2007年05月26日

スケルトン軸 その5 【 Matador Click Demonstrator 】

2007-05-26 01 バイブルによれば【Matador】は1895年に設立された【Siebert & Lowen】のトレードマークだったらしい。1930年代には拙者の大好きなチェイス軸の万年筆を作っていた。

 Matarorとは闘牛士のこと。ちなみにスペイン語→英語の翻訳ソフトではMatador → killing となる。

 Matadorで一番有名なのは1949年に発売された【Matarol Click】であり、嵌合式キャップの特許を取得したモデル。軸をキャップに押し込んでいくと、最後にClick音を出して止まる。抜く時にもわずかな音を出す。この音がえもいわれぬ安心感を与えてくれるのが大流行した理由じゃろう。

2007-05-26 02 今回紹介するのは【Matarol Click Demonstrator】。長くコレクションしているが、この一本以外にお目にかかった事はない。発明品なので数は相当出ているはずなのだがな・・・・

2007-05-26 03 かなり使い込まれて内部に傷がついている部分もあるが、Demonstratorのルールを守っており、インクを入れた形跡は無い。

 ペントレなどでDemonstratorを展示していると、インクに浸けて試し書きする人がいる。これは絶対にやってはいけない事じゃ。首軸内部は加工が複雑で、Pelikanなどでは2個の部品を接着剤で貼り合せている物もある。そういうものをインクに浸せば接着剤が着色して、あわれDemonstratorは一生汚れを背負って生きていかねばならない。

 Demonstratorにインクを浸すのは、自分の物になってからじゃ。次回のペントレからDemonstratorにはペン先をはずしておくことにする。それでもインクに浸
す人がいたら(いるわけはないが)、五寸釘で成敗じゃ。調整道具箱の中は武器だらけ!けっして飛行機で遠隔地に調整に出かけるわけにはいかない・・・

2007-05-26 04 構造は単純だが、どうしてピストンが上がってくるのかはよくわからない。完全分解すればわかるが、どうやて分解するかもわからない。ピストン機構は中央のネジの部分にねじ込んであるはずじゃが、どうやってはずすのかな? 内部構造が見えなければ力ずくで回すのじゃが、なまじ見えるので無理は出来ない・・・・Demonstratorの意味無いじゃ~ん!

2007-05-26 05 ペン芯もソケットも良い素材のエボナイトを使っている。ネジ切りは1条だが、削り跡は惚れ惚れするほど美しい。轆轤ではなく、旋盤で削ったと思うが見事なものじゃ。

 この技術を復活するのは難しいことではないが、ビジネスとして儲かるだけの量があるかどうかが問題じゃな。100万個作って一個千円なら10億円の売り上げ。10万個なら1億円。日本で一種類の高級万年筆が10万本売れる時代が来
るだろうか?Montblancの限定品の発売本数が2万本程度。かなり難しい・・・さりとてペン芯とソケットで1万円というのも無理がある。

2007-05-26 06 キャップ中央の金属が特許を成立させている部分じゃな。Parker 75の内部構造もこれに似ていたのでMatadorの特許を使っていたのだろう。なぜしっかりと嵌合するのか疑問だったのだが、Demonstratorで見れば十分に理解できる。このDemonstratorはインク吸入を見せるのが目的ではなく、Click機構を見せる為のものじゃな。

2007-05-26 07 右端の首軸先端が微妙に外側に開いているが、これがピッタリとキャップが嵌る秘密じゃ。そういえばParker 75の首軸先端も開いておったな。今までいろんなDemonstratorを見てきたが、軸色が最も美しいのがこれ!Pelikanのダイダラス・イカルスの色にそっくり。Pelikanがこの軸色を参考にしたのかな?


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Posted by pelikan_1931 at 08:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆