2007年06月20日

水曜日の調整報告 【 Pelikan 500N 茶縞 14C-EF 】

2007-06-20 01 今回はPelikan 500Nの登場じゃ。6月15日の記事で、400Nの尻軸に似た400を紹介したが、今回本物の500Nの尻軸を見ると、まったく違う。ただ、見方によっては400や400NNの曲がり方の潔さから比べると、どことなくためらいがあるような曲がり方・・・

 独逸に限らずヨーロッパ諸国は物を大切にする文化なので、キャップと軸が別々のモデルの物ということは良くある。一方を無くしたり壊した物同士を組み合わせるのじゃ。しかし今回は軸に500の刻印があるので、キャップが金貼りというのは正しい。ほぼオリジナルの組み合わせと考えて間違いあるまい。

 今回の依頼内容は、ガリガリを直して!というもの。調べてみる惨い段差が出来ている。

2007-06-20 02 ペン先ユニットをソケット毎捻り出して原因がわかった。ソケットの一部が壊れて割れかけている。しかも個体差なのか、通常の400 / 500用のソケットに比べて素材が薄い。そのせいか内径も若干広く、ペン先が通常よりも奥まで入ってしまう。適当なところで止めようとすると、グラグラになる。

2007-06-20 03 ペン先の裏側を見ると、こちらにはソケットに割れは無い。ソケットを回転する時に、表側に不適切な物を差し込んで捻った結果、ソケットの一部が破損したと思われる。

 Pelikan 400 / 400N / 400NNの構造を良く知らない人の犯した過ちと、
個体差が組み合わさって生じた不具合じゃ

2007-06-20 04 ペン先をソケットから抜けば、段差は一切無くなる。ということは、やはりソケットが緩くなり、筆圧で捻られて段差が出来たものと考えられる。結論からいえば、ソケットをややきついものと変えれば良いこと。

2007-06-20 05 こちらは、裏側の画像。一応清掃はしてあるものの、エラの部分にはエボ焼けが発生している。さらなるインクフローの改善の為に、裏側全体をもう一度金磨き布で徹底的に清掃しておこう。

 以前Pelikanの社史紹介の中でも疑問を呈したが、根元側の穴の用途は何なのじゃろう・・・拙者はまだ正確な答えを見つけてはおらん。

2007-06-20 06 一昨日の400NNの修理に用いたのと同じ現行M400用のソケットに入れ替えた。これは良い具合にペン先とペン芯を挟んでくれる。多少きつめであり、よほどの筆圧(数kg?)をかけない限りはソケットとペン先がずれる事故は発生しまい。

2007-06-20 07 修理調整が終わったPelikan 500Nの勇姿じゃ。軸がかなり黄色っぽいこともあるが、キャップの金色とのマッチングが実に美しい。筆記時のバランスも絶妙で言うこと無し!もっともキャップを後ろに挿すと、500Nと500NNの区別は付かない・・・のが残念!

2007-06-20 08 ペン先の段差は無かったのだが、ペン先の書き味調整には思いのほか時間がかかった。ペンポイントの素材が均一ではなく、やたら硬い粒子がたまたまエッジ部分に存在し、少々研いでも丸まらないというトラブルに出くわした。Pelikan製品では始めての経験じゃ。放置すると、右上から左下へのハネが全て引っ掛かってしまう。そこで丹念に研磨して引っ掛かりを取り除いた。

 調整の終わった万年筆をインクに浸して試し書きしてみると・・・良い!自分の手と一体化したような細字の書き味!Pelikan万年筆の書き味の頂点は旧400 / 400N / 400NNのラインだと改めて感じた。また長年使って手になじませるという万年筆界の常識も少しずつ色あせてきている。長年使って、手を万年筆になじませることはある。しかし完璧に調整された万年筆は【使うほど書き味が劣化していく】というのが新しい常識じゃ。


【 今回の調整+執筆時間:4.0時間 】 調整1.5h 執筆2.5h


これまでの調整記事

2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
2007-03-07   Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05   鍍金三昧
2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(11) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
あそこは結構外れや間違いも多いので要注意ですが、
パーツやジャンクもあるので時々利用しています。
Posted by stylustip at 2007年06月23日 13:09
stylustip さん、はじめまして。

MARTINIauctions.com ですね。情報ありがとうございます。
Posted by monolith6 at 2007年06月23日 05:35
monolith6さん>
キャップとかパーツなど、レジーナの処なら気長に網を張ってると
現れるかも知れませんよ。
Posted by stylustip at 2007年06月22日 07:11
monolith6 しゃん

最近は興味がなくなると、すぐ忘れるでな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 22:51
 Pelikan_1931 さんからこんな質問を受けるとは...。ひょっとして知ってて敢えてテストしているとか?

 ともかく、私が400用と気付いた理由の第一は、キャップ・リングに何も刻印が入っていなかったこと(N用なら、必ず PELIKAN 400 の刻印がある筈)。ペリカン・クリップが400N、400NN用とされているものと比べてスリムではなく、ずんぐりとしていたこと、とどめは「趣味文」に出ていた400、400N、400NNの実物大写真と、キャップの大きさを比べたとき、手持ちのキャップが寸足らずだったということです。
Posted by monolith6 at 2007年06月21日 22:32
ロブオ しゃん

柔らかいニブほど品質管理が難しいので、高級モデルでなら実現するかもしれませんな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 01:54
しまみゅーら しゃん

拙者は、他人の調整の確認用に、相手の書き癖で長時間書いたあとで、自分の万年筆を持つと、しばらく違和感を持つこともある。書き癖がしばらく相手に合ってしまうからじゃ。

ひどい時には自分の書き癖が変化してしまう。
従って同じ人の万年筆を1日に2本は調整しないようにしておる。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 01:48
monolith6 しゃん

キャップの違いはどうすればわかるのですか?
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 01:46
ペリカンの万年筆の歴史の長さの中で
傑作のニブが生まれたり品質低下したりしながら、
とりあえず今の時代まで生き残ってくれてるのはありがたいです。
生き残っていればまた品質が良くなる可能性もありますよね。
現行品のM400のFニブを時々使っているのですが、
硬いニブで、軸の軽さとのバランスがもう一歩という印象です。
見た目は装飾が過剰な気もしますし。
装飾はいらないから、良いニブを復活させて欲しいですね。
Posted by ロブオ at 2007年06月20日 22:04
>長年使って、手を万年筆になじませることはある。

 なるほど!と思いました。万年筆の書き味がよくなるのではなくて、
書き手が万年筆の癖に合った持ち方になってくるから、書き味がよくなるんだ、と。
当人にしてみれば「書き味がよくなった」のは変わりませんからね。

 この前(16日)、東京に出張に行ったので、ついでにペンクリに行ってみようと、
日本橋丸善に駆け込みで行ったのですが、16日は〜17:00まで、ということで、
川口先生がお帰りになった後でした…。orz
DAKSを調整してもらういいチャンスだったんですけどね。(泣)
Posted by しまみゅーら at 2007年06月20日 11:50
 先日オクで400Nの茶縞を落札して喜んでいたのも束の間、届いたものを見てガックリ。胴&尻軸は400Nでしたが、キャップは400用でした。400N用のキャップ単品、しかも茶色なんて、オクでも滅多に出てこないでしょうし、手元の400キャップ、400N胴&尻軸を一体どうしよう...。
Posted by monolith6 at 2007年06月20日 08:22