2007年06月21日

解説【萬年筆と科學】 その40 と セーラー・キングプロフィット【塗り】

鍍金の真実に迫った・・・【第四十章】

 本章に入ってもまだ懲りずに【Waterman登場以前の万年筆関連特許】の解説を続けていた渡部氏であったが、途中で自身で気付いたようじゃ。

 【こんな事をいつまで書き並べてみた処でらちはあきません。書くほうの私もうんざりします。・・・・・・ いい加減に打ち切ることにします。・・・・・】と言い訳がある。もっと早くうんざりに気付いて欲しかった。

 そして注目の【鍍金のペン】の項。ここには驚くべき内容が書かれている。今まで拙者が何気なくやっていた事が、事態を悪くするだけだったという事実!まさに【ガ〜ン】じゃ!

 【鉄ペンに金鍍金するとよけいに腐食が進む】という事が、理路整然と書かれている。反論のしようも無い。今まで鍍金が剥がれた鉄ペンが付いたCombo(ペンシル&万年筆)にせっせと金鍍金をしていたのに・・・・

 もっとも一切インクは入れなかったのが幸いして腐蝕には至ってない。今後とも水分は厳禁じゃな。しかし水分に最も強いはずの万年筆の心臓部たるペン先が水分に弱くなってはシャレにならないので、内容を紹介しておこう。皆さんも要注意じゃ。

2007-06-21 01 本文を要約すると・・・・・
・元来種々の元素は水と接触すると水中にイオンを送り出す性質がある。
・イオン化の傾向には元素によって大小がある。電化列と呼ぶ。
・イオン化の傾向が大きい物から並べると、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、クローム、マンガン、亜鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、錫、鉛、水素、銅、水銀、銀、プラチナ、金、イリジウムの順。

 一般にブリキは錆びやすいが、トタンははるかに耐食性に富むという事実がある。ブリキは鉄に錫を鍍金した物で、トタンは鉄に亜鉛を鍍金したもの。
 
 トタンを水に浸けると、イオン化傾向が高い亜鉛が陽極となって溶解して行き、反対にイオン化傾向の小さい鉄が陰極となり、さらに鍍金が強まるような感じになる。従ってトタンは強い!

 逆にイオン化傾向が鉄より小さい錫を鍍金したブリキでは、鉄のほうが溶けてしまうので耐久性が弱くなってしまうわけじゃ。

 すなわち、イオン化傾向が鉄よりはるかに小さい金を鍍金した場合には、さらに悪い状態になる。鉄が腐蝕しやすくなってしまう!それよりもアルミニウムを鉄に鍍金した方がはるかに良いと結んでいる。

 理論上はそうであろう。水の中に浸していれば・・・ただし強酸性のインクの場合はどうかな?アルミなんぞはすぐに溶けてしまうのでは・・・

 いずれにせよ、こういう話を理論的に説明されると、無条件でうれしい。理系の血が騒ぐ。過去の特許の説明を延々としてきたのは、今回の記事のインパクトを上げるためでは?と邪推したくなるほどじゃ!

 現代の鍍金ペンは鉄に直接金を鍍金しているわけではないのでご心配なく。

2007-06-21 02 さて、追加記事じゃ。先日、キングプロフィットを曇らせようという記事を書いたが、気が変わった。なかなか曇らないので、漆を塗ることにした。左図のように赤と黒の漆で塗り分ける。ラピタの付録が【ミニ赤と黒】ならば、こちらは【ジャイアント赤と黒】。

 拙者は松江の山本漆器店に昨日依頼したところじゃ。もちろんクリップははずして当方で保管してある。塗りが終了したら改めて取り付け、鍍金の色もピンクゴールドに変えるつもりじゃ。

 もし同様な改造【塗り】したい方がいれば、下記へ連絡されたし。ちなみに今回の塗りの料金は1万円以内に納まりそう。正式見積もりはまだじゃが・・・

〒690-0843
島根県松江市末次本町45
山本漆器店 山本隆志
TEL 0852-23-2525

過去の【萬年筆と科學】に関する投稿

解説【萬年筆と科學】 その36 
解説【萬年筆と科學】 その35
解説【萬年筆と科學】 その34 
解説【萬年筆と科學】 その33  
解説【萬年筆と科學】 その32 
解説【萬年筆と科學】 その31 
解説【萬年筆と科學】 その30 
解説【萬年筆と科學】 その29 
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解説【萬年筆と科學】 その4
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解説【萬年筆と科學】 その1 



Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(21) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 情報提供 
この記事へのコメント
3
古い記事に投稿させていただきます。

現在、山本漆器店さんにキングプロフィットの塗りをお願いしようと検討しているのですが、

キングプロフィットのクリップの外し方について、ご教授いただければ幸いです。
やはりクリップを外せるなら外してキャップまで塗りを施したいと思いますので、色々調べてみたのですがどうにも外し方が分からず閉口しております。
Posted by 漆塗り持ち込み検討中 at 2017年03月30日 00:30
怠猫しゃん

なるほど!蒸気は100度以上になりますからな!
Posted by pelikan_1931 at 2008年06月29日 23:55
ありゃりゃ、手遅れでした。

>キングプロフィットを曇らせようという

薬缶かお鍋の蒸気に当てれば、一発でエボ焼けします。

エボナイト軸の万年筆は持っていないので、パイプのマウスピースでしかやったことありませんが...

ご参考まで
Posted by 怠猫 at 2008年06月28日 14:11
たらこしゃん

ついに塗りましたか!パーソナライズは何であれ嬉しい物です。
飽きないで使ってやって下され。
Posted by pelikan_1931 at 2008年06月27日 06:53
以前質問させて頂きました「たらこ」です。

先日山本漆器店で万年筆の塗りが完成しました。
やっぱり尻軸は外れなかったみたいです。

ちょっと気になる部分もあったりしますが、自分だけの万年筆という感じがして愛着がわきますね。
また塗りをお願いしようと思っています。
Posted by たらこ at 2008年06月26日 01:07
たらこしゃん

あの部分は確か接着剤で固定してあるので外れないはず。

経験から言えば、漆を塗るには軸を削って漆のぶんだけへこませておかないとだめ。上に漆を盛り上げても端から剥がれてしまう。

そのリスクを知った上で発注されるのがよかろう。

拙者は次回からは削ってから送るつもりじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2008年02月24日 21:46
いつも楽しく拝見させていただいております。

今度山本漆器店でプロギアの後塗りを頼もうと思っております。
そこで質問なのですが、プロギアの尻軸はねじ切りしてあるのでしょうか?
もし外れるのであれば、外して胴体だけを塗りたいと思っています。
それとも何か特別な工具でも必要でしょうか?
もしご存知でしたらお教えください。
よろしくお願いします。
Posted by たらこ at 2008年02月24日 05:48
教えてください しゃん

拙者も最近またエボ擦りにはまっている。これは伝染するようで、ひまし油を小分けして譲っておる。

なんせひまし油を大瓶で買うのは、新宿2丁目の方々らしいという噂もあり、かなり言い訳しなが買ったり、必要もないビーカーと一緒に買ったりしたもんじゃ。

あ、ビーカーいっしょだともっと怪しかったかな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月24日 04:22
ありがとうございました、了解いたしました。
845に手をかけたのは、もとはといえばスティピュラのエボナイト軸をひまし油でこするあなたの文章にのめりこんでしまって、もうハンカチでこすりたくてこすりたくて、ひまし油は手に入れたもののその時手直にエボナイトが無かったもので、ふと我に返ったときには・・・
今ではスティピュラからワテルマンからスワンから昔々の名も無いインク止め式から、エボナイトと聞けば手に入れてこすっています。おかげでひまし油の匂いが体について、時に危険です。
Posted by 教えてください at 2007年06月24日 00:43
教えてください しゃん

エボナイトは磨きが完璧ならば曇らない。残念ながらキングプロフィットの磨きは完璧ではないので曇ることが予想される。
次の手段は磨きのうまい人に磨いてもらうか、漆をぬるか、我慢するかじゃ。拙者は漆を選んだというわけじゃ。

磨き抜かれたエボナイトの漆黒の美しさはすばらしい。
なんども研ぎだされた赤漆の美しさもすばらしい。
アイスクリームととんかつのおいしさを比較するようなもので、どっちがすばらしいか比べても意味が無い。好き好きじゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月23日 21:04
>漆と樹脂の手触りは格段に違いますぞ。漆は滑らない!

樹脂のペンに漆を塗るのは、手触りが良くなるので良いなと思うのです。エボナイトの方が樹脂のキングプロフィットより値段が高かったですよね。エボナイトはエボナイトの手触りがあるのにもったいないと思ったのです。私がケチなんですかね。

>エボナイトのよさと漆のよさを対比させても意味が無いな。

今回の教えてくださいはこれです。意味が無いというのが分からないのです。同じということですか?個人的には時代を経た汚れた茶色のエボナイトが好きで、そうならないように塗った845の漆に手をかけた私です。意味が無いといわれて845に申し訳なくて・・・
Posted by 教えてください at 2007年06月23日 18:12
stylustip しゃん

なるほど、電解腐蝕と呼ぶのですな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 22:48
電解腐食 怖いです。
Soennecken111,222などの、尻軸を引っ張って廻すタイプは、
コルクが劣化してインクや水分がピストン機構側に廻ると、
コレでコイルバネがやられてしまいます。
私は色々探して、バネ特性が近いモノをあてがっています。
軸の強度、コイルばね、キャップリップ強度がSoennecken三桁に共通した
アキレス腱三兄弟です。
333は上記に加えピストン機構の保持部が加わります。

螺鈿は高いことだけは想像出来ます。
依頼する柄が思い浮かばないので、想像だけで終わりそう。
Posted by stylustip at 2007年06月21日 21:35
だるたにゃん しゃん

拙者も社長にも職人さんにもお会いした。気負いが無く淡々と仕事をするところが好きじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 21:01
教えてください しゃん

漆は金属にもプラスティックにも塗れます。
漆と樹脂の手触りは格段に違いますぞ。漆は滑らない!
エボナイトのよさと漆のよさを対比させても意味が無いな。
拙者はエボのキングプロフィットも樹脂のキングプロフィットも漆のキングプロフィットも好きじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 21:00
二右衛門半しゃん

当時とは鍍金の技術が違うのと、ベースとなる金属が鉄ではないので断言は出来んな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 20:57
stylustip しゃん

拙者はキャップとクリップだけじゃった。
螺鈿などになると手間が桁違いだから値段はわからん・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月21日 20:55
師匠、私も以前、山本さんにお世話になりました。
パイロットのカスタム845の軸を赤金に塗ってもらいました。
(こんな感じ↓
 http://fish.miracle.ne.jp/mail4dl/05-topic-news/Doun-1.htm)
とても気さくな社長さんで、何でもはいはいと受けてくれそうです。
モンブランの149の軸を赤く塗った『へみんぐうぇい』バージョンも作られているようです。
Posted by だるたにゃん at 2007年06月21日 10:04
漆はエボナイトにしか塗れないのですか?
もしそうならエボナイトに漆を塗る意味がありますが、そうでなければ安い樹脂に塗っても肌触りは同じですよね。エボナイトはエボナイトの肌触りがあって意味があると思っていたので、それに漆を塗ると漆黒に(漆黒と漆赤か?)はなるけれど銀軸にロジウム鍍金のような、まだあげそめし前髪を金髪にするような、一抹の不安を抱えるのですが・・・杞憂でしょうか?
Posted by 教えてください at 2007年06月21日 08:12
えっ?!

するとプラチナの10年保証のペン先はどうなるのでしょう??
金メッキがされているようなんですが・・・。
Posted by 二右衛門半 at 2007年06月21日 08:10
私のキングプロフィットもお願いしてみようかしら。
金具類はクリップだけなので、手間数が減る分、安価に収まるかも?!
軸とキャップだけ送ればいいのでしょうか?
塗るとしたら朱漆か、螺鈿細工も素敵です。
なんて考えただけでうっとりわくわくです。
その前にお小遣いを貯めないと。
Posted by stylustip at 2007年06月21日 08:05