2007年05月30日

水曜日の調整報告 【 Pelikan 400 灰茶 14C-F 】

2007-05-30 01 今回の依頼品はPelikan 400。軸色は灰色に近い茶軸。元々そうなのか、茶色が退色したのかはわからないが非常に綺麗。胴軸の後端には【PELIKCN 400 GÜNTHER WAGNER GERMANY】との刻印がある。また尻軸には【】の刻印がある。字幅を表現したもの。少なくとも400NNや140の場合にはペン先に字幅が刻印されていたがな・・・

2007-05-30 02 軸を握って持ってみると・・・【ああ、Pelikan 400だなぁ・・】という懐かしい気持ちになる。最近はVintage pelikanで書く事が殆ど無いが、たまに握ってみると指に吸い付くような感じに参ってしまう。

 映画は2・・3・・4・・とバージョンが進むに従ってつまらなくなっていく。拙者が見た映画で2の方がおもしろかったのはマッドマックス2くらいかな?同じように万年筆の場合も後継モデルよりオリジナルの方に惹かれる事が多い。出来の良し悪しはともかくとして、オリジナルには独特の雰囲気がある。この400も400NNや現行品よりも良い雰囲気を持っている。書き味は400NNの方が良いと思うが・・・・

2007-05-30 03 で、握って字を書いてみると・・・【なんじゃ、こりゃぁ】ってなひどい書き味。Pelikanでこんなひどい書き味の物は初めて!

 ニブを調べてみてわかった!ペンポイントがズレている上に、ひどい背開き。またペンポイントの紙に当たる部分もかみそりの刃のようにエッジが立っている。しかも素材も超硬い。まるで1930年ごろのPilotのイリドスミンかと思うほど。さらにMを細字に研ごうとして失敗した跡がある。

2007-05-30 04 ペン先を横から見た図。通常はこの位置で良いはずだが、ペンポイントの段差の原因がペン芯なので、多少のペン芯研磨とペン先とペン芯の位置調整をしなければなるまい。ペン芯はあまり削ると機能を損なう。一方でこれほどお辞儀したニブをさらにお辞儀させて背開きを直そうとしても、書き味が硬くなりすぎる。

 その場合には、この状態よりもペン芯を後退させて対応するしかない。後退させてもインク切れの心配は殆ど無い。よほど筆圧の強い人以外はな・・・

2007-05-30 05 ペン芯側から見た図。ペン芯の溝の中央部分にペン芯のスリットとがピッタリと合わさっている。なかなか良いセッティングじゃ。これを左/右に多少ずらした方が段差が出ない場合もある。今回の物がそうなのだが、それでは正面から見た時に美しくないので、中央にセットしても段差が出ないように調整しよう・・・と思ったのが長時間調整になった理由。そう簡単ではなかった・・・

2007-05-30 06 ソケットごと首軸からはずした画像。ソケットの切れ込み部分もちゃんとスリットの直線上にある。こういう【乱れを発見しやすい設計思想】は独逸らしくて良い。単に職人技で綺麗にそろえるのではなく、揃っていないことを発見しやすくして、職人でなくても最適な設定が出来るようにするのが【本来の設計】じゃ。Pelikanはこの部分が他社よりも数段進んでいたようじゃ。

2007-05-30 07 こちらは調整を施したペン先。スリットを拡げ、段差を無くし、ペン芯に乗せると・・・惨いくらいにズレる。どうやらペン芯に不具合があるようじゃ。それから先は、ペン芯をちびっと削ってはペン先と合わせて確認、削っては確認・・・の繰り返し。これに1時間以上かかった。ペン芯を削る量には限度があるので、ペン先の段差をわざと作ってペン芯にのせて修正という作業もしかたなく行った。セットした状態で無理な力がペン先に貯められているので、理論上は書き味に乱れが出るはずじゃ。拙者には感知できないがな・・・

2007-05-30 08  こちらが首軸にペン先をセットした画像。かなりペン芯が後退しているのがわかろう。この状態がペン先に一番無理がかからない状態(このペン芯の場合)。

 調整の終わったペン先で文字を書いてみる・・・あのなんじゃ、こりゃぁ】はすっかり影を潜め、Pelikan 400らしい書き味になった。今回がペン芯研磨の必要性を示した第一回目のBlogだったかもしれないな。


【 今回の調整+執筆時間:4.0時間 】 調整2.0h 執筆2.0h


これまでの調整記事

2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
2007-03-07   Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05   鍍金三昧
2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(7) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
ご教授ありがとうございました。
しばらく大人しくしていることにいたします。
Posted by きくぞう at 2007年06月02日 16:07
きくぞうしゃん

400のピストンをはずすには専用工具を使わないと非常に危険じゃ。
あきらめなされ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月02日 07:21
5
いつも楽しく勉強をさせていただいております。先日は貴重な情報を頂き誠にありがとうございました。その後、気の迷いからオークションに手を出し、修理費用を使ってしまいまして、まだ修復できておりません。
この記事を拝見した後、手元にある400茶縞のニブを面白半分、分解しペン芯の位置をずらしてしまい、かすれが出るようになってしまいました。何度かバラしているうちに以前よりインクの出が良くなりました。ペン芯とペン先の位置が非常に重要な事がよく判りました。
ところで、インクを吸い上げるピストンの外し方もお教えいただけると幸いです。
勝手ばかりを申しますが、よろしくお願いいたします。
Posted by きくぞう at 2007年06月01日 22:28
ええーっ?!
それは凄い!!
Posted by 二右衛門半 at 2007年06月01日 00:27
二右衛門半しゃん

ユーロボックスで確認したら、まごう事なきグレーだとか!
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月31日 20:57
これ、たぶん退色ですね・・・この写真からでははっきりわかりませんが、キャップで隠れている部分の色が濃いようにみえます。
うちには退色した緑の400が転がってます、400は退色しやすいんでしょうか?
Posted by 二右衛門半 at 2007年05月31日 08:06
こんばんは。皆様。

パイロットのイリドスミンのお話が出ましたので・・・
以前、パイロットのイリジュ−ムは戦後の統制が解けた後もパイロスミンを使い続けているのではと想像しています・・・と不確かな書き込みをしてしまいましたが、先日のペントレにて大先輩から真実を教えていただきました。

戦後の統制が解けてからは良質のイリジュ−ムをペンポイントに使用していますのでご安心くださいとアドバイスをいただきました。

よって4/12の記事に対する私の書き込みは不適切なものなので関係各位に謝罪して内容を訂正させていただきました。
どうか、4/12の記事をご参照くださいませ。

宜しくお願いします。
Posted by らすとるむ at 2007年05月30日 19:00