2007年07月02日

月曜日の調整報告 【 Pelikan 400 茶縞 14K-EF 】

2007-07-02 01 今回の調整依頼はPelikan 400 茶縞のEF。依頼内容は【インクが出ない!走り書き用なので硬いままでインクフローだけ改善して欲しい】というもの。インクフローが良くなれば、手は柔らかいと感じてしまうが、依頼者は自分でも調整を始めたところなので、その部分は十分理解しているものとして調整を始める。

2007-07-02 02 左の図を一瞥して、何か違和感を感じた。軸が超派手で、キャップも茶色という金ぴかヲヤジの400なのに何かペン先が寂しい・・・地味じゃ。たしか400以降のペン先にはもっと装飾が多かったような気がしたが・・・

2007-07-02 03 ということでPelikan Greem Bookを確認してみると・・・やはり400のニブでは無い。どうやら100Nと同時に出されたニブのようじゃ。ちなみに軸内のピストン機構のうち、上下するピストンラバーがついている部品も100N用だった。

 要するに100Nと400の部品をアセンブルして作ったもの。なかなか手が込んでいる。


2007-07-02 04 ペン先は左右が密着しすぎていてインクが出にくい。ただし横から見るとペン先とペン芯の間に隙間が空いている状態。これを直すには、ペン芯を後退させるのが最も無難な方法。この方式だとペン先を曲げたり伸ばしたり・・・という作業が簡素化される。

2007-07-02 05 ペン先をシゲシゲと眺めていて・・・ン?・・・

 ペン先の左側のホールの手前の刻印が【+】型をしている。100Nのペン芯では小丸が付いているはずだったが・・・・

 とPelikan Book Greenを調べてみたら、P79に【+】の刻印のあるニブの写真が出ていた。ただしこれはTaylorix用に作った100Nのペン先の例。

 Pelikan用の萬年筆に付いているのを初めて見た・・・この【+】は何の為についているのじゃろう?

 それにしてもスリットがガチガチに詰まっている。ここはブート・キャンプ並の屈伸運動を繰り返してスリットを拡げておこう。

2007-07-02 06 こちらは幾分かペン先のスリットを開いた図じゃ。ペン先がお辞儀している角度が深いので少々力を入れてもスリットは開かない。

 そこでツボ押し棒でペン先の裏から力を入れてペン先を反らせると共に、スキマゲージでスリットをギシギシと開く動作を繰り返したところ、わずかに隙間が出来た。

 一度スリットが開けば、たとえ調整戻りで再びスリットが詰まったとしても、多少力を入れればインクは出てくるので心配ない。

2007-07-02 07 こちらが軸にペン先ユニットを取り付けた状態。実はこれまでに軸全体を分解し、部品全てのチェックを行った。ピストン部品が100Nのものを使用している為、動きが多少ぎこちないのを修正するのがメインだった。

 400用のソケットに100N用のペン先と400用のペン芯を無理やり突っ込んでいる為、ペン先ユニットが膨張して簡単には首軸から外れない。拙者は工具を持っているから良いが依頼者はどうするのかな?

 現行M400用のソケットに変えれば問題は解決するかもしれない・・・

 いずれにせよ、硬さを変えないでインクフローだけ向上するというミッションは完結できたが、もう少し壊れていたほうが工夫の余地があっておもしろかったな・・・というのが印象。



【 今回の調整+執筆時間:2時間 】 調整1.0h 執筆1.0h


これまでの調整記事

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2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
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2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
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2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
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2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
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2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
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2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
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2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
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2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
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2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
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2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
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2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
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2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(10) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
勉強になります!

また機会がありましたら
100番、400番台のペン先比較写真等の
企画みたいなぁ…、と心の片隅で思いつつ…。

ありがとうございました!!
Posted by アドバイスいただきました at 2007年12月26日 22:25
shamal しゃん

Pelikan 100N に 400のペン先がついたものを入手して、すげ替えかな?
こちらの方が見つかる確率は高いですぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年12月26日 12:02
実際に使ってみての感想ですが、元々異なるペン先とペン芯を組み合わせいるためか、インクフローが安定せず、
ちょっとしたことでインクが漏れたりします。
実用品としても問題ありです。
それでも書き心地が気に入って使ってますが。
また、珍しいと言ってもユーザーサイドで勝手に組み合わせたものですので、
特に手に入れるは価値は無いのではないでしょうか。
Posted by shamal at 2007年12月26日 11:23
アドバイスください しゃん

こういうのが世の中を流通するのは、後生のに誤解を与えかねないので、使用して朽ちさせる予定なら買っても良いが、販売目的ならやめて欲しいな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年12月26日 07:31
かなり日が経ってますが質問です。

この記事と同様の100N&400の万年筆が売っていれば
買うのは避けたほうがいいのでしょうか?

それとも、珍しいのでゲットしたほうがいいのでしょうか?
Posted by アドバイスください at 2007年12月26日 00:58
了解しました!
生贄ではなく実用品としてガンガン使うことにします。
Posted by shamal at 2007年07月03日 23:17
この個体は専用工具無しでペン先ユニットを回すのは危険じゃな・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月03日 05:38
ということは、入手時に感じていた強い剛性は深いお辞儀で
生まれていたのでしょうか。
帰ってきたら自分でも色々といじってみたいです。
ペン先ユニットを外すことができればですが・・・
Posted by shamal at 2007年07月02日 23:13
shamalしゃん

調整するとそれほど剛性は高くないですぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月02日 22:49
調整ありがとうございました!
依頼時にはまだインクフロー、ニブの剛性、書き味の関係が理解
できていなくて、ずいぶんと漠然としたお願いになってしまいました。
それにしても、まさか100番台のペン先が装着されていたとは思っても
見ませんでした・・・
ペン先と尻軸の刻印との整合性も取れているようなので「400の初期型
にはこんな刻印もあったのかな」程度に考えていました。
100番台用にしてはずいぶんと剛性の高いニブなので、HEFもしくはDEF
だったのでしょうか。
Posted by shamal at 2007年07月02日 12:41