
パピロ21のお得意様で、店長の原圭子さんの友人でもある女性。原家でFinemanしゃんと一緒に抹茶やヨーグルトをご馳走になった際に依頼を受けた物。
2本のNo.149を見せていただいたが、1本は5秒で調整完了。スリットを拡げるだけで良かった。ただしこちらはペン先の設計上、それだけでは効果が少ない。どうしても分解する必要がある。
遠距離の移動を100%飛行機に変えて以来、調整道具を持った遠征が出来なくなった。刃物や鋭利な先端の道具ばかりだからな。歯医者用のメス、五寸釘、カッターなどが満載された道具箱は機内に持ち込めない・・・
少なくとも帰省用には、もう1セット準備しておく必要がありそうじゃ。ついでに量産して売ろうかな?遠征先の人に持っていてもらえば、持ち歩かなくて良い。出張料理人みたいじゃが・・・

ただしニブの厚みは多少薄いので、押せばどこまでも首軸に入っていきそうな感じになる。結果として柔らかいはずなのに、妙に弾力が無い書き味になっている。拙者はこの時代の18C-BBBを持っているが、BBBはどの時代も似たようなもの。F程度の細さでこそ、調整の妙味がある。正直斜面を削らないと柔らかな書き味にはならないが、了解を取ってないので今回は止めておこう。
ペン先は良い按配にエボ焼けしている。昔はこういう色のニブを好んで探し、悦に入っていたが、最近ではインクフローを悪化させる張本人として、見つけ次第退治している。

ただしニブが薄いので前進させると必ずぐらぐらしてくる。これを取り除くにはペン芯を首軸内に押し込めばよい。この部分は定量化されてなくて、拙者の感だけ。従って毎回多少は変わってくる。焼き物の仕上がりみたいで、毎回違った作品が出来上がるのが楽しい。
このペン芯は水で入念に洗った後で、念のためにロットリング洗浄液につけてみた。最初は何の変化も見られなかったが1時間ほど経過した段階では液は真っ黒に濁っていた。相当インクがこびりついていたのだろう。

別に特別なことではなく、エボナイト製ペン芯を持つ万年筆は、長期間使っていれば必ずこうなるのじゃ。2年に一回くらいの割合でオーバーホールしていれば、こうはならない。しかしMontblancに頼めば莫大な金額と時間を要求される。
ここはひとつ、自分自身でペン先のセッティングくらいは出来るようになって欲しいものじゃ。特にWAGNER会員にはな。

まだまだ不思議な事はいっぱいある。少しずつ皆の経験を集めて仮説検証をしたいものじゃ。個人の経験には限度があるでな。

なんとか表面だけでも変色を残せないかと長年研究しているのだが、指でスリットを開く作業をしただけでも、変色が取れてしまうので、均一な変色を残すのが難しい・・・・

これでインクフローが激変する。インクが出な〜い!という状態からスールスルと書けるようになった。14Cの開高健モデルの方が紙当たりが柔らかいのは斜面のえぐれが急だから。
そういう処置をこのペン先にも施せるのだが、やった事はない。実は良く見るとこの時代のぽっちゃりとしたペン先が、最もNo.149に似合うのじゃ。
開高健モデルではペン先が勝ってしまう。この時代のニブは控えめでボディとの一体感がすばらしい。残念ながら独逸から仏蘭西向けに輸出されるはずだった品。そうそう日本では手に入らない。特別に取り寄せたか、間違って入荷したものが出回ったか・・・真相を知りたいものじゃ。
【 今回の調整+執筆時間:4.0時間 】 調整1.0h 執筆3.0h