2007年05月24日

解説【萬年筆と科學】 その36

英国特許から見たペン芯の発明にいたるまでの変遷・・・【第三十六章】

 この章で渡部氏は、萬年筆発祥の地である英国特許を紐解く事によって、Watermanが発明したペン芯特許にいたるまでの努力の跡を見せようとしている。個人的な興味もあったのかもしれない。

 本格的な万年筆はWaterman一人が発明したわけではない。彼が発明したのは毛細管現象を使ったペン芯であって、ピストン吸入機構やインキ止め機構などはほかの人が発明したもの。そういう事を知って欲しいと思い、画像掲載した。


2007-05-24 01 こちらは、ピントン吸入機構そのもの。Sの部分を回すことによってRのシリンダーが上下する。早い話が現在のPelikanとまったく同じ。しかもキャップの中から針が伸びており、インクが漏れるのを防ぐという、Safty Penの機構も同時に発明している。この特許はもうすこし評価されても良いかも知れない。

2007-05-24 02 こちらは、ペン芯の中に板ばねを伸ばし、インクフローを調整するもの。いったいどんな素材で板バネを作るつもりじゃ!すぐ溶けてしまうわぃ!とツッコミを入れたくなるが、この特許の面白いところは、1852年に発明されたエボナイトを軸の素材に使っているところ。いかにエボナイトが萬年筆製造者にとって待ちに待った素材かがわかる。ちなみに1855年の特許じゃ。

2007-05-24 03 こちらは1859年の特許だが、目玉はゴムチューブを用いた吸入方式。ゴムをよじって、それが戻る際にインクを吸入するというもの。実際にはゴムの素材の性質上、強く捻るとくっついてしまうので使い物にならなかったのではと思うが・・・

2007-05-24 04 こちらは1878年の特許であるが、仕組みはかなり雑。後ろの穴からインクを口で吸い込む方式じゃ。外側がエボナイト製で内側は軟質ゴム。インクが出なくなったらエボナイトに空けた穴から中の軟質ゴムを押してインクを出すしくみ。皆、インク出に困っていたようじゃな。

2007-05-24 05 こちらは、レバーフィラーに似た機構。ノブを倒すとピストンが前進して空気を出し、もとの位置に戻す際にインクを吸入するというもの。これの発展型がレバーフィラー方式ではないかと拙者は考えている。

2007-05-24 06 この機構を持つ万年筆は拙者も使ったことがある。スワン萬年筆として有名なマビー・トッド商会の製品じゃった。Fという針金が首軸まで貫通しており、その針金を通して空気を入れようというもの。さらに針金がハート穴のところで渦巻状になっており、インクの乾燥を防ぐのじゃ。なんかエンペラーの元祖のような機構。

2007-05-24 07 これは尻軸に開いた穴から空気を入れてインクを出すしくみ。さすがにこのころには、空気が入らないからインクが出ない!ということはわかっていたようじゃな。それにしてもフォールシュによって初めて萬年筆の特許が出されてから70年以上経過している。その間の技術進歩の遅さにびっくり!

2007-05-24 08 こちらは、中芯式インキ止式で、1883年の発明。なんとWatermanによるペン芯の発明の前年じゃ。拙者はインキ止式は相当古い方式と考えていたが、ピストンフィラーの方が51年も前に発明されていたとは驚き!

2007-05-24 09 1884年、ついにWatermanによるペン芯の特許が認可された。溝の中の狭いところを毛細管現象でインクが移動し、その上の広い空間を空気が移動する・・・たしかに画期的じゃ。フォールシュではなく、Watermanを萬年筆の発明者と呼ぶのもわかるな。

 それにしてもWatermanは、その特許に万年筆がインクを吸入する機構については一切触れていない?インクと空気の交換の話を書いただけ。非常にシンプルで画期的! 発明・発見・理論はシンプルなのが一番じゃな!



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Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 情報提供