2007年05月25日

金曜日の調整報告 【 無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F 】

2007-05-25 01 これは1980年代のMontblanc No.149【通称:開高健モデル】のデッドストックとのことじゃ。クリップがなで肩からイカリ肩に変わって行く途中の【半イカリ肩】。なかなか数が少ないもの。

 それを【Pelikanのステノグラフ・ニブのようにしなやかに!トメやハネが綺麗に出るように調整して!】との要望じゃが・・・・それは矛盾していて、無理難題!

 Pelikanのステノグラフ・ニブのの味付けは、ペン先が小さいからこそ出来るもの。小さくて薄いニブがペコペコ動く為にはペン自体が重くてはダメ。Vintage Pelikanの小さくて軽い軸だからこそ出来るのじゃ。

 この【開高健モデル】は他のNo.149より若干ペン先が薄いとはいえ、かなり先端部は厚い。従ってペコペコの書き味にはならない。ではペン先の裏を削ったら?こうすればヘロヘルに柔らかいペン先にはなる。しかしステノグラフのペコペコ感は出ない。

 しかもMintの【開高健モデル】のペン先の裏を削るというのは【神に対する冒涜】に等しい。どうしようもないペン先ならイロイロ改造して更生させようとするのもわかるが、無垢な生徒を捕まえていきなり背中に刺青を入れるような悪行はしないじゃろう。すばらしいペン先はぜひ次世代へ伝えて欲しいものじゃ。特に【開高健モデル】はな。

2007-05-25 02 左は調整前のニブ。見事に周囲がエボ焼けしている。表面のエボ焼けはインクフローに影響ないので残したいが、裏を清掃する際に表側のエボ焼けも一部剥離して汚くなる・・・仕方ないので両面を清掃することになる。

 ペン先は詰まっているが、インクフローは悪くないようじゃ。ただこのスリットの具合だと、シュルシュルとした流れは得られない。もう少しスリットを開けば、インクが盛り上がるようなフローが得られ、書き味も極めてよくなる。大型ニブで柔らかい(と錯覚させられる)書き味を得るには、この方法が一番じゃろう。

2007-05-25 03 ペン先を横から見た画像。エラの部分のエボ焼けの状況が良くわかる。綺麗じゃ!

 ペン芯はもう少し後退させてペン先を強く首軸に固定したほうが良い。【開高健モデル】はペン先の根元が薄いのだが、ペン芯も首軸も変わっていないので、ペン先がぐらつきやすいので注意が必要。あまりにユルユルの場合は、ラッピングフィルムの切れ端を詰める事もあるが、今回は必要なかった。

2007-05-25 04 こちらが清掃前のペン先の全体図。やはり【開高健モデル】はハート穴の横からペンポイントに向かう、ペン先スロープの形状が美しい。

 このスロープが【開高健モデル】が持つ独特の書き味を演出している・・・のかもしれない・・・ 拙者は長時間筆記しないので、どのペン先で書いても差がわから ん・・・ _||   

2007-05-25 05 こちらは裏側。すごいエボ焼け。Mintでもこれほど焼けるのじゃな。ちなみに分解してみたが、Mintというのは間違いない。ペン先とペン芯を挟んでいるソケットの外側にまったくインクが付着していなかった。長期間使えば、接着剤の部分にインクがしみこんで惨い状態になるはずだから。

2007-05-25 062007-05-25 07 こちらが清掃後の裏表の画像じゃ。綺麗にはなったが、エボ焼け独特の紅色にも似た汚れがなくなったのは残念。ライカM4 ブラックペイントの塗装が剥がれた感じから、ピカピカのチタン・ボディになったみたいで、趣は減ってしまったが、インクフローの為にはしかたあるまい。

 ちなみにこの段階で段差は直してあり、スリットもやや拡げてある。削りは一切施していない。

2007-05-25 08 こちらが調整の終わった状態。左右の段差を直しただけでもかなり印象は変わる。ただしステノグラフのような・・・という要望に対してはもう少し滑らかさが必要じゃ。

 削りは必要ない。金磨き布によるバフ掛けと、15000番のラッピングフィルムを用いた微細な傷調整のみ。

 何にでも15000番の
ラッピングフィルムを使う人がいるが、太字でこんなものを使ったらインクがスキップする確率を上げるだけ。通常は2000番か5000番くらの方がインクの乗りが良くて使いやすい。ある程度の筆記音も得られて気持ちよい。

 ただしFやEFの筆記時の感触を多少でも上げようという時には役に立つ。FやEFではどの角度で書き始めてもインクが掠れる確率が小さいので使っても差し障りは無いのじゃ。

2007-05-25 09 横から見た図。なかなかエロい姿じゃ。神に仕える身なら【ふしだらな書き味】と表現するじゃろうが、依頼者ならいいじゃろう・・・きっと。

 今度、依頼者に【名前が彫ってあるNo.149のボディ】に漆を施してもらおうかな。そのボディに取り付けるペン先は紅色にエボ焼けしたペン先じゃ。美しいですぞ。


【 今回の調整+執筆時間:3.0時間 】 調整1.0h 執筆2.0h


これまでの調整記事

2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
2007-03-07   Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05   鍍金三昧
2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆