2007年07月04日

水曜日の調整報告 【 Pelikan #500 茶縞 14C-BB 】

2007-07-04 01 今回の依頼品(左図の上)を預かった時には気付かなかったが、調整前の点検をする際、天冠刻印の色が緑なのを発見。正しい#500(左図下)と並べて比較してみたら・・・

 なんとキャップの色は本来茶色であるべきなのに黒!依頼者が間違えて装填したか、販売者が間違えたか、意図的か・・・はわからないが確かにキャップは茶縞のものではない。ちなみにキャップの刻印はW.-GERMANY。以下便宜的に【偽装#500】と呼ぶ。写真では天冠の一部もわずかに見える。上が緑、下が薄茶色なのがわかろう。

2007-07-04 02 この【偽装#500】に付いているペン先は左図上。下が#500のニブに比べるとポッチャリとしていて、刻印も深い。これは現行のM250用ニブと同一。このニブが#500についていた時代があったのかもしれないし、後で250と入れ替えたのかもしれない。

 ペリカンは昔から規格化が進んでいて、新旧の万年筆の部品のネジピッチなど共通。従って新旧品を混ぜて壊れた万年筆をレスキューする事が簡単に出来る。万年筆ユーザにとってはありがたいことであり、万年筆コレクターにとっては厄介なことじゃ。

2007-07-04 03 これが今回の依頼品の拡大画像。スリットは十分に開き、ペンポイントの調整も、ペン芯の位置も問題ない。

 実際にインクを付けて書いてみると・・・ヌラヌラとインクは出てくるのだが、ヌルヌルという筆記感ではない。ギクシャクという表現の方が近い。拙者も修行が足りんのか、実際に書いてみるまで書き味の悪さに気付かなかった。

 ここでムラムラと義侠心が・・・【偽装#500】である事実が持ち主に知られるまであと数時間。気の短い持ち主は【偽装#500】である事に気付けば捨ててしまうかもしれない。そこで捨てきれないような書き味にしてお返しすることにした。

2007-07-04 04 こちらが整形後調整前のペン先じゃ。整形前のペン先と比較すればペンポイントへ続く斜面の贅肉がそぎ落とされたようになっているのがわかろう。こうすることによって、多少の弾力が出るのと、圧倒的に見栄えが良くなる。

 美容整形にたとえれば脂肪吸引のようなものじゃ。

 もう少し表面を薄く削れば刻印がの彫りが薄く見え#500に近づく。ただ刻印の字幅は変えられないのであまり意味が無いのでやめておいた。

2007-07-04 05

 こちらが最終状態。すぐ上の図からここに至るまでに1.5時間が経過している。久しぶりにペンポイント研磨に集中出来た。

 さて書き味であるが・・・インクに付けて書き出した時、思わず声を上げた。これほど激変するとは思わなかった。ギクシャクとして紙を拒絶するような書き味が、紙に吸い付くようになった。実に良い。

 数ヶ月ぶりの大成功じゃ!


【 今回の調整+執筆時間:4時間 】 調整3.0h 執筆1.0h


これまでの調整記事

2007-07-02   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
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2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
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2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
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2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
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2007-03-05   鍍金三昧
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2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
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2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
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2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 情報提供 
この記事へのコメント
茶渋しゃん

再Loadしておきました。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月05日 07:46
はじめまして いつも楽しく拝読させていただき、ありがとうございます。
さて、この記事の万年筆が2本並んだ、最初の写真へのリンクが
切れていて、細部が確認できませんので、お手数ですがリンクを
貼りなおしてくださいませんか?
Posted by 茶渋 at 2007年07月05日 00:52
ロブーオしゃん

部品レベルが違っても再度アセンブルすることが出来る。過去にM250の調整も引き受けているのでそちらとペン先を交換することも出来る。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月04日 19:46
しし しゃん

そうそうスチロール棒じゃ。
ペン芯が見えないように、ペン芯も多少後退させている。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月04日 19:43
dodomenしゃん

書き味の向上は筆記者の筆記角度にピタっと合うかどうかじゃ。
次にインクフロー。
弾力は好みがイロイロ・・・。ま、生贄の場合は依頼者が拙者に合わせてもらうので、たまに弾力調整もする。

創作料理のようなもので、調子の悪い万年筆(材料)をどう料理するかを掲載している。それが唯一の方法ではないのじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月04日 19:42
こうやってニブを見比べると確かにM250のニブとそっくりですね。
打刻のエッジが甘く太い感じなどはいかにも現行品のニブという感じです。
なにやら気の毒なお話ですが、
こういうことがあるから分解可能なペリカンの古い万年筆は、
オリジナル性にこだわる人にはやっかいな存在ですね。
道具だと割り切って使う分には何の問題もない話なのでしょうが、
古い万年筆を好む気分の中には昔の物への憧れや愛着などがあると思います。
持ち主の方が師匠の調整を楽しんでくれればいいのですが。
Posted by ロブーオ at 2007年07月04日 18:44
やり方は昔紹介されていたスチロール棒でしょうか。
エラからのスロープが直線的なものをR状にえぐるとだいぶほっそりした印象になりますね。
これぐらいのパッと見でわかるほどの形状変化だと紙当たりがしなやかになりそうですね。
ペン芯が上から覗いてしまいそうで怖いですが。
Posted by しし at 2007年07月04日 10:51
ペンポイントへの斜面を削ることで弾力が出るのは写真を見た印象で何となく分かるのですがそれによってインクの出方も大きく変わってくるのでしょうか。書き味の違いは弾力の向上、インクの出方の変化のどちらの方が影響が大きいのでしょうか。ご教示をお願い致します。
Posted by dodomen at 2007年07月04日 09:48