今回の依頼品はMontblanc No.1468。ライン模様の純銀ボディじゃ。素通しインク窓にイカリ肩クリップ。さらにはエボナイト製ペン芯に18K-OBBニブ。どうやら旧型から新型への移行期のモデル。モデルチェンジ前後の時代のパーツが混ざっている。
No.146をベースとした限定モデルや金属キャップモデルには、拙者にとって致命的な弱点を持つものが多い。それはキャップを後ろに挿しても、すぐに緩んでしまうこと。かなり後ろの方を持って書く拙者は相当イライラさせられていた。が、最近ではキャップ無しで書いても気にならなくなった。理由は・・・あまりにキャップが後ろに挿さらないモデルが増えて贅沢言えなくなったから・・・トホホ このOBBは手首を捻って書かなくても滑らかに書けるように調整されている。実に気持ちよい。ただし依頼者は万年筆歴が浅いので、途中で書き癖が変化する可能性がある。また縦書き文章を綴る時には、インクが乾かないので持つ部分をどんどん尻軸側へ移動しながら2行目、3行目と手の位置を動かさないまま書こうとするかもしれない。そういう事態も考慮して多少余裕を持たせておこう。
ペン先とペン芯の位置関係はこれでよい。実に良い位置にセットされている。これは替える必要はない。ラッパ型の首軸にエボナイト製ペン芯というのは良く似合う。この次の時代のヘミングウェイ型のプラスティック製ペン芯も良かった。最近は各社ともペン芯のコスト削減に熱心なようで、かなり安いプラスティック製に変わってきている。特にヴィスコンティは最低!ここ5年ほどは購入していないので改良されたかもしれないが、腹の斜面にくぼみがあるようなペン芯は許せない!
それと比べれば、このNo.1468のエボナイト製ペン芯は天使のよう。インクフローやインク漏れ防止能力では、構造の複雑な現行ペン芯の方が良いのであろうが、美しさでは圧倒している。万年筆は筆記具であると同時に、アクセサリーでもある。はっきりいって人が身につけているアクセサリーなんてどうでもいい。自分が持っているアクセサリーだけには破綻が無いようにしたい。Montblancをアクセサリーとするならば、エボナイト製ペン芯は必須じゃな。 素通しインク窓とコストカット後のヘミングウェイと同じ設計のペン先。No.146用ペン先であるが、No.149と同一のペン先を持つヘミングウェイと同じく、ペン先の左端に三角の切れ込みがない。その次の設計から切れ込みが入る。
ヘミングウェイ時代のペン先にはプラスティック製ペン芯が付くが、移行期モデルであり、かつ定番品といえども、それほど数が出ないNo.1468などの場合には余っている部品を組み合わせて出荷する場合が多かったらしく、よくこういう組み合わせを見かける。
あるいは・・・どうしてもOBBが使いたくて、前の時代の軸にヘミングウェイ時代のペン先を移植したのかもしれない。この前後のモデルではペン芯とペン先の相互互換性があるのじゃ。 エボナイト製ペン芯に乗っていたにもかかわらず、ペン先の表にも裏にも汚れはない。スリット間隔もベスト。書き出し掠れを防ぐためのペンポイント表面へのざらつき出しも完璧。筆記角度が多少依頼者と違うだけ。
拙者のBlogを読んでせっせと手入れしたか・・・過去に拙者が調整したかじゃ。自分が施した目印は残していないし、調整方法をblogで公開しているし・・・記憶力は鶏程度なので、拙者が調整したものかどうかはわからない・・・・が、【拙者流】の調整であることは確かじゃ。 調整が終了して軸に取り付けた画像を二枚。左側はスキャナーの進行方向にそって、スキャン開始が尻軸側、スキャン終了がペン先側に置いたもの。右側は置く方向は同じだが、軸を45度左に捻って置いたもの。置き方によってこれほど見え方が変わる。置く角度によって仕上がりがまったく違うので試してみると面白い。病み付きになるはずじゃ。
こちらは横向き画像。これも45度左に傾けて置いた。ペンポイントを見るとかなり大胆に削っているが、OBBで一番引っかかりやすい右上角を落としているので驚くほどスムーズ。OBBやOBBBを削った書き味に溺れると、BBやBBBでは物足りなくなるはずじゃ。
これでキャップが後ろにピタっと挿さればなぁ・・・
【 今回の調整+執筆時間:3.0時間 】 調整1.0h 執筆2.0h