昨日は趣味の文具箱 Vol.7 の正式発売日。ネタバレが無い程度に感想を述べてみたい。
前回のVol.6は内容的には過去最高と評価した。同時に作り手、販売側のスタンスでの本作りであり、万年筆スタイルに近づいたかな・・・と書いた記憶がある。
今回の趣味の文具箱は使い手側の立場を徹底的に追求した本作りになっている。しかも初心者ではなく、万年筆で楽しむ達人を取材し、拡がりのある万年筆の世界に新人を誘う(いざなう)ような作りになっている。
ニコルさんの万年筆の握り、槙野さんの握りと、木下さんの握りを比較してみるとほほえましい。重鎮お二人はトラディショナルな握り、木下さんは左利きの【どらえもん持ち】じゃ。オブリークをちょちょいと調整すれば気持ちよい書き味になる握り方。調整してみたいものじゃ。
さて内容・・・・最初読んだ段階では100点だと思った。拙者がこうすれば良いのに・・・・と思っていたとおりの内容になっている。万年筆に興味を持ち始めたころは、他人がどういう楽しみ方をしているのか非常に気になる。拙者もいろいろなムック本で見ては文房具屋に走ったものじゃ。形から入ることで、達人の域に近づこうと思ってな。
今回の本の情報量はすごい。拙者も知らない情報がかなりあった。そういう意味では今までで一番面白く、ためになる本なのだが、何度も読み返していると拡散的な感じがしてくる。何故かなと考えて、世界の文房具と比較してみてわかった。趣味の文具箱 Vol.7では、取材対象者が話した内容をまとめている。従って話し手の思い入れによってムック本としての大きなストーリーに乱れが出ているのだと思う。取材対象者は編集部の意図どおりにはしゃべらないのでな。
2冊を比較してもあまり意味が無いかもしれない。が、少なくとも写真は圧倒的に趣味文じゃ。世界の文房具は物撮りも人撮りも満足のいく出来ではない。趣味文は写真がすごい!カメラマンは構図や配置のセンスも重要だと痛感させられる。人物写真など人柄まで引き出してくいる。すごい腕じゃ。
以下の文章を読んでみて欲しい。世界の文房具の鉛筆の項に出ていたものじゃ。
【何者だかわからないけれど。マダム・スウッチースという人は。《鉛筆で書くこと、それは低い声ではなすような・・・・》と考察しているそうである。じっさい鉛筆の字は、肉声で語られる言葉のような味を持っている。万年筆は少しよそ行きの声、筆の字は演説(または謡い)の声、そしてボールペンの字は電話の声だ。】
これは物書きの文章だ。味があり説得力がある。今回、味があり主張があると思えたのは物書きが書いた文章と清水編集長の署名記事のみ。もし取材した内容を登場人物に語らせるだけではなく、物書きが外側から自分の言葉で登場人物や万年筆を語るとしたら・・・さらに面白いじゃろう。Vol.7には、物書きが語る部分が少なかった。
古山さんがニコルさんを語る部分が心に響くのは、古山さんが自分で感動した事を自分の言葉で書いているから。内容が間違っていてもいいから、物書きが語る部分を少しづつ増やして欲しい。
拙者の思い入れのある【趣味文】は読者に事典的に扱われたくない。小説のように頭から最後まで読んで初めて泣けるような作りを希望じゃ!
ちなみに、世界の文房具では、庄司薫が主として鉛筆を、寺山修司が消しゴムについて自分の考えを作品として寄せている。
そのほか梅田晴夫が語るVintageタイプライターなど面白い記事も多い。
やはり物書きの文章には味がある。今回の趣味文ではその部分のスパイスがほんの少し不足していたような気がする。
事典としては他の追随を許さなくなった趣味文。Vol.1からVol.7までの内容を暗記すれば、いっぱしの万年筆通にはなれる。この面では次回はどんな本になるのか今から楽しみじゃ。なんせ万年筆通である拙者も勉強になる内容が満載だからな。
発行部数が大量になれば、製作予算も増えていくので、われわれ読者のやるべき事は、保存用2冊、常備用、切り抜き用2冊の計5冊を買うことじゃ。そうすれば、意外な物書きが登場してくれるかも・・・。個人的には綿矢りさが万年筆について語る小文を見てみたい。若者の万年筆に対する想いが語られる機会が増えれば、必ずやマーケットは広がる。出来れば綿矢りさが万年筆を買い捲っていたりすれば面白いのじゃが・・・