今回は各社の万年筆を紹介する7頁の記事の冒頭に書かれた【三宅菊子】さんの文を紹介しよう。
インターネットなど無い時代に、万年筆専門でもない三宅女史が、この文章を書き上げるのにかかった時間はどれくらいであったろう?
おそらく情報収集に大半の時間を費やしたと思われる。国会図書館などで過去の文献を丹念にあたって初めて書ける文章。
昭和52年に出版されたこの【世界の文房具】を読み込んでいると、一つ一つの記事が実に良く推敲されていると感じてしまう。締切に追いまくられてダダーっと書き上げた感じはしない。
毎朝駆け込みで記事を入力している自分と比べて感心してしまう。やはり【プロの物書きはすごい】と感じさせられる。最近はネットで斜め読みする習慣がついてしまったので、文をじっくりと読むことが少ない。時間をかけて書かれた文章にはそれなりの敬意を払って読まなくてはと反省・・・・・
三宅さんの文章の中で、イギリスのJ・ブラーマが一本の羽根を3〜4本に切ってホルダーにつけて使う方法を発明したとある。5月17日の記事【 萬年筆と科學 その35 】で紹介したばかりなのでびっくり。
また万年筆の完成を1884年と書いてある。ウォーターマン社は1883年に設立されたが、特許を取得したのが1884年なので発明をその年としたのじゃろう。
拙者は発明されたのはあくまでも1883年であり、特許取得が1884年と考えるべきではと考えるがな。
【現代人、特にビジネスマンにとって万年筆は、いまやデュポンのライターと同じかそれ以上に、アクセサリーとしての意味だけが強い。・・・中略・・・万年筆にこだわるのは、よほどの手紙好きの人か、または”もの書き”である。】
とある。100円ライターが普及し、デュポンのライターがアクセサリーになった事を言っているのであろう。現在では喫煙人口も減ったので、ますますデュポンのライターを持つ人が少なくなった。それにつれてデュポンの万年筆や手帳などが充実してきているのも事実。企業は売れる商品を作るもの。とすれば、ひょっとすると現在は【高級万年筆ブーム】かもしれんな。
変わり身の早い拙者などその代表。一時はVintage万年筆に血道を上げていたが、書き味がどうのこうのと言っても、文章を書くわけではないので無意味。人が持っていないVintageを見せびらかすだけというのも非生産的・・・ということで、Vintageは殆どお嫁にやり、見た目が上品で派手な万年筆を飾るだけの目的で購入している。これじゃ、アクセサリーにもならない・・・が自己満足は出来る。
拙者の趣味は書き味調整と修理。書き味の悪い万年筆が何より好きじゃ。最近なかなか手に入らなくなってきておる。生贄提供者募集!
三宅女史は
【結局のところ万年筆は時代遅れの文房具になって行きつつある。往年の名品オノトや古いペリカンを、数十万円で買うコレクターはいても、そうした手作りの名品が新しく生まれることはもうないのだろう】
と結んでいる。これだけは予測が外れたようじゃな。新しい潮流はイタリアから発生して、現在では世界を席捲している。ネクタイやドレスのように、毎日着替える万年筆の世界じゃ。
【過去の記事】
2007-05-15 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その5
2007-05-08 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その4
2007-05-01 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その3
2007-04-24 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】vs【趣味の文具箱 Vol.7】
2007-04-17 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その1