今回の依頼品はMontblanc No.134。実は初めて触った。過去にNo.139は何度も修理調整したが、No.134は初めて。しかもMontblancの白ペンというのも初めてじゃ。Pelikanの白ペンはCN【クローム・ニッケル】だが、Montblancの白ペンの素材は何かな?知っている人がいたら教えて欲しい!
実は依頼人は過去2回の調整講座で取り上げた万年筆の所有者と同一人物。この万年筆も通常に書けばヌラヌラと極上の書き味で書ける。ペンポイントを確認するとすばらしい調整が施してある。 しかし、ニブ全体をルーペで確認すると、一点だけ気になる点がある。ハート穴からペンポイントに至るまでのスリットに大きな段差がある。にもかかわらずペンポイントの部分だけはきっちりと合っている。
この状態で筆記には何の影響も無いが、スリット左右に段差があると、インクでペン先が汚れる現象が発生しやすい。この状態を極端に嫌がる人もいるので、出来るだけ直しておこう。 今回、No.134のペン先ユニットをボディから抜くのには専用工具を利用した。Montblancの修理をやっていた方からの寄贈品だが非常に役に立つ。これが無ければ、またフォークを削らねばならないところじゃった。
抜いたペン先ユニットを見て驚いた。ソケットの切れ込み部分とペン先のスリットの位置がずれている。この状態だと上記道具でペン先ユニットをはずす際に、ペン先のエラに引っかかることもある。これはイヤでも位置調整をしておかねばならない。
それにしても出来の良いペン先ユニットじゃ。金ペンが作れない状況においてもペン芯を作る技術は途絶えてはいなかったようじゃ。 こちらがペン芯からはずしたニブの画像。インクの酸にやられていたる所に斑点が出来ている。実はインクの酸だけではなく、空気中の水分も劣化に一役買っている。
いったん劣化が始まるとなかなかそれを止める手立ては無い。金鍍金すればそれ以上の酸化は防げるが、それではプチ改造になってしまう。Vintage物は、発売当時の状態をいかに長時間持たせるかが重要。簡単に改造すべきではない。 こちらが調整が終わったペン先じゃ。まずは段差を直す。これはハート穴から順位左右の高さをあわせて行くという地道な作業。最後に先端部分のつじつまを合わせる調整が必要!
これには専用の工具を使った方が良いかもしれない。拙者はセーラーのペンクリで実物を見て、コピーを作り改良を加えてある。ペン先に傷を付けないように曲げるのは非常に神経を使う・・・・ これが首軸にセットされたペン先。調整前は左に倒して書く時に若干ひっかかる程度だった・・・ので調整の必要は無いと考えていたのだが、思い切って究極調整を施してみた。
実はこの時代のスチール製ニブの書き味は絶妙!特にスタブ風に研ぐと逝ってしまいそうなほど気持ち良い!
今回は久しぶりの【大成功】じゃ!
【 今回の調整+執筆時間:3時間 】 調整1h 執筆2h