部つぶれていたので、ネジをひと溝ずつ丹念に掘り起こす必要もあった。
これにはもうひとつのトラブルもあった。ピストンの弁を固定する棒(左図の中央上段)が弁を固定する部分のプラスティックが欠損している。これでは再度インクが固まりかけた時には弁が外れてしまう。そこでプラスティックを固定する【
エポキシABタイプ
】という接着剤で弁と筒を固定した。これで新品の時よりも丈夫になったはずじゃ!
それにしても美しいニブ!銀色と金色のコントラストが実に美しい。裏の状態を確認してみたが、エボ焼けはほとんどない。ただしペン先とペン芯はベトベト状態のインクで密着しており、胴軸側からノックアウトブロックを使ってたたき出した際にも、ペン芯とペン先は分離しなかった。ロットリング洗浄液を満たした小瓶に浸けて激しく一分ほど振り回し、その後30分ほど放置してから水で洗ったが、一回ではダメで、3回繰り返したほど。インクを抜かないで何年も放置するとどうなるか良くわかった。ペン芯にインクが同化したような状態になるのじゃ。
こちらがとりあえず曲がったペン先を元に戻した状態は。まだなんとなく右に曲がっているような気もするが、これは首軸に装着してから微調整したほうがやりやすい。ペン先をはずした状態では大きな曲げはやりやすいが微調整はかえってやりにくい。どこかに固定された状態の方が『オッとぅ・・・曲げすぎたぁ・・・』ということが少ない。
これが修理が終わった状態の全体像。多少軸を磨いたこともあるが、実に美しい姿じゃ。70年代のNo.149は80年代とフォルムの上では変化ないはずなのじゃが、なんとなく優雅。この時代のペン芯は力を入れればどこまででも押し込めそうな感じなので、多少奥に入っていただいた。
完成した状態での先端部分じゃ。これなら通常筆記に使える。ただし変な癖がついている。右に曲がっていた時期が長かったからかもしれないが、まっすぐに伸ばしても、右向き線を書くときに苦しそうな息遣いが聞こえるような気がする。
骨折した古傷が痛むような感じじゃ。拙者も骨折してから1年が経過したが、骨折の翌日は痛みなど無かった。が、ここへきて足首を不用意に捻ると、『ピリッ』と痛むようになった。まさにこういう感じの書き味。ペン先にも古傷?が感じられるとは驚きじゃ!
【 今回の調整+執筆時間:
6
時間 】 調整4h 執筆2h
これまでの調整記事
2007-04-13 Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11 Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09 Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06 Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04 セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02 Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30 Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28 Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26 Pelikan M250 14C-B
2007-03-23 Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21 Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19 Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16 Pelikan 500N 茶縞 14C-M
2007-03-14 Parker Sonnet 鍍金ペン
2007-03-12 Montblanc 60年代 No.149 14C-KBBB
2007-03-09 Pelikan M800 18C-F
2007-03-07 Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05 鍍金三昧
2007-03-02 Pelikan M800 14C-M
2007-02-28 Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26 Omas D-Day 18C-B
2007-02-23 Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21 Pelikan 140 黒軸 14C-ST
2007-02-19 Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16 Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14 Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12 Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09 Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07 Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05 Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02 Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31 Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29 Delta 366 M
2007-01-26 2006年最高調整【自分用】
2007-01-24 Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品
2007-01-22 Waterman ル・マン 200
2007-01-19 Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2
2007-01-17 Pelikan 100N OM
2007-01-15 プラチナ 蒔絵
2007-01-12 Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10 Faber-Castell スネークウッド M
2007-01-05 Montblanc ボエム アメジスト OB
2007-01-05 Pelikan アテネ B
2007-01-03 Montblanc No.254 OB
2006-12-30 セーラー プロフェッシュナルギア 水色
2006-12-27 Sheaffer コノソアール 赤軸 OB
2006-12-16 Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸
2006-12-13 Montblanc デュマ
2006-12-09 Pelikan 1935 Malachit Green F
2006-12-06 Pelikan 1931 Toledo B
2006-12-02 Montblanc No.252 OBBB
2006-11-29 Montblanc No.149 ピストンガイド交換
2006-11-25 Montblanc No.149 ニブ塗分け
2006-11-22 Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金
2006-11-18 Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金
2006-11-15 Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金
2006-11-11 カランダッシュ ボールペンの銀鍍金
2006-11-08 Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金
2006-11-04 Montblanc No.149 O3B でも・・・
2006-11-01 Parker Duofold International XXB
2006-10-28 Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残!
2006-10-25 Montblanc 1980年代前半 No.146 B
2006-10-21 Montblanc No.149 B 至高のペン先
2006-10-18 Sheaffer Snorkel 青/ 赤
2006-10-14 Senator President B
2006-10-11 プラチナ #3776 セルロイド 極太
2006-10-07 Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04 OMAS パラゴン BB
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB
2006-09-27 Montblanc Np.146 丸善120周年記念
2006-09-23 Montblanc No.149 BBB
2006-09-20 Pelikan 140 赤
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤
2006-09-14 Soennecken Pony
2006-09-13 Montblanc No.742-N
2006-09-09 Montblanc No.252
2006-09-07 Montblanc No.22 緑
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化
2006-08-30 Montblanc No.149 開高健モデル
2006-08-26 Montblanc No.644 グレイ縞
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway
2006-08-10 Montblanc No.256 KOB
2006-08-05 Conway Stewart Floral
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(6)
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この記事へのコメント
オットーしゃん
成功を祈る。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月18日 23:08
mtfujiしゃん
この時代のNo.149は内部の作りにも好感が持てるなぁ。
コストカットの余韻が感じられない作りが良いな!
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月18日 23:07
師匠!ありがとうございます。再挑戦してみます。
Posted by オットー at 2007年04月17日 20:11
右に曲がりきったペン先がよくもきれいにまっすぐになりましたね。それにしても14Cと14Kとではペン先を外したときの様子が全く違うのですね。14Cがいかに美しいか、実感しました。
Posted by mtfuji at 2007年04月17日 16:08
オットーしゃん
ペン先の奥の段差の方から徐々に高さを揃えていき、最後にペンポイントの位置の微調整をすると高さの差が出ない。えらく面倒なのでめったにやらないがな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月16日 21:43
落としたペン先が曲がってしまい、それを直して書き心地が良くなること。以前の記事で見ましたが、小生も経験あります。落とした後の絶望感、そして必死で曲げなおして、試筆、「あっ、なんてやわらかさ、すごいインクフロー」まさに昇天の至福でありました。開脚変形だったからまだ、よかったのかも知れません。ただ、ハート孔の部分で少し盛り上がったような曲げが出たのを観て少しがっかり。これは、こすってもたたいても直しにくいですねえ。
Posted by オットー at 2007年04月16日 19:16
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