今回の依頼品はSheafferのコノソアール 赤軸。キャップの口の部分が斜めにカットされていないので、初期のモデルじゃ。この色のモデルは拙者も持っていたはず・・・と思っていたら、昨年紹介していた。ただし、拙者のにはニュー・コノソアールのニブが付いていた。
このコノソアールはニュー・コノソアールと違い、胴軸のベースが金属ではないので軽い。従って拙者にとっては取り回しが楽でありがたい。 ペン先もニュー・コノソアールよりも薄く、軟いので、筆圧をかけると曲がってしまいそうで怖い。素材自体が柔らかくて弾力が無いニブは、調整直後の書き味は絶品じゃが、書いているうちに書き味が劣化するスピードが速い。特に細字ではその傾向が強い。
この万年筆は【だめ出しの女王】からの依頼品。従って絶品!程度の書き味では満足を与えられない。普通の人なら気絶しそうな書き味を出して初めて【普通】の評価が得られるのじゃ。
そもそも依頼時点で書き味は良い!普通の人ならこれで十分満足しているはずじゃが女王様のお気には召さない・・・
まずは筆圧を下げて書いてもらうために、スリットを拡げてインクフローを上げる必要がある。また女王様は多少捻りながら・・・引っ掛かるところを探すように書いていく癖があるのでその対策も必要じゃ・・・
しかも、スイートスポットが無いと・・・ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!・・・
細字・スイートスポット付・全方位ひっかかりなし
というある意味相反する要望に答えねばならない。それに対するうまい策をみつけた!
女王自らに調整してもらうのじゃ。拙者は普通の人の【極上】程度の書き味に仕上げておき、あとは女王自らが調整を施すのじゃ。その為の手ほどきを再会時に施すことにした。(勝手に) これは横から見た画像。ペン先とペン芯の位置関係も絶妙で、何の問題も無い。しかも未使用品。
ペン芯がなかかなか抜けない個体が多いが、これも硬かった!そういう時には、熱湯にくぐらせて水分を補強したあとで、まずはペン先を抜きとり、次にペン芯を抜き取ればよい。 こちらが裏側から見た画像。ペン芯が多少ズレている。ペン先のズレは引き起こしていないようじゃが、見た目重視の拙者としては許せない。
Sheafferのこのタイプの万年筆に用いられているペン芯は二重構造になっている。従ってインク保持能力が高く、インクドバドバ状態でもインクの供給が途切れることは無い。 ペン先には【STE・PF】の刻印がある。Pelikanの【PF】と何か関係があるのかな?
ペン先は先端が詰まっている。かなり内側へのよりが強い。がペン先自体が軟いので、少し筆圧をかければ正しい位置になる。シトロエンに装着されているハイドロマチック・サスペンションのような感じかな? そうはいっても筆圧ゼロで紙に接したとしても紙にインクが乗るようにするには、スリットを拡げるしかない。しかし拡げすぎるとエッジを立てるだけで逆効果。相手は女王様だから・・・・慎重の上にも慎重な微調整が必要じゃ。
もっともこのペン先の軟さならすぐに書き味が変わってしまうので、やはり女王様自身に微調整方法を覚えていただくのが良いじゃろうな。 これが調整済のペン先を軸に取り付けた後で、金磨きクロスによる仕上げをした段階。通常はこれで終わりじゃが、今回はこれに【女王様自身による仕上げ】というスパイスが加わる。
女王様の調整技術にダメ出しをする日が楽しみじゃ・・・ヒヒヒ
【 今回の調整+執筆時間:2.0時間 】 調整1.0h 執筆1.0h