
それを【Pelikanのステノグラフ・ニブのようにしなやかに!トメやハネが綺麗に出るように調整して!】との要望じゃが・・・・それは矛盾していて、無理難題!
Pelikanのステノグラフ・ニブのの味付けは、ペン先が小さいからこそ出来るもの。小さくて薄いニブがペコペコ動く為にはペン自体が重くてはダメ。Vintage Pelikanの小さくて軽い軸だからこそ出来るのじゃ。
この【開高健モデル】は他のNo.149より若干ペン先が薄いとはいえ、かなり先端部は厚い。従ってペコペコの書き味にはならない。ではペン先の裏を削ったら?こうすればヘロヘルに柔らかいペン先にはなる。しかしステノグラフのペコペコ感は出ない。
しかもMintの【開高健モデル】のペン先の裏を削るというのは【神に対する冒涜】に等しい。どうしようもないペン先ならイロイロ改造して更生させようとするのもわかるが、無垢な生徒を捕まえていきなり背中に刺青を入れるような悪行はしないじゃろう。すばらしいペン先はぜひ次世代へ伝えて欲しいものじゃ。特に【開高健モデル】はな。

ペン先は詰まっているが、インクフローは悪くないようじゃ。ただこのスリットの具合だと、シュルシュルとした流れは得られない。もう少しスリットを開けば、インクが盛り上がるようなフローが得られ、書き味も極めてよくなる。大型ニブで柔らかい(と錯覚させられる)書き味を得るには、この方法が一番じゃろう。

ペン芯はもう少し後退させてペン先を強く首軸に固定したほうが良い。【開高健モデル】はペン先の根元が薄いのだが、ペン芯も首軸も変わっていないので、ペン先がぐらつきやすいので注意が必要。あまりにユルユルの場合は、ラッピングフィルムの切れ端を詰める事もあるが、今回は必要なかった。

このスロープが【開高健モデル】が持つ独特の書き味を演出している・・・のかもしれない・・・ 拙者は長時間筆記しないので、どのペン先で書いても差がわから ん・・・ _| ̄|○



ちなみにこの段階で段差は直してあり、スリットもやや拡げてある。削りは一切施していない。

削りは必要ない。金磨き布によるバフ掛けと、15000番のラッピングフィルムを用いた微細な傷調整のみ。
何にでも15000番のラッピングフィルムを使う人がいるが、太字でこんなものを使ったらインクがスキップする確率を上げるだけ。通常は2000番か5000番くらの方がインクの乗りが良くて使いやすい。ある程度の筆記音も得られて気持ちよい。
ただしFやEFの筆記時の感触を多少でも上げようという時には役に立つ。FやEFではどの角度で書き始めてもインクが掠れる確率が小さいので使っても差し障りは無いのじゃ。

今度、依頼者に【名前が彫ってあるNo.149のボディ】に漆を施してもらおうかな。そのボディに取り付けるペン先は紅色にエボ焼けしたペン先じゃ。美しいですぞ。
【 今回の調整+執筆時間:3.0時間 】 調整1.0h 執筆2.0h