今回調整したのは拙者が最近入手したもの。Montblanc No.146の1970年代物の18C-Bじゃ。よくもこれだけ条件の揃った物が現れたなぁ・・・と笑ってしまった。
拙者、1970年代 No.146の18Cは何本か入手し、全てお嫁に出したが、Bだけは書いた事がなかった。しかもNo.146を再評価して以降は、70年代の18Cに出会うことすら無かった。いつかは現れるだろう・・・と待つこと3年。意外と早く出会った・・・というのが感想。
軸全体としては多少くたびれているかなぁ・・・という感じ。細かい擦り傷があるのでボディがくすんで見える。これはプラスティック磨き布で擦っていればピカピカ状態に戻せる。急がないで毎日続けることじゃ。出来ればクリップをはずしておいたほうが磨きやすい。 ペン先は多少軸に入りすぎているかなという感じ。ほんの少しだけ。ペン先のスリットはピッタリとあわさっている。この状態ではせっかくのBの字幅を生かすようなインクフローが得られないので、少し開く必要がある。
ペン先表面全体にエボ焼けのような兆候が出ている。おそらくは首軸の中にはすさまじいエボ焼けがあるのではないかな? ペン先を裏側から見た画像。ペン芯は切れ目の無い物。これが70年代前半のペン芯じゃ。後半になると二段式のペン芯になるはず。
幸いにしてペン芯のフィンは折れていない。エボナイト製ペン芯の弱点はフィンが折れやすい事。折れても筆記には影響は無いが、痛々しい。オークションなどで入手する場合はまずペン芯のフィンを確認するこが大事じゃ。売主が気づいていない事も多いのでな。 横から見るとすばらしく美しい形状をしている。またペンポイントをいじっているのがわかる。オリジナルはもっと角ばっているはず。ルーペで確認してみるとかなりざらついた耐水ペーパーで形状を整えているが、なかなか上手。ただあまりに番手が低いため、筆記音が下品でこのままでは気持ち悪い。筆記角度は拙者にぴったり。まるで【拙者の筆記角度に合わせて調整せい!】との課題に対する、上級者の習作のようじゃ。丸めの技は一級品。
ペン先を首軸からたたき出して見ると、やはりすごいエボ焼け。醜いというより、神秘的な模様のエボ焼け!磨くのがもったいないが、インクフロー向上のため消えていただこう。全体にエボ焼けしている部分【首軸より前に出ている部分】は茶色っぽい金色で美しいが、首軸の中は金色が薄い。そちらがオリジナルの18Cの色じゃな。
ペン先の裏のエボ焼けはさほどひどくない。ペン芯の横溝と接する部分が黒く変色しているだけじゃ。おそらくはかなり頻繁にインクの出し入れ、使わなくなったら水で洗浄し、水を入れて保存・・・というようなメンテナンスが良かったせいであろう。インクを抜かないで放置されていれば、もっとすごいエボ焼けが発生していたはずじゃ。
こちらが、スリットを多少拡げて表面を金磨き布で丹念に磨いた画像。まるで磨耗して消えかかっているように見えた刻印が綺麗に復活した。彫りが浅い刻印なのでエボ焼けの中に埋没しかかっいたのだろう。
筆記角度にあわせた削りは不要なので、金磨き布の上でバフかけ8の字旋回!
水洗いしてから、秘密の液に浸け、インクを吸入して書いてみると・・・これぞ70年代18C-B ! と感動するほどの書き味。50年代No.146よりは腰が無い書き味。寿命が短かったのもよくわかる。ボールペン時代の人が使いこなせる柔らかさではない。ヘロヘロに近い。これでMだったらさらに柔らかく感じることだろう。字幅と柔らかさのバランスからいえば、長い間夢見てきただけのことはある!
これで18C-Bの呪縛が解かれた! もういいや! お嫁に出すかな・・・?
【 今回の調整+執筆時間:3時間 】 調整1h 執筆2h