今回の調整依頼はPelikan 400 茶縞のEF。依頼内容は【インクが出ない!走り書き用なので硬いままでインクフローだけ改善して欲しい】というもの。インクフローが良くなれば、手は柔らかいと感じてしまうが、依頼者は自分でも調整を始めたところなので、その部分は十分理解しているものとして調整を始める。
左の図を一瞥して、何か違和感を感じた。軸が超派手で、キャップも茶色という金ぴかヲヤジの400なのに何かペン先が寂しい・・・地味じゃ。たしか400以降のペン先にはもっと装飾が多かったような気がしたが・・・
ということでPelikan Greem Bookを確認してみると・・・やはり400のニブでは無い。どうやら100Nと同時に出されたニブのようじゃ。ちなみに軸内のピストン機構のうち、上下するピストンラバーがついている部品も100N用だった。
要するに100Nと400の部品をアセンブルして作ったもの。なかなか手が込んでいる。
ペン先は左右が密着しすぎていてインクが出にくい。ただし横から見るとペン先とペン芯の間に隙間が空いている状態。これを直すには、ペン芯を後退させるのが最も無難な方法。この方式だとペン先を曲げたり伸ばしたり・・・という作業が簡素化される。
ペン先をシゲシゲと眺めていて・・・ン?・・・
ペン先の左側のホールの手前の刻印が【+】型をしている。100Nのペン芯では小丸が付いているはずだったが・・・・
とPelikan Book Greenを調べてみたら、P79に【+】の刻印のあるニブの写真が出ていた。ただしこれはTaylorix用に作った100Nのペン先の例。
Pelikan用の萬年筆に付いているのを初めて見た・・・この【+】は何の為についているのじゃろう?
それにしてもスリットがガチガチに詰まっている。ここはブート・キャンプ並の屈伸運動を繰り返してスリットを拡げておこう。
こちらは幾分かペン先のスリットを開いた図じゃ。ペン先がお辞儀している角度が深いので少々力を入れてもスリットは開かない。
そこでツボ押し棒でペン先の裏から力を入れてペン先を反らせると共に、スキマゲージでスリットをギシギシと開く動作を繰り返したところ、わずかに隙間が出来た。
一度スリットが開けば、たとえ調整戻りで再びスリットが詰まったとしても、多少力を入れればインクは出てくるので心配ない。
こちらが軸にペン先ユニットを取り付けた状態。実はこれまでに軸全体を分解し、部品全てのチェックを行った。ピストン部品が100Nのものを使用している為、動きが多少ぎこちないのを修正するのがメインだった。
400用のソケットに100N用のペン先と400用のペン芯を無理やり突っ込んでいる為、ペン先ユニットが膨張して簡単には首軸から外れない。拙者は工具を持っているから良いが依頼者はどうするのかな?
現行M400用のソケットに変えれば問題は解決するかもしれない・・・
いずれにせよ、硬さを変えないでインクフローだけ向上するというミッションは完結できたが、もう少し壊れていたほうが工夫の余地があっておもしろかったな・・・というのが印象。
【 今回の調整+執筆時間:2時間 】 調整1.0h 執筆1.0h